Einsatz

5.風のレジェンズ






5.風のレジェンズ









草むらから出てきたのは薄い金髪で白い竜
ゴーグルは着けていないが、シロンと同種族と思えるその純白の両翼
紅いマントのようなものに身を包み、鎧のような装飾品も身につけていた
そして、シロンと決定的に違うのは、瞳の色がルビーのような紅色だった



「アナタ、誰?」



ナジュリアは自然と名前を聞いていた
周囲にヒポグリフがいることを忘れて…



「私の名はシルファー」

「シルファー…?」

「貴様は誰だ?」



シルファーと名乗った竜の瞳はナジュリアに向いていた



「私は、ナジュ…ナジュリア=ブロウバード」

「…ブロウバード……」



そのシルファーと名乗る白い竜はその名を口にした
その良い(?)雰囲気をぶち壊して、ヒポグリフが言った



『おい、お前達!もうすぐジェイムズが来るぞ』

『時間ね…』

「ということは……?」



ナジュリアは先ほどヒポグリフに言われたことを思い出した
「生贄」という単語に今になってやっと恐怖を覚え始める



『お前が消えちまうってことだ』



ヒポグリフはナジュリアの恐怖などお構い無しに事実を突きつける



「………」

「私がお前を守ってやる」



シルファーはぶっきらぼうに、だが、どこか優しげな雰囲気を漂わせ言った
「守ってやる」と



「シ、シルファー…なんで?」

「…私には、お前を守る理由は無い」



まるで独り言のようにナジュリアの問いに答えるシルファーは何故か先ほどよりも生き生きとしていた



「………?」

「しかし…お前のことは以前から知っていたような気がする……」

「それは私もよ。あなたには何か引っ掛かる……」

『おい!来たぞ!!!』



またもや良い雰囲気を一匹のヒポグリフがぶち壊した
ドシン、ドシンと足音が近づいてくる



『……来た』

「ナジュリア、お前は隠れていろ」

『何言ってんだよ!そいつは生贄だ!!』

「ヒポグリフ、私がオーガを倒せば問題ないだろう?」

『な!ないわ……』

「ナジュを頼むぞ。仲間の元へ連れて行け!!」



シルファーはそう言うと、翼を上に持ち上げ、その場を離れた



『わかった……行くぞ』

「え?」



ヒポグリフはナジュリアの腕を掴んだが、ナジュリアはその足を振り払った



『な!!』

「放して!!私はここにいるから!」



ヒポグリフは仕方がないのでナジュリアの仲間だけでも探しに…と空へと舞い上り、飛んでいった



「オーガのジェイムズだな」



大きな足音と共に、暗緑色のオーガ─ジェイムズ─がやってきた



『そういうお前は、カネルドウィンドラゴンか?』

「シルファーだ」

『名前などどうでもいい。お前は今ここであの世に行ってしまうのだからな』



どうやらジェイムズはやる気満々らしい
と、そこへ先ほど別れたはずのナジュリアがやってきた



「強い力を持っていても、それは本当の強さかなぁ」

「ナジュリア!?」

「戻ってきちゃった」

『知らぬわ、そんなこと!!』

「……」



シルファーはジェイムズの言葉を無視し、飛び掛った
ジェイムズは持てる怪力を棍棒に込めて、襲い掛かる



「ストライクトルネード!!」



ビュウ!ドガァ!!
大きな竜巻が発生し、ジェイムズに突進した



『グハッ!!』



至近距離で必殺技をお見舞いした
たとえ相性が悪くとも所詮はカネルドとコマンド
あっさりと勝利した



『……う…』

「二度とヒポグリフの縄張りを荒らすな」

『………くそっ』

「まだ何かあるのなら遠慮なくやらせてもらうが?」

『覚えていろ…!!』



ほとんどの悪党がやられて帰る際に言う台詞を投げやりに言い放つとジェイムズは森の奥へと消えてしまった



「やったね、シルファー!」

「…あぁ……」



(何だったんだ?今の戦いは…何か…心の奥の力が、出されたような)

シルファーは一人、考え込んでいた
目の前の少女が不審気に自分を見つめていると気づかないまま

「シルファー?」

「そうか…お前が……──」





>>>





その頃、カガリとシロンは森の中をただウロウロと彷徨っていた

「どこ行ったんだよ、ヒポグリフ達…」

「落ち着けよ、サーガ。お前が行くって言うなら、俺も行く」

「お前には関係ない」



カガリは前を向いたまま素っ気無く言う



「まだ日も浅いけどな、カガリ。お前は俺のサーガだ」

「だから何だ?」



シロンの突きつける当たり前のことに対し、振り向いて、きっぱりと言った



「お前を守るためなら、この命捨ててもいいと思ってる」

「………」



シロンのその言葉に何も言い返せず、カガリはそっぽを向いた
すると、その方向からヒポグリフが飛んで来た



「あ…ヒポグリフ…!?」

『おい…』



ヒポグリフは地上近くで言った



『早くおまえらも来い!!』

「何言ってるんだ?こいつら…」

『いいから来いよ!!』

「わかんねーけど、サーガ、行くぞ」



シロンはカガリを自分の背に乗せるとヒポグリフの後を追っていった
森の真ん中の開けたところへ来ると、ナジュリアらしき人影が見えた



『着いたぞ』

「ナジュがいる!」

「あれは誰だ?」



シロンが指す方を見ると白い竜がいた
ナジュリアも一緒にいる



『あいつとナジュリアの心が俺達の縄張りを守ってくれた』

『……ナジュリアのおかげだ』

「きっと何かを守ろうとするとき、一番強い力が出せるんだよ。人間ってそういう生き物だから」

「そうだな」

『この度は世話になった』

『何かあったら言いなさいよ』



ヒポグリフが口々に言う
「ありがとう」とナジュリアは笑って言った
そして、最後にまた感謝の気持ちを述べると、ヒポグリフの群れは森の奥に消えていった



「ところで、お前は誰だ?」



カガリが唐突な発言をする



「私はカガリ。カガリ=L=ブラック」

「…俺ぁ、シロンだ」

「………」



シルファーはカガリとシロンの名乗りに対してただ黙然としていた
そこでカガリが口を開く



「なっていないな。こちらが自己紹介をしたんだ。お前は何者だ?」

「ちょっと、カガリ!」



今にも喧嘩を売りそうなカガリの様子の変化に気づいたナジュリアは止めに入る



「道理で見たことのある顔だ…ブラック家の者か。…申し送れた、私の名はシルファー。カネルドウィンドラゴンだ」



シルファーは改めて三人に名乗り、カガリも普通に戻る



「じゃ、行くか」

「そうだな」

「早くしないと遅くなっちゃうよ」



三人が歩き始めた方向に対して、逆方向に転換しようとするシルファー



「では…私はここで退散しよう」



しかし、ナジュリアは



「勿論シルファーもだよ」



と言った
その言葉にシルファーは目を見開いている



「何故…?」

「私のこと、サーガって言ってくれたじゃない!!」

「そうか。どこへ行くんだ?」



シルファーは驚いた顔から僅かに微笑み、これからの行く先を訪ねた



「"ラグズバレー"よ」



再び一行の旅は始まった
シルファーという新たな仲間を加えて





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