インディー(132)



カフェは、普段と違って、観光客たちで異様ににぎわっていた。

標準語に近いことばで、初老のおばさんたちがにぎやかにしゃべり合っている。
観光旅行というものは、人を異常にハイにしてしまう。


待ち合わせの場所、失敗だったな、と一人つぶやく。


ユキは、いつもの通り、15分以上遅れて、しかし、いつもとは全く違ういでたちで現れた。


髪を短くカットしてパッションピンクに染め上げて、ガチガチに固めていた。
衣装は、ピンクとディープパープルのストライプの上下。
上はTシャツ。下はパンタロンっぽい感じ。

左腕には、碇のマークのTATOO。
(意外にかわいらしい)

真っ黒の厚手のグラサンをかけていたので、私の真正面に現れても、だれなのか認識できなかった。

座って、すぐに取り出したタバコの銘柄で、やっとユキであることに気づいた。


「決めまくりジャン!」

「だって、あんたがこうしろって言ったんだよ」
と、寝起きのような低い声でボソリと言った。

「60年代のフレンチサイケって感じ」

「そんなの知らない」

「ブリジット・バルドーとか知らない?」

「何、それ?ウルトラマンに出て来る宇宙人の名前みたい」

「ハハハッ!ウルトラマンなら知ってるんだ」

「だってテレビでやってたもん」

「でも、ビシッと決めて、イイカンジ!」

「ダショ?」

ほめるとユキは、すぐに乗って来る。

芸人、芸能人の卵に共通するキャラクター。

「そのTATOOは、ホンモノ?」

「わけないじゃん!」

「そうだよな!モノホンだったら、これから売り出すのに苦労するから」

「なんで?」

「TATOOがあると、まずテレビは出られないよ」

「そんなもんなん?」

「そんなもんだよ」


「ふうん・」

(つづく)



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