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揺らぐ沖縄
揺らぐ沖縄 すり込まれた反基地
◆教員が県民大会に生徒を「動員」
鳩山由紀夫首相(当時)が米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設先を「同県名護市辺野古」と明言した直後の5月25日。名護市労働福祉センターは異様な熱気に包まれていた。
急(きゆう)遽(きよ)、沖縄県を訪れた社民党党首、福島瑞穂消費者・少子化担当相(当時)は、50人の住民を前に自説を唱えた。
「どんなことがあっても辺野古に基地は造らせない」
参加者が噴き出す汗をぬぐいながら始まった対話集会。沖縄県教職員組合(沖教組)に所属する男性はマイクを手にまくしたてた。
「米軍と自衛隊が(移設飛行場を)共用するという案もある。米軍はもちろん反対だが、自衛隊も受け入れられない。われわれの親兄弟は日本軍に虐殺されたんだ」
会場は一瞬、静まり返り、その後、大きな拍手がわき上がった。
「われわれはいつも犠牲者だ」
65年前の沖縄地上戦の悲劇への被害者感情を反対運動に重ね合わせる住民らの口からは「反日・反米論」が飛び交った。
4月25日、強い日差しのなか、同県読谷村の運動広場で普天間飛行場の早期閉鎖・返還と県内移設反対、県外移設を求める県民大会が開かれた。主催者発表で9万人余りが参加。那覇市内の40歳代の県立高校PTA会長によると、ある県立高校の男性教員が2年生と3年生の女子高生をドライブに誘い出した。2人は会場に着いて初めて県民大会に誘導されたことに気付いた。彼女たちは関心がなく、手渡された弁当を食べ、大会が終わるまで木陰で休んでいたという。
PTA会長は振り返る。「おとなしい子供たちを狙って誘い出したようだ」
普天間問題を抱える沖縄県では、昭和20年の地上戦の悲劇を根拠に反米基地闘争と反日運動が展開されている。背後には、沖教組と沖縄県高等学校障害児学校教職員組合(高教組)の姿が見える。沖縄の子供から日本人の誇りとアイデンティティーを奪う両教組の実態をリポートする。
「(沖縄県)読谷村(よみたんそん)までの交通費やガソリン代は組合から支給されるので、みんなで大会に参加しよう」
「参加した先生は氏名の報告をお願いします」
30代の県立高校教員によると、普天間飛行場の県内移設反対を訴える4月25日の県民大会の直前、学校で毎朝開かれている職員会の後、男性教員からしきりに勧誘されたという。
この教員は参加を見送ったが、「言われるままに県民大会に参加した若い先生も多い。別の高校では、教員が『取材だ』と称して、写真部の生徒を動員したという話も聞いた」という。
「昨年、普天間飛行場の県内移設反対の署名運動に誘われた。県民大会前には『是非参加しましょう』という文書が校内で回覧された」。同飛行場にほど近い中学校の40歳代の教員も、こう打ち明ける。
「普天間飛行場の県内移設反対運動の主導的役割を果たしているのは、沖縄県教職員組合(沖教組)や沖縄県高等学校障害児学校教職員組合(高教組)だ」
70歳代の元県立高校校長の男性はこう断じる。
「県内移設反対運動には60年安保闘争の亡霊が乗り移っている。自虐史観による反日教育を繰り広げる沖教組と高教組が、悲惨な地上戦を経験した県民の心に潜在する被害者意識をあおって反米軍基地運動に利用し、反日・反米闘争を激化させている」
戦後、米軍統治下にあった沖縄で、県民は一丸となって本土復帰運動に取り組んだ。その先頭に立ったのが教員たちだった。
沖教組のホームページや県教育委員会関係者によると、沖教組の前身は「荒れ果てた戦禍を取り戻すには教育にしかず」を合言葉に昭和22年に発足した「沖縄教育連合会」である。27年に「沖縄教職員会」と改称されたこの組織は、「日本人なのだから日本の教科書を使おう」と、東京から教材を“輸入”するほど親本土、親日本派だった。
