口説くにはブルゴーニュ
さて、ボルドーが出てくれば、フランスワインの双璧をなすブルゴーニュを無視するわけにいかない。
その、極上白ワインがルイ・マル監督の『 アトランティック・シティ
』(1980年)にでていた。
アメリカ東海岸にあるアトランティック・シティ。
寂れる一方のこのカジノの町に生きる初老のギャングと、将来モナコのカジノでプロのディーラーになりたいと夢見る隣人の女性のふれあいを哀歓交えて描いた作品である。
大金を手に入れた老ギャングのルー(バート・ランカスター)が、カジノのオイスター・バーで働く女性サリー(スーザン・サランドン)を高級レストランに誘った。
実は、その金は彼女の別れた夫のヤクを売って手に入れたもので、久々に札びらを手にして気持ちが高ぶっていた。
サリーは無論、そのことは知らない。
会話に花を咲かせる二人のテーブルに、人懐っこそうな若いソムリエがワインのボトルを持ってきた。
「66年物のピュリニー・モンラッシェです」
ブルゴーニュのコート・ド・ボーヌ地区のピュリニー・モンラッシェ村でつくられる<辛口白ワインの王様>と評される代物だ。
快い黄金色をしたワイン。
白ワインのナンバーワンは?と聞かれたら、文句なくピュリニー・モンラッシェを推す。
これでもか、これでもかと身体を痺れさせるほど深奥な味わいがある。
抜いたコルクを手にしたルーは、香りをかいでみるように、彼女の鼻にそれを近づけた。
「いい香りだろう?じゃあ、グラスに注ごう」
普段は安物のバーボン・ウイスキーばかり口にしているルーが、このときばかりはと精一杯気取っている様が手に取るようにわかる。
下心もちょっぴり感じさせ、なかなかいい雰囲気なのだ。
ひょっとしたら、ベットで燃える彼女の艶かしい姿態を頭の中で思い描いていたのかもしれない・・・・。
サリーはそんなヴィンテージ・ワインを味わうのはもちろんはじめてだし、そのようにワインの香りを嗅ぐ事すら知らなかった。
たちどころにルーは裕福で高貴な老人と思い込んだのだが・・・・。
こんな豪華なワインで男から言い寄られたら、どんな女性だって心を許してしまうのではあるまいか。
口説くにはブルゴーニュ!
このシーンを観て、実感した。
ピュリニー・モンラッシェ
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