Einsatz

13.Clair de Lune






13.Clair de Lune









城外に出てみると六体のオーガがいた
しかも、その六体全てが闇の結晶を背負っていた



「竜王を出せ!」



オーガの一体が叫ぶ



「お望み通り、出てきてやったぞ」



オメガが上空からオーガに言った
それに反応してオーガ達は一斉にオメガの方を向く



「なに!?」

「お前達どこから入ってきたんだ?こう見えてもここの防衛は結構なものだぞ?」

「ふん、お前に言う筋合いはない!行くぞ、お前達!竜王に向けろ!」



先ほどのオーガの合図に伴い、オーガ達が古いタイプのバズーカ的な物の照準をオメガに合わせる



「何っ!?」

「放てぇ!!」



ドシュドシュドシュッ!!
連続して、鋭い槍のようなものが発射口から放たれた
最初の槍はなんとかかわせたものの、それはフェイクだったようで、本射撃が次々と己の体に突き刺さっていく



「うがぁ!!」



ドサァッ
竜王クラスのレベルならこんな攻撃は効かないはずだが、オメガが地面に墜落した
どうやら、本射撃に即効性の毒が仕込んであったようだ



「ふん、良い気味だ」

「オメガ!!」



そこへ先に飛び立ったカガリ、シロン、クラウディオンにリューリアが駆けつけた



「あ…お前達…うっ…ごほっ」

「大丈夫じゃなさそうだね」

「ったく、いつも一人で無理するから…」

「馬っ鹿…!シルファーの前くらい、カッコつけ、させろ…」



そう言いながらもクラウディオンとリューリアはその場からオメガを遠ざけようと試みる



「お前か…ジェイムズってやつは」

「ふん。だったら何だ」

「よくもオメガに重傷負わせてくれたな!ウィングトルネード!!」



シロンは大きく翼を羽ばたかせた
そして、竜巻を発生させて攻撃する



「そんな攻撃効くものか…ふん!」



ジェイムズは持ち合わせていた棍棒を振り上げ、シロンを狙う
が、ぶつかるという瞬間に何者かがジェイムズを攻撃した



「ファンロック!?」

「…私も加勢しよう」

「ちっ…また邪魔が入りやがって!!行くぞ、お前達!」

「ストライクトルネード!!!」

「うわぁ!!」



そこへ再び攻撃が入った



「シルファー!」

「…」



その姿に一同は目を見張った
シルファーとナジュリアだった



「やっと来たか」

「遅いぞ、シルファー!」

「あと少しだ」

「やるぞ」

「ウィングトルネード!」「アトミックフレイズン」「ストライクトルネード!!」



それぞれの技がジェイムズを始めとしたオーガ達に炸裂する
すると、背中に背負われていた水晶が破壊され、オーガ達は気絶した



「…終わったな」

「後は、国の者に任せよう」



ファンロックの言葉に皆は頷き、重傷を負ったオメガの元へと急いだ





>>>





「オメガ!!」

「シルファー…!」

「渡すの遅くなったけど、俺は忘れなかった…お前との、約束…」

「もう、いい。分かったから。何が一番、大切なのか!!」

「シロン!早く何とかしてくれ!!」



シルファーはシロンに手当ての要求をする



「あー、大丈夫だろ。一応止血してあんだろ?」

「う、うん」

「とりあえず、包帯換えて、鎮痛剤と増血剤打っとくか」



シロンが先ほどから待機していた医療部隊から包帯と薬、注射器もろもろを受け取って作業を開始する



「シロンさんって医者だったんだね」

「あれ?リューリア、知らなかったのか?シロンって言えば、あの方の…」

「それは知ってるよ。でも能力まで受け継ぐなんて思ってなかったんだもん」



四十分後、無事、治療を終えたオメガはいつものようにピンピンしていた



「シルファー、ちょっと来い」

「あ、うん…何だ?」



オメガに呼ばれ、オメガの横たわっているベッド付近に行くと、



「ほら」

「これって…」

「お前との約束だ。ずっと渡しそびれてた…」



オメガが手渡したのはシルファーが持っていた物と酷似しているオルゴールだった



「前と同じ曲だけど、ちっとは改良したつもり」

「………」

「さて、シルファーもオメガもお互いに向き合ったわけだし、私も行って来る」

「うん。私も行くよ、カガリ」



そう言ってカガリとナジュリアは部屋を出て行った



「何をしに行くのか知ってる?シロンさん」

「さぁな。行くだけ辛いのにな」

「いいだろう?帰りを待っていれば」

「そうだな」





>>>





ピンポーン
突然、インターホンが鳴る
こちらが出ようとする前に扉が勝手に開いた



「失礼する」

「カガリ様……」

「クロウドはいるか?」

「なんだよ、今更」



そう言いながらクロウドは奥の部屋から出てきた



「お兄ちゃん!」



不満顔のクロウドをナジュリアが咎めた



「ナジュは私が責任を持って預かる。それじゃ、駄目か?」

「カガリ……」

「ナジュリア、"カガリ"ではなく、"カガリ様"だろう?相手は一国の代表だ」



ナジュリアの父である、ギンタはナジュリアを叱咤した



「ギンタさん、やめてください。私たちは身分を剥がせばただの親友です。今は身分がどうとかは言わないでほしい」

「…はぁ……」

「カガリ…俺は…その、悪かった」

「? いや、だから、悪いのはその、──」



クロウドはカガリの言葉を途中で遮るように体を折り曲げた



「俺が悪かった!幾年ぶりにナジュが帰ってきて、ナジュが見違えるほど強くなっていたのに嫉妬してた
 こいつをここまでにしたのは俺じゃなくてお前ってことを思ったら…」

