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タバコ産業のウソ

「悪魔のマーケティング-タバコ産業が語った真実」 の要約
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著者 ASH(Action on Smoking and Health)
1971年、英国王立内科専門医会によって設立された民間健康推進団体。
各種ロビー活動や広報活動を通じ、英国内の喫煙率低下の促進に取り組む。

◆ストーリー
欧米のタバコ産業は、これまで驚くほど計画的に、そして組織ぐるみで“ウソ”をついてきた。それが明らかになったのは、訴訟や内部告発によって、1950年代以降から現在に至る数千ものタバコ産業の内部文書が公になったからだ。本書ではASHが調査した各種文書の中から「証言」を拾い出し、欧米のタバコ産業の本音を明らかにする。

◆タバコ産業の広告宣伝戦略
欧米のタバコ産業は、これまで驚くほど計画的に、そして組織ぐるみで“ウソ”をついてきた。たとえば、タバコ産業は、タバコの広告の目的はあくまで「ブランドのイメージ告知」にあり「タバコの消費量増加は決して目的ではない」と主張してきた。

しかし、内部文書には「タバコの広告は、人々にタバコを吸うきっかけを与える不可欠の要素だ」と明記されている。タバコ産業は、広告を通じて「大人っぽさ」「男っぽさ」「色っぽさ」「知的」といったタバコに対する偏った、ポジティブなイメージをひとびとに植えつけ、彼らに喫煙を促してきたのだ。

20世紀初頭のタバコ広告では、タバコの害を堂々とごまかし、健康に対する影響についても「心配ない」と言いふくめ、さらに特定の製品については「タバコは健康に良い」とさえ言い切っていた。

たとえば、1942年のフィリップモリスの広告は「タバコの煙を吸っても喉の刺激はありません」、1949年のキャメルの広告は「キャメルの喫煙者で喉を痛めた人は誰ひとりいません」と謳っていた。

◆1950年代には、さらにインチキな広告まで打たれるようになった
米国連邦取引委員会には、キャメルのCMで「タバコはエネルギーを補給し、体力を回復させます」と言っていた記録が残っている。
また1952年、ケントの広告は「タバコは健康によい」と言っている。

米国連邦取引委員会は、「このCMは明らかに虚偽で、詐称行為といえる。タバコは体力を回復させる成分など含まない」とコメントしている。

1960年代になると、喫煙と肺がんの因果関係が注目されるようになる。これに対してタバコ産業は、広告を利用してタバコと健康への害の因果関係を否定しようとした。

もちろん1950年代の終わりには、タバコ産業の科学者が、喫煙と肺がんの因果関係を突き止めていた。にもかかわらず、その後30年以
上も、大多数のタバコ会社は発がん性を否定し続けたのだ。

1967年、ブラウン・アンド・ウィリアムソンのヴァイス・プレジデントであるJ.W.バーガードは、PR会社タイダロックに「『タバコが肺癌の原因になるという説は科学的に根拠がない』と訴える広告を早急に作らなければならない」と手紙を送っている。

これを受けて、広告代理店ポスト・キーズ・ガードナー社は、宣伝キャンペーン「プロジェクト・トゥルース」を開始した。その目的は、政策決定者に働きかけて、論争をタバコの害に関する科学的事実の解明から、喫煙者の権利の主張に移行させることだった。

1980年初めになると、タバコ会社による広告やスポンサー活動を規制する機運が高まった。タバコ会社は、それに対する対抗策として“ブランド・ストレッチング”を展開するようになった。

“ブランド・ストレッチング”とは、ブランド名のついたグッズを販売したり、銘柄と同名のショップを展開したり、レーシング・チームを所有するなどして、ブランド名を世間に知らしめる手法だ。

たとえば1981年、インペリアルタバコの「プレイヤーズ・フィルター・クリエイティブ・ガイドライン」には「16歳から20歳の若者に人気があるか、または将来的に彼らが興味を示すだろうスポーツなどのイベントのスポンサー活動をするべきだ」と明記されている。

また、タバコ会社は宣伝のためにテニスのウィンブルドン選手権直前に『キム・トップ』というスポーツブランドを立ち上げた。そして、米国の人気テニス選手マルチナ・ナブラチロウに、キム製品を着用させた。彼女はウィンブルドンに出場し、勝利をおさめた。

