書くことの意味

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2004年12月04日
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 須賀敦子さんが、「ユルスナールの靴」というエッセイを、次の文章から始めている。

 「きっちり足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ。そう心のどこかで思いつづけ、完璧な靴に出会わなかった不幸をかこちながら、私はこれまで生きてきたような気がする。」

 札幌に住んでいたころ、雪で凍りついた地面を歩くのが非常に難儀だった。つるつる滑って、油断した途端、すってん!と転んでしまう。いつだったか、交差点のど真ん中で脇腹を地面にたたきつけられて、息が出来ずに途方に暮れたことがあった。たまたま側を歩いていた中年の男性が手を差し伸べてくれて、漸く、起き上がった。根雪の上を歩くというのは、恐怖に他ならなかった。

 その頃買い求めた、くるぶしまでの丈のブーツが、とても頼りになった。革製で暖かく、底のゴム版の表面がぎざぎざしていて、雪の上で転ぶのを懸命に防いでくれていた。東京に引っ越すことになっても大事に持ってきたのだが、昨年の今頃、靴を履いたまま、階段につまづいて、かかとの底のところが取れてしまい、そのまま靴箱に1年間、眠っていたのだった。

 先程、思い立って、このブーツのかかとを直してもらった。インターネットで靴の修理をしてくれる場所を探し、地下鉄に乗って行ったのだ。10分もしない内に修理は終わって、ブーツに履き替えた。・・「馴染む」という言葉を久しぶりに、思い出した。外側は色がはげているし、あちらこちら痛んでいるけれど、ブーツ自体が、足を柔らかく包み込んでくれて、この履き心地の良さは、なかなか無い・・と思った。多分、新品のブーツと取り換えてあげるから、その靴をちょうだいと言われても、わたしは「どうぞ」と差し出せないだろう。

 ブーツの底が昨年、壊れていなかったら、昨冬で履きつぶしていたかもしれない。故障したお蔭で、今冬、このブーツで過ごせる。少なくとも今は、「きっちり足に合った靴」が自分の手許にある。心細い日々が続いている中で、その事実がとても心強い。





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最終更新日  2004年12月04日 11時06分09秒
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