「そっか…じゃぁな」



カガリは安堵したように頷いて部屋から出て行った



「お兄ちゃん、私…行くから」

「………」

「私は皆のことが大好きだよ。お父さんも、お母さんも、お兄ちゃんも」

「!!」

「だから、皆を守るために行く。レジェンズウォーを止める手伝いをするために、シルファーと一緒に戦うために
 そして、親友のカガリの荷物を少しでも軽くするために!」

「……行って来い」

「ナジュリア……頼んだぞ」

「わかってるよ、大丈夫。また帰ってくるから」



ナジュリアは両親と兄に別れを告げるとカガリの元へ行った





>>>





「あー…暇だ」

「我慢しろ」



風竜王の間にて、オメガとクラウディオンがいた



「ったく。あのオーガめ!今度、土の竜王に文句言ってやる」

「なんだその子供が親に言いつけるようなショボイし返し」

「良いんだよ!それより、シルは?」

「ここにいる」



声がした方を見ると、シルファーが部屋の隅に座り込んでいた



「どうしたんだ、そんなところで」

「誰のために私がここに残っていると思っているのだ」

「あぁ、悪かった悪かった」



そう言ってオメガはずるずるとベッドから這い降りて、シルファーの近くに寄って、優しく頭を撫で始めた
そして、「よく頑張ったな」と微笑んでいった
昔の、自慢の兄と同じ顔をして



「触るな撫でるな私はもう子供じゃない」



しかし、それに対し、シルファーはそう言いながらパシッとオメガの手を叩き落した



「お前なぁ!」

「私は…」

「あぁ?!」

「オメガ…兄さんに言わなくてはいけないことがある」



真剣に見上げてくるシルファー
オメガは心無しか心音が高鳴るような気がした



「ふん。俺に何が言いたい」

「……ありがとう」



予想に反したシルファーの言葉にオメガとクラウディオンは目を見開き、耳を疑った



「何だ、それは。新手の嫌がらせか?」

「先ほどくれたオルゴール。一生忘れない」



それと、とシルファーが付け足す



「ここに帰ってきた時、本当は何一つ変わらないこの城に安堵した
 『シルファーはわからないの?!貴方のお兄さんは…オメガはずっとこの国を守ってきたんだよ!?』
 …とナジュリアにそう言われた」

