インディー(16)



ライムや、レモンをグラスに搾り込むときも同じように小指を立てた。


その仕草がセクシーだと指摘してやると


「グアッハッハ!」

と大声で笑った。


笑い方がおもしろいと言ってやると

また
「グアッハッハ!」
と笑った。


こんなおかしなバーテンダーには、今まで出会ったことがなかった。


ヤベが作ったカクテルは、私が指摘した
「やさしい」という表現が効き過ぎたのか、少しだけ甘すぎた。


「今度は、もう少し甘さを抑えてロングで。同じくテキーラベース!」
とオーダーした。


「何かスポーツやってたの?」

「えぇ、サッカーやってました」

「全日本ユースの候補になったこともあるんよ」
とナオミ。

ヤベははずかしそうに
「候補止まりッス。挫折しました。上には上がいるんッスよー」


ヤベがサーブしてくれた2杯目のテキーラベースをナオミにすすめながら、
「ケガでもしたの?」

「ん、まぁ、そんなトコッス!」
と照れくさそうに下顎を突き出した。

「これ、すんごくオイシィ!」とナオミ。

いつの間にか、さっきまでの堅い口調は消えていた。


「どれどれ?」と私。

「ほんとだ、ムチャクチャ旨い。バランスがいいねぇー」


「ありがとうございまッス!」とヤベ。


「これって、ヤベ君のオリジナルだよね?名前付けない?どんな名前がいいかなぁ・・」

「そぉっすねぇー」

と悩むヤベ。


「オカチャンってどうですか?全日本の監督やってはったでしょ?」
とシレッと言うナオミ。(ナオミのジョークはいつもシレッとして鼻にかかっていた・・)

「オレも、オカチャンやしか?」

「そうや!オカチャンスペシャルってのどうですか?」

「なんかダセーなぁ。それじゃ、こうしよう。オレが店に来てカワイイ先客がいたときは、いつものヤツってオーダーするよ。誰もいなければ、オカチャンや」

「グアッハッハ!それで行きましょう!」

BGMはルパンⅢ世のテーマ。

ヤベもナオミも、これがいたくお気に入りのようだった。


「ところで・・」
とナオミの方に向き直り

「イラストとか描けないかなぁ?これから音楽とワインのフリーペーパーを始めようと思っているんだけど、表紙のイラストを描いてくれる人を探しているんだ」

「パソコンでなら、いつも落書きしてますけど・・。彼氏の似顔絵のつもりで馬の顔描いたり、自画像を描いたり・・・」


(つづく)



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