Einsatz

7.風の二人






7.風の二人









「ん~良い風が吹くねぇ」



ナジュリアが大きく伸びをして言った



「あぁ、そうだな」



シルファーも同意する



「そろそろ風の国に入ったからだろう」



「風の国は年中様々な風が吹いている」とファンロックは解説した



「知ってるわ。『風の国で風が止むのはありえない。』って」

「『風が止むのは王が死んだとき』なのだろう?」



ナジュリアとシルファーとがファンロックが言おうとしていたことをそのまま言う



「…そうだ。『風が止むときは王が崩御するとき』とな」

「へぇー。知らなかったぜ、そんなこと」

「私もだ」



これでまたウンチクが増えたとばかりに頷く、カガリとシロン



「ところで、ファンちゃん?」



ナジュリアは前方を飛行しているファンロックに話しかける
しかし、ファンロックはその言葉に返事もせず、降下していった



「何だ?降りるのか?」



シロンが訝しげにファンロックが降下した方を見る
が、すぐにファンロックは上昇してきた
カガリとシルファーは哀れみを宿した瞳で帰還したファンロックを見つめる



「ファンちゃ──」



ナジュリアが再び、その名を呼ぼうとすると、ファンロックが遮った



「その可笑しな呼び方はやめろ!」

「すみませーん」



ナジュリアは悪ぶれもせず、ただ謝罪の言葉だけを口にした



(やっぱりか…)



カガリとシルファーは同時にそう思った
先ほどのファンロックの降下は、ナジュリアに変な呼び方をされたため、ズッコケる変わりに、落ちて行ったということが判明する



「だって、ファンちゃんのほうが呼びやすいじゃない」

「呼び捨ては構わん。しかし、名前を区切り、ちゃん付けを許可した覚えは皆無だ」

「えぇー?だって、ファンちゃんってイメージなんだし」



ファンロックは敢えて冷静にナジュリアのちゃん付け呼びを阻止しようとする



「だいたい、私のイメージが崩れるだろうが」



(イメージ作りをしていたのか…?)



このファンロックの発言にはナジュリアも含め、全員が疑問符を頭に浮かべた



「いや、だぁから、ファンちゃ──」



ナジュリアのファンちゃんという呼び方は最後まで続いた



「どうしたの?シルファー…っ」



何故なら、シルファーが急停止したからである
ある建造物を見つめて
ナジュリアもその見つめる先が何かわかると目を見開いた



「あぁ、あれか。あれは言わずもがな、風の竜王が居る、風の城"トルネードパレス"だ」

「トルネード、」

「パレス」



ナジュリアとシルファーは"トルネードパレス"という単語に反応する



「そうだ。国を象徴とする建造物の一つで、そこには竜王の他に、"竜王に属す一族"達が住んでいる」

「ふぅん、"王族"ね」

「んじゃぁ、あそこに行けば、竜王に会えるってわけか」

「うむ。我々もそこへ向かうとしよう」



そうだな、とカガリとシロンも同意する
しかし、ナジュリアとシルファーは違った



「どうして?!火の国が先でしょう?サーガを探さなくちゃ」

「ナジュリア。お前は風のサーガ…」



一度くらい会っておくべきだ、と有無を言わせぬファンロックの口調にナジュリアは何も言わなくなった



「わかったならば、早く行くぞ」



と、ファンロックが前進しようとすると、今度はシルファーが



「私は遠慮しておこう」

「何故だ?シルファー」



ファンロックはシルファーの瞳を見つめる



「とにかく!嫌だと言っている!私は行かない!!」

「っ!?きゃぁァァ!」



ファンロックの視圧に耐えられなくなったシルファーはナジュリアが背中に乗っていることも忘れ、下の森に飛び込んだ



「おい!シルファー!」

「ナジュ!」

「待て」



追いかけようとするカガリとシロンをファンロックは止めた



「ファンロック!」



自分の行動を止めようとするファンロックを睨むシロン



「わかっている。私が説明しよう」





>>>





一方、先に森へ入り込んだナジュリアとシルファーは



「何故だ!どうして、急に…」

「し、シルファ、ァー」



背中から突如聞こえてきた声に、ハッと我に返り、背中をそろりと見ると、



「速いよぅ」



見事に目を回し、ほぼ気絶寸前のナジュリアがかろうじてしがみ付いていた



「ナジュリア!!」

「うぅ…」



シルファーはとりあえず、ナジュリアを木に凭れかけさせた



「すまない…とっさの事だったので…」

「はぁ…。別にいいけど…理由くらい聞かせてくれるよね?」

「………」



ナジュリアの言葉に無言で返すシルファー



「トルネードパレスに行くのがそんなに嫌?」



ナジュリアがズバリ痛いところを突いてくる
シルファーは苦虫を噛み潰したような顔をして言った



「私は、あそこが嫌いだ」

「うん、私も嫌い」



ナジュリアの同意とは似つかない、その言葉にシルファーは驚いた



「実は、私ね、王族の者なの」



ナジュリアの告白に目を見開くシルファー



「お前が王族だと!?」

「そう」

「しかし!私は城内でお前を見たことはない!」

「私も、シルファーのことを城内で見たことは一度もないよ」



ナジュリアとシルファーは黙りあった



「お互い、話す必要がありそうね」





>>>





「風の王族…"ブロウバード家"だと!?」

「そう。ナジュは、そこの跡取り候補」



カガリはファンロックの反応を無視し、話を進める



「馬鹿な!あそこに娘など、いなかったはず!」

「でも、いるのが現実。それに目を向けず、無かったことにすることなんてできない」



同時刻、カガリ達はナジュリアとシルファーを探しながらナジュリア達と同じ話をしていた



「……っ!そうか…ブロウバードの者だったのか、彼女は」

「ナジュは特殊なんだ。色んな意味で」

「王族って何なんだよ」



シロンは相変わらず話に着いて行けず、頭に疑問符を浮かべたままである



「さっきも言ったように、"王族"は各国に一つずつあり、竜王の世話をする…いわば、人間版の補佐役だ
 しかし、何故王族の者がカガリ殿のボディーガードなど…」

「それは…―――」





>>>





「家出をしただと?!」



ナジュリアの二度目の告白にまたもや驚くシルファー



「うん、そう」

「何故、家出など……?!」



シルファーが問い詰めると、ナジュリアは苦笑しつつも語り始めた



「…私には何でも出来るお兄ちゃんが一人いるの
 でも、お兄ちゃんが出来すぎ君だと、皆が私に期待するの。私はお兄ちゃんじゃないのに……
 そんな時、あるパーティーが開かれたの」





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