本土復帰前から教員で、沖縄教職員会のメンバーだった高校の校長経験者はこう振り返る。
「われわれにとって日の丸は国旗で、君が代は国歌。教職員全員が率先して日の丸を掲揚し、君が代を斉唱した。日の丸のない家庭には教職員会で販売し、掲揚する竿(さお)のない家庭にはそれを提供した。教職員全員が日の丸と君が代を尊重し、本土復帰を目指した」
沖縄教職員会は35年に「明るく楽しい歌声とともに、時代を担う子どもたちがすこやかに育つように」という願いを込めて、愛唱歌集を作成した。そこに紹介された楽曲には、当時の教員たちの本土復帰への熱い思いが伝わってくる。
例えば、『祖国への歌』の歌詞の一部はこうだ。
〈この空は祖国に続く/この海は祖国に続く/母なる祖国わが日本/きけ一億のはらからよ/この血の中に日本の歴史が流れてる/日本の心が生きている〉
〈この山も祖国と同じ/この川も祖国と同じ/母なる祖国わが日本/きけ一億のはらからよ/この血の中で日本の若さがほどばしる/日本の未来がこだまする〉
このほか、『蛍の光』『荒城の月』『母さんの歌』『赤とんぼ』『月の砂漠』『雪のふる町を』『静かな湖畔』『大きなくりの木の下で』『通りゃんせ』『木曽節』などの童謡や民謡も数多く盛り込まれた。
前述の校長経験者は「とにかく本土に対する強い思いから、復帰を心の底から願っていた。海上で復帰運動をしたり、トラックの荷台に椅子(いす)を並べ、そこに座って日の丸を振って運動したりしたことを、今でも思いだす」と話す。
ところが、関係者によると、沖縄の本土復帰前年の46年9月、教職員会は解散に追い込まれ、沖教組が結成された。沖教組は47年5月の沖縄の本土復帰を経て49年に米軍基地撤去などを求める闘争を全国的に展開するため日教組に正式加盟し、組織的に反米軍基地闘争や反日運動を開始した。同時に、子供たちに対し、反日教育を徹底して行うようになったという。
教職員会が果たしてきた使命に終止符が打たれ、県民に反日イデオロギーを刷り込む「機関」と化した。
当然のように、教員たちは日の丸を掲揚しなくなった。教職員会の愛唱歌だった『前進歌』の4番の歌詞「友よ仰げ日の丸の旗/地軸ゆるがせわれらの前進歌/前進前進前進前進輝く前進だ/足並がひとりでに自然に揃(そろ)う/だれも皆心から楽しいからだ」も削除された。沖教組にとって「仰げ日の丸の旗」は“許されない歌詞”だった。
(出典:産経新聞 2010.7.7)
◆反日・反米思想植え付ける「平和教育」
沖縄県では毎年、6月23日の「慰霊の日」が近づくと、県内の各小中高校で、昭和20年の沖縄地上戦を題材とした平和教育の特設授業が行われる。
だが、その内容たるや、「平和教育」から大きく逸れたものとなっている。
「実際は沖縄の民が公民化を強いられたなかで、いかに苦しんで死んでいったのかを教え込み、日本軍を悪として悲惨さだけをたたき込む。鬼畜日本兵、鬼畜日の丸、鬼畜君が代だ。その結果、愛国心のない子供を増やしてしまった」
かつて教壇に立った70歳代の元県立高校校長は自戒を込め、こう語る。
30歳代の県立高校教員も「戦争の悲惨さではなく、日本兵がどれだけ悪かったかを知らしめるビデオを流すことが多い。悲惨さを強調し、誤った歴史観をすり込むことで、反日感情と被害者感情を植え付け、それを闘争に利用しようとするのだ」と指摘する。
この教員によると、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設問題に関し「また沖縄は日本の犠牲になる」と生徒たちに教える教員もいるという。沖縄教職員組合(沖教組)と沖縄県高等学校障害児学校教職員組合(高教組)の非組合員でも、そう洗脳される教員がいるとし、こう警鐘を鳴らす。