こうしたタバコ産業による引伸ばしは続いた。だがついに1998年6月、欧州連合EUは、2006年までにタバコ会社の宣伝広告、スポンサー活動及びプロモーション活動をすべて禁止する方針を発表した。

このようにタバコ産業の歴史は、喫煙の健康への悪影響を隠蔽し、否定し続ける歴史だ。政府の規制を遅らせ、これまで犯してきた罪の責任を回避するために、様々なウソをついてきたのだ。

今ではタバコに発がん性があることも、その依存性も明らかだ。それでもなお、タバコ会社の多くは、その事実について首をたてに振ろうとしていないのだ。

◆新興市場を狙え アジア、アフリカ、旧東欧
西側諸国では喫煙率がピークに達し、下落の一途をたどるようになった。そこでタバコ産業は、今度は未開拓市場で売り上げを伸ばそうと考えるようになった。

特に、旧・東ヨーロッパ諸国やアジアを最重視し、ラテンアメリカやアフリカにも販路を拡大する。タバコ産業は中央・東ヨーロッパ諸国、ロシア等が国交を再開したのを契機にタバコ市場を拡大した。

『マーケティング・ウィーク』誌の取材で、元タバコ会社社員は「タバコ産業は自らが作り上げてきた巨大な怪物に餌を与え続ける方法を探さねばならない。もはや発展途上国でタバコの販売量を増やすしか道はないのだ」(R.モレーリ 1991年)と語っている。

また、米国のタバコ産業は政府の支援を引き出し、経済力にものをいわせ、経済制裁をちらつかせ、台湾や日本などのアジア諸国にタバコ産業を開放させた。

タバコ産業は、中国にも進出しようと試みた。中国には約3億人もの喫煙者がいる。この国を手中に収めれば、タバコ産業にとって莫大な利益につながることは間違いない。タバコ産業の経営陣は、中国市場は想像がつかないほど大きな利益を生み出すと考えた。

フィリップモリス・アジアの副社長リーン・スカルは中国市場に関してこう語っている。

「2000年のタバコ産業の戦略は、世界で一番重要な国である中国市場に触れずに語ることはできない。あらゆる点で中国市場は予想を上回ることだろう」

また、ロスマンズ社地域広報担当マネジャーであるロバート・フレッチャーは「中国で喫煙市場がどのぐらい広がるかを想像するのは、宇宙の果てに思いをはせるようなものだ」(『ウィンドウ・マガジン』1992年)と語っている。

タバコ会社は、常に新興市場を開拓しようと考えている。開拓のためには手段を選ばない。喫煙者はブランドに忠実だ。よって、先手を取ってシェアを占めたタバコ会社が当面の勝利を得るのだ。

アジアのとある国では、まだ海外のタバコ産業に市場を開放していないのに、密輸によって海外のタバコが次々と国内で販売されるようになった。

その結果、この密輸タバコに、国営タバコのシェアは大幅に奪われてしまった。そして、国営タバコ会社は、密輸されていた海外ブランドの中でもとりわけ人気の高かったブランドのメーカーと提携し、ライセンス品を国内で生産するようになったのだ。

この話には裏がある。当の海外ブランドのタバコメーカーは否定しているが、実はアジアでの人気をあてこみ「わざと」密輸を認めていたらしいのだ。これは裏を返せば、アジアで欧米ブランドのタバコがいかに人気が高いか、ということを証明しているといえる。

経済成長とともに喫煙人口は増加する。タバコ産業はここに目をつける。かつて日本で起こった現象、つまり喫煙の広がりが経済発展の象徴であるかのような共同幻想が多くの国で生まれているのだ。

これらの国々の喫煙者に著しい健康被害が現れるのはこれからだ。その膨大な健康被害に対して、どのような形で集団訴訟が行われるのかは想像もつかない。

では、タバコの消費が医療費に与えるインパクトはどのようなものか説明しよう。世界銀行によると、高所得諸国では年間総医療費の6%から15%を喫煙関連医療費が占めているという。

また、リパブリック・ニューヨーク銀行上級副社長兼在日代表後藤公彦氏の1996年の推計によると、日本の喫煙関連医療費は3兆2000億円だそうだ。

2002年3月発表の医療経済研究機構の発表では、タバコによる超過医療費に加え、喫煙疾患による労働力損失、火災による労働力損失等を合計すると、計7兆1540億円が喫煙によるコストとして計算される。これはタバコ税収を差し引いても毎年約5兆円の社会的な損失となるのだ。

