worry×enjoy

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僕たちの明日。2話。



桜の木の周りを、たくさんの人が囲み、
立派に咲かせた花を目を輝かせてみている。
「キレイだねーおじいちゃん!」
幼稚園ぐらいの子だろうか。
木の幹に小さな手をおき、
やさしくさすっている。
「そうだね。桜の木はね、いっぱいの小さい花が集まって
 大きいキレイな花になるんだよ。」
隣にいた、老人も同じように手を幹においた。
「人もね。一緒なんだ。どんなに小さい力でも、
 いっぱい集まったら、大きい力になる。
 だからね、お前も幼稚園で力を合わせ・・・」

「っざけたこと言ってんじゃねぇよ!」

公園の入り口から桜を見ていた祐太は、
女の子と老人に向かって怒鳴った。

「おい。ジジイ。何が一緒に力を合わせてだ?桜のように?それじゃぁいつかは散るじゃねぇかよ!そんなキレイごとばっかり教えてねぇで、もっとそのガキに現実を教えろ。「力を合わせて」なんて所詮キレイごとなんだよ!」

祐太の大声に驚き、桜の木の周りの人はみんな祐太に視線を向けた。
祐太は、自分の考えてることがうまく整理できず、
よく分からない言葉を叫び、走った。

桜の木を過ぎ、噴水を過ぎ、売店を過ぎ・・・。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・」
遊具のある広場で祐太は倒れた。
「くそっ・・・こんな体じゃなかったら・・・この体がいけないんだ!」
自分の胸を何度も殴った。顔を地面にたたきつけた。


遊具があるので、小さい子ももちろんたくさんいる。
その光景を見ている子もいた。
口をあけて、珍しそうにその光景を見ていた子達の仲で、
一人、足を組んで雑誌を読んでいる女性の方へ向かって走っていった。
「ママー!お兄ちゃんがケガしてるよ?」
女性は、姿勢も視線もくずさない。
「汚いからほっときなさい。そのうち誰かが助けるわ。」
「でも。。痛そうだよ?かわいそうだよ?」
「・・・っっ私に何をして欲しいの?赤の他人を助けろって言うの?助けたいなら勝手に助けなさい。」
ようやく雑誌から視線をはずしたと思うと、
子供の顔をすごい目つきで睨み、また視線を戻した。
子供は、話を理解できていたのか、
女性に背を向けて走り出す。
祐太を通り過ぎ、顔を真っ赤にしながら走っている。


(痛ってぇ・・・こんなに弱いのか?俺・・・。やっぱりこの体がいけないんだ。この体が・・・)
今度は、自分の胸を、癒すかのようにやさしくさすった。
遊んでいた子供が、一人走り出した。
それに気づいたのか気づいていないのか、
祐太は体勢を変えた。
うつぶせだったのを、上向きにした。胸は赤くなっている。
ザザザ・・・っという砂の後と一緒に
風が吹く。空の雲が動く。木の葉が揺れる。
それを拒否するかのように
祐太は目をつぶり、胸に右手を置いた。
周りの人は誰一人動こうとしない。
走っていたため、どのくらいの人がいたのか分からない。
目をこすろうと左手を顔に持っていくと
ベトっとしたものが手についた。
おそるおそる目を開けてみた。赤い液体がついていた。
さっき、顔を殴った時に出血したのだろう。
傷は深くはないが、大きい。ちょうど目の上側を切っていた。


外から見ても絶対、出血しているのが分かるだろう。
しかし、誰も来ない。
(ほら・・・こんなもんじゃないか・・・これが人間だ・・・これが当たり前なんだ・・・・・・・助けなんていらねぇ。助けなんか求めてねぇ・・・。)
話を聞いていた祐太は頭の中で自分に言い聞かすかのように何度も唱えた。

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