「日本があって沖縄があるはずなのに、授業ではそれを否定することから始まる。怖いのは、おのずと反日意識がすり込まれ、沖縄県民の目線でしか考えられないように教え込まれてしまうことだ」
沖縄に進出した日教組の方針は、教育現場にいかに影を落としたのか。
本土復帰後、指導主事だった前出の元県立高校校長は、「こんなに驚いたことはなかった」と振り返る。
沖教組から突然、授業での歌唱を禁止する楽曲をめぐる“指導要領”が教員たちに出されたのだ。
「生徒に『荒城の月』を歌わせてはいけない。なぜ、こんなものを教えるのか、なぜ、花鳥風月を教えないといけないのか」
「軍隊行進曲は自衛隊を軍隊にする歌だ」
「『行ってみたいなよその国』の詞がある童謡『海』は、侵略の歌だから学ばせてはいけない」
先に紹介した高校教員も、沖教組が主導した教育の弊害を肌で感じた一人だ。
「東京の大学に進学し、それまで自分が沖縄で受けてきた教育が間違いだったと気づいた。自国に尊厳を感じさせない教育だった。自分が何人かというアイデンティティーがかき消されてしまっていた」
この高校教員によると、小中高時代、自宅では祖父母が天皇陛下の写真を飾っていたが、学校では日本軍は悪だと教えられた。皇室に関する正しい情報はなく「天皇家は税金の無駄だ」と教えられてきたという。
「当時、国歌を聞くとゾッとし、国旗を見るとドキッとし、万歳をすると気分が悪くなった。生理的に拒否反応を示していた。平和教育の名の下に『日本軍=悪』という認識が植え付けられてしまっていた」
学校現場では、何が起こってきたのか。
本土復帰から8年後、当時、中学生だった40歳代の男性は、「かつて日本軍は最高の軍隊だったが『日中戦争以降は最低、最悪、極悪非道の軍隊だった』と教えられた。天皇陛下は本の中だけの存在で、学校で教えられた記憶はない」と語る。
この男性は11年前、当時小学校一年の長男の担任教員から「音楽の教科書に『君が代』が載っているが、学校では教えない。悲惨な戦争が日の丸の名の下に引き起こされたからだ」と言われた。「国歌はちゃんと学校で教え、判断は子供に任せるべきだ」と抗議をしたが、相手にされなかったという。
今でも沖教組や高教組の主導のもと、学校では同じ光景が続く。
入学式や卒業式で国旗は掲揚されるが、準備をするのは校長や教頭、事務長の管理者で、教員は何もしない。国歌斉唱の際には曲を流されるが、教員は起立はしないうえ歌わない。生徒と父兄は起立はするが、生徒は『君が代』を学んでいないから歌えない。学校では、国歌や皇室の話をしようにも口出せない雰囲気に包まれている…。
前出の高校教員はこう怒りをぶつける。
「30~40代の教員はまじめだが、その分意味を考えずに、教えられたことを受け売りして子供たちに押しつけているだけだ。いつしか学校では反日・反米教育が根付いてしまった」
普天間飛行場の県内移設に反対一色に染まったかのように伝えられる「県内世論」は、かくして教育現場からつくられていった。
(出典:産経新聞 2010.7.8)
◆「政治闘争」からの脱却が課題
慰霊の日の6月23日、沖縄県糸満市役所前から平和祈念公園(同市摩文仁)まで、毎年恒例の平和祈願慰霊大行進が行われた。千人を超える参加者の中に埼玉県桶川市から駆けつけた女性がいた。
臼田智子さん(67)だった。父の伍井(いつい)芳夫中佐=当時(32)=は昭和20年4月1日、米軍の沖縄侵攻を阻止するため、妻と3人の子供を埼玉県に残し、鹿児島県の陸軍特攻基地「知覧」から第23振武隊長として出撃、沖縄近海で散華した。
当時2歳だった智子さんには父の面影は薄いが、平成4年から欠かさず慰霊の日には沖縄を訪れている。
「最近ようやく沖縄の一部の人たちも父がなぜ戦死したのか分かってくれるようになった」。智子さんはそう語る。