◆「女性」という最後の巨大市場
タバコ産業が女性をターゲットにして販売努力をしているのは、誰の目にも明らかだ。1968年にバージニアスリムを発表して以来、女性向けブランドは爆発的に増加している。

女性テニスプレーヤーのスポンサーとして無料サンプルを配付することで、タバコ産業は「女を攻撃下においた」と発言している。また、規制がより緩やかな第3世界では、タバコ産業はディスコやレイブパーティのスポンサーとなり、主に若い女の子を雇って、若い女性や女の子たちに無料でタバコを配った。

たとえば、新しい女性喫煙者を市場に取り込むために、タムシン・シーモンは、スリランカで無料のタバコを配り、“ゴールデン・ガールズ(金色のサリーを着た美しいモデルたち)”を利用したキャンペーンを展開した。

その結果、タムシン・シーモンは、スリランカのディスコでの販売促進で成功を収めた。今のところスリランカの女性の喫煙率はわずか1%に過ぎないが、今後その率がどんどん上昇するかもしれない。

タバコ産業は、「女性市場の開拓」という任務の遂行にあたり、まず、女性市場を人種や生活レベルなどで分類し、それぞれの女性の“タイプ別区分”にあわせたキャンペーンを展開していった。

これによってターゲットになりうる各区分のニーズや要望といった嗜好の違いにまで、深く踏み込めるようになった。こうして消費者に向けたメッセージをより巧妙なものにしていった。

この市場を区分する方法は、通常のビジネスではスタンダードなマーケティング手法だ。しかし、タバコ産業が「タバコのような破壊的で、何の役にも立たない製品を、いかにして販売しようとしてきたか」を理解するためには、格好の素材といえる。

1960年、英国の女性喫煙率は40%、男性は60%だった。しかし1990年代中頃までに男性の喫煙率はほぼ半分近くの32%まで減少した
のにもかかわらず女性のほうは30%と、10%しか減少しなかった。

肺癌と喫煙の因果関係が明るみに出てから40年たった1990年代、女性の喫煙率は男性の喫煙率に追いつくまでになった(米国、オーストラリア、ヨーロッパ諸国でも同じような傾向が見られる)。

ティーンエイジャーの間でも特に女性の喫煙率の伸びが顕著であり、史上初めて女子の喫煙率が男子の喫煙率を上回った国もある。

肺癌や心疾患は未だに男性の病気だと考えられている。しかし、実際には喫煙率の上昇を忠実に反映し、女性の間でもこうした病気が増えつつある。女性だけが病気に対して特別な免疫力を備えているわけではないのだから当然だ。

英国でも、地域によっては癌の中でも肺癌が女性の死亡原因のナンバーワンになっている。そのうえ、心疾患は英国女性の最大の死亡原因となっているのだ。

女性は男性よりも健康に関心が高いことをふまえ、タバコ産業は女性に向けて低タールタバコを販売、女性の禁煙に歯止めをかけた。

タバコ産業は、低タールタバコには、健康上のメリットなどまったくないか、ほぼゼロに等しいといったことを知りながら、低タールタバコを、より害が少ない製品として宣伝し、販売してきたのだ。

また、タバコ産業は、タバコが女性に及ぼすあらゆる害は誤りだと、攻撃を仕掛けてきた。「喫煙による三大疾患である肺癌、心疾患、慢性気管支炎(下部気道疾患)は、男性特有の病気で、女性はこれらの病気になる危険性が低い」といった世の風潮を助長した。

もちろん、タバコは胎児にも影響があるという証拠を否定し、対策を講じておくことも忘れなかった。

このように、タバコ産業は、自社の存続のために、人命などそっちのけで、タバコの危険性を世間の目から隠し、政府の規制を逃れて、製品を売りまくってきたのだ。

そして、子供や若者、女性、途上国市場と、徐々に市場を拡大していった。だからこそ、わずか1世紀で世界中を席巻するほどまでに成長することができたのだ。


何気なく使っている日用品は危険なものが多いです。大手・有名メーカー品が安全、安心ではなく様々な弊害がでています。シャンプー、歯磨き剤から化粧品など安全、安心なよいものを愛用したいと願うあなただけを精一杯支援いたします。
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