後藤:すごく楽しそうでしたよ。テリー・ボジオのドラムをたたく姿が非常に美しかったんで、それに感動していました。テリー・ボジオって当時は40歳ぐらいだったと思うんですけど、20代後半ぐらいにしか見えないんですよ。体も鍛えていたんでしょうね。T.M.スティーブンスは開けっぴろげで、体もでかくて…猛獣のような男だったんで(笑)、hideが「『美女と野獣』だな」って笑ってました。「EYES LOVE YOU」と「DICE」と「BLUE SKY COMPLEX」…4曲ぐらい一緒にやったと思うんですけど、一応最初は譜面に添ってプレイしてもらうんですね。でも、曲の構成が結構複雑じゃないですか。普段彼らがやらないようなスタイルだったんで、「ここはこうしてほしい」というようなコミュニケーションが必要になってくるんですよ。そういうところも含めてフレンドリーにしていましたね。
後藤:一昨日、ベスト盤のマスタリングが終わったところなんですよ。しみじみと昔の曲を聴いていたんですけど…まあ、試行錯誤の中でやっていた作品だなって思いますね。最初の方で録った「EYES LOVE YOU」は、まだ彼が歌をコントロールして歌えたものではないと思うんですけど、最後の方に録った「TELL ME」になるとかなりコントロールできているんですよ。だから、すごい短期間の間に習得したんでしょうね。その後にツアーを2回やったんですけど、ツアーの度にまたうまくなるし、最後のアルバムの『Ja,Zoo』の歌はもう超一流のボーカリストの歌じゃないですか。だから、ベストアルバムのマスタリングをしていても「この人はほんとに努力して、成長した人だな」って実感しましたよ。
●短期間でそこまで成長するのは、それだけ高い意識を持っていたんでしょうね。
後藤:その意識を継続することができるのが、また彼のすごいところですね。
●そんな『HIDE YOUR FACE』を土台にして、2ndアルバム『PSYENCE』はさらに実験を行った感じですか。
後藤:大きいですよ。僕も一生懸命に仕事をしたつもりなんですけど、どうしても彼に追いつけなくて、最初はついていくだけで精神的にも肉体的にも大変でした。彼はレコーディング中も休まないし、最初から最後まで緊張感を途切れさせずにフルパワーでやる男でしたからね。それにhideに中途半端な返事をしてしまうこともあったんですけど、とことん追求されるんですよ。「これはどうなの? 何でできないの? こうすればできるんじゃないの?」って。そうやってできたのが『HIDE YOUR FACE』の初回盤ジャケットだったんですよ。だから、いろんな面で教えられたことが多かったですね。すごいアーティストでしたよ。6年間っていうのは、振り返ってみれば、あっと言う間でしたけど、素晴らしい体験をしたと思います。