大戦末期の昭和20年3月下旬から、多くの陸軍特攻隊員が沖縄に向け飛び立ち、1036人の命が散った。石垣島出身の伊舎堂用久(いしゃどう・ようきゅう)中佐=当時(24)=もその一人だった。3月26日、沖縄県民として初めて石垣島の白保飛行場から部下4人と出撃し、慶良間(けらま)諸島近海で特攻を敢行した。
だが今、多くの沖縄県民には、特攻隊の話はおろか同郷の伊舎堂中佐の出撃の事実さえ知られていない。
「戦艦大和は沖縄を攻撃するのが目的だった」「特攻隊の任務は沖縄を守ることではなかった」-。そう信じている若者も少なくないという。
47年の本土復帰後、沖縄県教職員組合(沖教組)と同県高等学校障害児学校教職員組合(高教組)が進めた「日本軍=悪」とする教育の影響にほかならない。
「学校では生徒に尊ぶべき史実が封印され続け、国家のために命を捧げた英霊の思いを後世に伝えることはなかった」
沖教組に所属した元高校教員はこう打ち明ける。
◆「自衛隊の存在認めぬ」
本土復帰後、沖教組が影響力を強めるとともに、沖縄での教育は加速をつけて「親日本」から逸脱、変節していった。
保守系の元県議によると、沖縄で本土復帰運動が一段と高まった38年ごろ、「沖縄を階級闘争の拠点に」と本土でイデオロギー闘争を繰り広げていたグループが参入し始めた。「祖国愛」教育を実践していた沖縄教職員会もその余波で徐々に左傾化していった。
44年、沖縄返還に向けての佐藤栄作首相・ニクソン大統領による日米共同声明が出されると、「米軍基地が残る欺瞞(ぎまん)的返還だ」として闘争はさらにエスカレートした。46年、後に日教組に加盟する沖教組の結成に至った。
ある県立高校のPTA会長は振り返る。
5年前、沖縄戦のジオラマ(戦史模型)が展示されている陸上自衛隊那覇駐屯地に生徒を引率し「平和」について考えようと父兄に提案した。だが「自衛隊の存在を認めることになる」と一部の親が強硬に反対したため頓挫したという。
「後ろに日除けが付いた帽子を小学校で導入しようとしたが、親や学校に『日本軍に見えるからダメだ』という理由で却下された」
国歌斉唱問題も根深い。30歳代後半の中学校教員は「卒業式などで君が代の曲は流されるが、私も『天皇陛下を讃える歌だ』として教えられなかったから歌えない。生徒から聞かれても『先生も習わなかったから教えられない』と答えるしかない」と話す。
◆「普天間」は“主戦場”
「5・15(5月15日)平和行進 5・16(5月16日)普天間基地包囲行動、見事成功!」
「雨にも負けず、アメリカにも負けず」
沖教組のホームページには過去の活動実績が誇らしげに掲げられている。
鳩山由紀夫前首相が宜野湾(ぎのわん)市の米軍普天間飛行場の移設先について「少なくとも県外」と公言したことで、沖教組は「普天間」を反米・反日イデオロギー闘争の格好の主戦場に据えて勢いづいた。
本土復帰から38年、ある県立高校教員は、沖教組の「罪」を告発する。
「県民に反保守の意識を植え付けた。米兵の事件は批判するが、中国の潜水艦が領海侵犯しても大きな問題にしない。沖縄は左翼思想に犯され過ぎている」
普天間飛行場の移設先候補として名が挙がった本土の各自治体は即座に「ノー」を突きつけ、基地を暗に沖縄に押しつけた。保守陣営でさえ「差別だ」と批判するが、当事者意識なき本土の姿勢が、沖縄に根付く反基地感情をあおり、沖教組につけ込むすきを与えているのも事実だ。
沖教組の元関係者は、沖縄の将来をこう危ぶむ。
「沖縄は政治闘争に利用されてきた。偏向教育を受けた若者が言論リーダーとなっていることも拍車をかけている。自虐史観を除去し、沖縄がどこに向かうのかを真剣に考えなければならない。本土も精神的に沖縄に近づいてくれないとだめだ」
(出典:産経新聞 2010.7.10)
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