(2) |
彼と、私の元カレ「K君」と、私。 この奇妙な三角関係。 普通、男二人に女一人の三角関係だと、女の人を男二人で取り合う形を想像する。 だけど、私たちは違っていた。 彼は、自分がK君のことを好きなのだと認めてからかなりの間、とても戸惑っていた。 当然のことだ。 男としての自分のアイデンティティーが、傷ついたのだから。 だけど、彼は自分を投げ出さなかった。 自分の気持ちに誠実に、大切にした上で、K君を好きになったことも含めて、自分を認めていこうとしていた。 私は、彼のそういう姿勢を心から尊敬し、彼の話をできるだけありのまま聞くように、心掛けていた。 一方、彼がK君を好きだと自分で認めてからというもの、彼とK君の仲は一層すれ違うようになった。 彼は、自分がK君を好きなことは認めたが、K君が彼を恋愛の対象として見てくれるというわけではないことを、十分わきまえていた。 だから、K君を好きだと自覚してからは、逆にK君と距離を置くような付き合い方になった。 K君を好きだという気持ちを悟られないよう、そして、彼がK君を好きになったことで、K君に迷惑をかけないよう、彼なりの配慮だった。 しかしK君の方は、彼の微妙な距離の取り方に気づいていた。 そして、せっかく仲良くなれたのに、なぜ距離を置かれるのか、わからないでいるようで戸惑い、逆に彼に対して距離を縮めようと躍起になっているように見えた。 K君が夜中に彼の家をたずね、そのまま泊まることもあった。 夜早い時間だと、彼はなんとか理由をつけて、K君を追い返した。 だからK君はそのうち、終電で彼の家をたずねるようになり、そのまま泊まれるように準備までしてきていた。 もしかしたら、K君は彼の気持ちに気づいていたのかもしれない。 そして、彼の気持ちを受け入れる準備があることを、そういう形で表現していたのかもしれない。 でも、彼にとってK君のそういう行動は、返って気持ちを逆なでされる、傷つけられるものだった。 「うっどちゃん、オレ、どうにかなりそうや。Kが来ると、気持ちがすごくざわつくねん。だから、ほんまに来て欲しくないと思ってる。だけど、どこかでオレ、Kが来るのを待ってんねん。そういう自分が許されへん。Kが帰った後、心に穴があいたみたいで、じっとしてられへん。でも、ほっとしている自分もいる。オレ、どうしたいんか自分でもわからへん。」 彼は本当に純粋に、K君のことを好きなんだと感じた。 この気持ちは、成就することはないと、彼も私も知っていた。 この気持ちを、正直にK君にぶつけることすらかなわないと。 でも、何かよくわからない可能性を、捨てきれずにいた。どうなればハッピーエンドと呼べるのか、それすらもわからないけれど。 ある日、夜、彼から電話がかかってきた。 「うっどちゃん?今からうちに来れるかな?終電やけど○時の電車に乗れたら大丈夫やねんけど。」 「え?どしたん?」 「うん・・・とりあえず、来てくれへんかな」 それで、私は彼の家へと向かった。 声はそんなに暗くなかった。 何があったんだろう?そう思いながら、終電に間に合うように自転車を飛ばしながら、駅へと急いだ。 |
(3) へつづく |