イルカの話 4





イルカの話 その4






ある夕方、Water Planetのスタッフだけで海に出たときです。

12~13頭くらいのイルカたちが遊んでいました。

そこら中でピョンピョン飛び跳ねたり、お互いにじゃれ合っていました。

2頭で体当たりして、もんどり打って水面を叩いたりと、かなり激しい動きもありました。

基本的にこういうときに海に入ることはしません。

でも、ここはスタッフだけ… 好奇心にかられて3人で海に入りました。

海に入った途端、ものすごい騒がしい音が聞こえてきました。

ピーピー! キュワキュワ! トルルルル…!

海の中が、イルカたちの声で充満していました。

ボクは一瞬、どっちちが上でどっちが下かも分からなくなったほどでした。

近づいていくと、イルカたちが海の中を鉄砲玉のように泳いでいるのが見えました。

「すっげぇ…」

あっけにとられていると、向こうから3頭のイルカが真っ直ぐボクたちの方に飛んできました。

3頭のイルカは、ボクたちの手前3メートルくらいのところに来ると、ピタッと止まり、「仁王立ち」になりました。

文字通り、「仁王立ち」です。

泳ぐ姿勢ではなく、尾ひれを下に直立体勢で、頭だけがこっちを向いています。

まるで「蛇拳」の前腕のような格好でした。

ボクたち3人はビックリして、その場に凍りました。

3頭ともボクたちが知っているイルカでした。

みんな若いオスです。

でも、こんな彼らをボクたちは見たことがありませんでした。

ボクたちは何もできず、しばらくの間、3対3で見つめあっていました。

すると次の瞬間、「パーン!」という、ものすごい音がなりました。

どうやらイルカたちが口を開け、一気に歯を鳴らしたようです。

銃声のような爆発音で、ボクら3人は、ショックで誰もハッキリとは覚えていないほどでした。

「ヤバイ、ヤバイ、帰ろ、帰ろ…」

ボクらはイソイソとボートに帰りました。



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イルカが頭をつき合わせているときは、口論の最中です。

本当にその場に止まって、首を振りながらああだこうだとやります。

顔を合わせるというのは、人間や他の動物の場合とは違って、

常に泳いでいるイルカにとっては「衝突」を意味します。

だからイルカと遊ぶときには、イルカに向かって泳ぐより、

イルカが向かっていると思われる方向に泳ぐのが良いのです。

あのとき、ボートに上がってから観察していると、確かに口論のようでした。

イルカ同士でエキサイトしているとき、交尾なのか口論なのか、見極めが難しいのです。

いずれにしろ、貴重な経験でした。

あれはイルカたちの威嚇でした。「立ち入り禁止!」という。

何かノッピキならない事情があったんでしょう。

それにしても、

巣もなく、テリトリーもないイルカたちが、人間であるボクたちに示したあの行動は、

イルカたちのコミュニケーション能力の高さを感じたシーンでした。





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