Einsatz

11.共通の記憶






11.共通の記憶









「先生、ちょっと来て!」

「なぁに?シルファー」

「見せたいものがあるんだ!!」

「まぁ!」



その先生と呼ばれた小柄なカネルドヘキサドラゴンは二人の幼子に手を引っ張られながら、困ったような笑みを浮かべて着いて行った



「お兄ちゃん!」



連れてこられた場所は城内の庭だった
今は春も終わり、夏に差し掛かった頃で緑の若葉が茂っている
時折吹く風が気持ち良い



「見てて、先生!コマンドトルネード!!」



ビュオウ!!
一陣の風がその場に巻き起こる
すると、どこからか淡いピンク色の花びらが舞い落ちてきた



「うわぁ……すごいわ。オメガ、シルファー」

「えへへー」

「今日は先生の誕生日でしょ?この日のために俺は技を、シルファーはロギドヘブンから取り寄せた千年桜をずっと育ててきたんだ」

「そうなの…先生、嬉しいわ」



そう言って先生は俺たちの頭を撫でてくれた





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それから数年経ったシルファーの誕生日
俺は既にカネルドウィンドラゴンに、シルファーはコマンドウィンドラゴンに成長していた

「ほら、シル。俺からのプレゼントだ!」

「わあぁ!ありがとう!これ、なぁに?」

「オルゴール。お前の一番好きな曲で作った!」

「本当に?!やったぁ!ありがとうオメガ兄さん!!」



シルファーはそう言い、オルゴールを俺から受け取って早速ふたを開けた
すると、どこか懐かしく、優しい、透き通った音色が流れはじめた



「これって!?」

「そう。小さい頃から──」



俺がオルゴールの曲についてシルファーに返答しようとしたら、突然、城内に呼び出された
俺たちが急いで竜王の間に駆けつけると、そこには先生が横たわっていた
風の国の上層部のレジェンズ達も数体いる
俺は直感した─直感してしまった──先生にはもう長くないと
医者の話によると、以前から肺を病んでいて、今日になって突然悪化したとのことだった



「先生!!」

「心配かけてごめんなさいね、でも、もう大丈夫よ。…ゴホゴホッ」



明らかに大丈夫では無さそうな先生に、そんな先生を案じるシルファー
俺はそれをずっと見つめていた



「ほら、見て!オメガ兄さんが僕のためにオルゴールを作ってくれたんだ!僕が小さい頃から知っている歌の」



シルファーは急いでネジを巻き、ふたを開けようとしたがそれは叶わなかった
何故なら先生がそれを手で止めたからだ



「そう。…よく聞いて、シルファー、オメガ。私はもう長くないわ。だから最後に言っておきたいことがあるの」

「……」

「シルファー…あなたは、お兄さんの言うことをしっかり聞いて、あなたの思った道を進みなさい
 決して後ろを振り返っちゃだめよ。自分に負けないで」

「はい…、先生……うぅ、っく」



先生の言葉を聴き終わるとシルファーは堪えきれず、泣き出した
先生は今度は俺の方を向いて言った



「あなたは、近いうちに竜王になるでしょう。あなたは偉大な王、レストネードの息子です。
 お父様に…いえ、お父様よりも偉大になれる可能性をあなたは持っているわ。
 それもあなた次第よ、オメガ」

「はい…先生…!…俺、立派な王になります!」

「そして、最後になるけれど、あなたたちの本当のお母様は生きているわ。あなたたちのすぐそばでずっと見守っていらっしゃられた…」

「お母さんが生きてる…?」

「そうよ……最後だから、言うけれど…、あの方は…うっ…貴方達の記憶を消したの…仕方がなく…」

「記憶を消した?」

「えぇ…記憶を、解く鍵は…すぐ、そこ……」



俺のその言葉を聴いて、先生は微笑んで頷いた
そして、その後俺とシルファーは先生の側近の者から先生の側から離れるように言われ、仕方なく、本当に仕方なくその場を去った
その間もずっとオルゴールは鳴り続けていた





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「お前、あん時のオルゴールどうした?」

「うん…ずっと聞いていたら壊れちゃったんだ…ほら」



シルファーから受け取ったオルゴールは既に所々ネジが緩んでいたり、音を奏でる金属部分がかけていたりした



「お前がそんなに気に入ってたとはな…次のお前の誕生日にまた作ってやるよ。今度は永遠に壊れないのを」

「うん!楽しみにしてる!!」



先生の死からの心の傷も癒えた頃、俺の前の竜王が竜王の座を辞退した
先生の言ったとおり、俺は竜王に即位することになった



「シルファー…俺は竜王になることに決めた」

「うん、知ってるよ」

「それで、悪いけど、お前の誕生日には帰って来れそうにない
 これから任命されにミラージュパレスに行かないといけないんだ」

「そんな!去年の約束は!?」

「あぁ?約束?……そんなことより、俺は今はこっちの方が大事なんだ」

「え…」

「じゃぁな!シル!留守番頼んだぞ!」







そして、数日後…城に戻った俺を待っているのは誰もいない、空っぽのシルファーの部屋だった





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