「そうか…良いパートナーを持ったな、お前は」



そういって笑うオメガの顔は、昔の優しかった自慢の兄と、何も変わっていなかった



「……そろそろ行く。外で皆を待たせているから」

「そうか。これから他の国も回るんだろ?各国の竜王によろしく伝えてくれ」

「あぁ、分かった」



シルファーは短く返すと、部屋を後にした
「行って来ます、また戻ってくる」と言い置いて



「行かせてよかったのか?」

「何がだ?」

「シルファー…次期竜王候補なんだろ?今でも…」

「いいんだよ。あいつはまだ縛られちゃいけない。仲間達と自由に世界を回る権利、持ってんだから」

「…そうだな」

「さってと!俺達も外に出るかな」





>>>





「カガリ、ただいま」

「お帰り」

「待たせたな」

「あ、お帰りシルファー」



一同が風の城の門前に集い、出発の準備は整った



「竜王は?」

「あいつはもう大丈夫だ」

「そんならさっさと行こうぜ。随分と足止めくらったし……」

「…そうだな、行こ─」

「「「シールーファー!」」」

「?!」



ふと後ろを振り向けば、オメガ、クラウディオン、リューリアがいた
ついでに言うと、その側近や医療部隊も後ろに待機している



「どうしたの?!」

「見送りだ、見送り」



さらりと答えるオメガだった
「お前はまだ傷完治してないだろうが」そう突っ込みたいシルファーだったが、そこは敢えて兄の優しさだと思い込む



「カガリ…色々迷惑かけたな」

「いや、私は何も」

「ありがとな。色々、世話になった」

「いいよ、別に」



お互いがお互いに礼を言い合う



「そうそう!それより、クラウディオンは早く旦那さん見つけたほうが良いんじゃない?」



ナジュリアがからかうように言った



「なぁ、サーガ…今、なんて聞こえた?」

「旦那」

「なっ!余計なお世話だ!!」

「そうだぜ?クーにはこのオメガという立派な旦那が……」

「いや、そっちの方が迷惑なんだよ!」



ドゴッ ビュウ バサァッ



「ぐは………っ!!」



クラウディオンの正拳が見事、オメガの腹にヒットした
それと同時に風が吹き、クラウディオンの帽子が吹いた風に飛ばされた
そして見えたのは紫色の綺麗な長髪だった



「「えぇー──!!?」」



その衝撃の事実にカガリとシロンは驚愕



「クラウディオン…お前、女だったのか?!」

「気づくの遅い!!お姉ちゃんは、列記とした女です!!」



そう、クラウディオンは男口調で喋るが、実を言うと女だったのだ
まさにカガリのレジェンズ版!!と一同が思ったのはまた別の話



「クー、いい加減言葉遣い直せ。一生女に見られないぞ?」

「ほっとけ!そう言うシルファーこそ、その女っぽい容姿を何とかしないと、また男に言い寄られるぞ?!」

「なっっ?!悪かったな!!仕方ないだろう?!髪が長いのも、声変わりが遅くて今だ女みたいな高い声なのも、体型が女みたいなのも私のせいじゃないんだから!!」

「そのせいで今まで何人の男が愛の告白に来た事か…」

「それを言うな!!思い出しただけで虫酸が走る!!」

「シルファー…そういう気があったのか」

「シロンまで……って、そこで妙に引くな!!」



そこでリューリアが業を煮やし、言った



「んもう!!あたしのこと放ったらかし?!せっかくこれ持って来たのに!!」

「あーそうだった。シルファー、これ持ってけ」



オメガはリューリアから己の背丈の半分くらいの大きな扇を差し出した



「これ、何だ?」

「見た事無い……」

「これは"風の扇"だな?」

「風の扇?」

「何それ…」

「風の扇…六大神器の一つ…」

「さすがファンロック。正しくこれは風の扇…一振りですんごい強風が吹く……らしい」



ファンロックの説明をオメガがわざと遮った
それに対し、ファンロックは少し怪訝な顔をしたが、それも納得したようですぐに治まった



「らしいって……」

「俺も使った事無いからな。火の国に行く途中、炎の壁が邪魔して通れないところがあるから、それで炎を吹き飛ばすといい」

「わかった。ありがとう」



シルファーは自分より少し大きな扇を背中に背負った
そして、シルファーが背負うのを確認すると、オメガはクラウディオンに言った



「それと…クー、リュー…頼む」

「あぁ…」



クラウディオンとリューリアが持ってきたのは─布に包まれてまだ何かはわからないが─箱のようなものだった



「カガリ、お願いね」

「わかった」

「?」



ナジュリアに頼まれ、クラウディオンが運んできた箱のようなものへ向かって歩いていき、布を取り払った
シルファーはまだ訝しげな顔をしながらも皆の行動を凝視している



「あ…」

「俺達からのプレゼントだ」



カガリは用意されていた椅子に座り、箱のようなものに手をかけた
そう、箱のようなものとはピアノだったのだ
それも、白いグランドピアノ

カガリは曲を弾き始めた
それはシルファーにとって、とても大事な思い出の─オルゴールと同じ─曲だった
皆は数分間、そのピアノから奏でられる曲に耳を傾けた

演奏が終わり、最初にカガリが口にした言葉は



「あー、しんどい…久々に弾くと、辛いものが…」

「…その言葉がなければ完璧なのにな…」



クラウディオンがボソリと呟く



「うるさいぞ、クラウディオン!…あ!お前とオメガの結婚式にピアノ弾いてあげようか?」

「それはグッドアイディアだ!カガリ!!」

「ふざけるな!!!」



皆はカガリとクラウディオンのコントに爆笑した
そして、カガリが弾いた曲について補足説明をする



「この曲は、西暦1890年頃クロード=アシル=ドビュッシーによって作られたベルガマスク組曲の中の第3曲で月の光というものだ」

「?」



シルファーは首をかしげ、オメガの方を向く



「ナジュリアに「カガリはピアノが弾ける」と聞いてだな、オルゴールのチェックをしてもらった時に、その曲の詳細を教えてもらってだな…
 クーとリューに頼んで、ピアノを運んでもらったって訳だ
 ちなみに、そのピアノは高かった。でも、今日より前に誰かが弾いたことはない」



オメガは偉そうに言った
が、「そのおかげでピアノの本質が発揮されなかった。調律とかの手入れもされてないし…」とカガリとナジュリアとクラウディオンとリューリアの女四人組にブツブツと突っ込まれた



「月の光…というのか、私達が昔から知っているこの曲は。でも何故…」

「この風の城は、月明かりに照らされる景色が物凄く美しいのだ…」



シルファーの素朴な問いにファンロックが答えた



「じゃあ、元気でな!!」

「仕事、サボるなよ」

「わかってらぁ!!」



カガリ達は別れの挨拶をすまし、風の城もとい風の国を後にした





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