1節 街角





「ずいぶん寒くなってきたな」



突然の横風を受けてそう思った。
いやそれだけじゃないか。

表参道の雰囲気が好きで暇な週末は散歩に来ている。
学校が早く終わって暇な時に来た事もある。
散歩しているだけでまるでTVドラマの1シーンなのだ。
晴れていても雨が降っていても。
そりゃあそうだここでは実際にドラマが何本か取られている。と思った瞬間、

トントン

「すいません、わたし、、、」
「あ、、」

振り返ると逆光でまぶしかったが、見間違えようがなかった。
今日はこのためにここに来たのだ。

実は昨日もここを散歩していた。
というよりも、昨日散歩していたから
今日も散歩しているという方が正しい。

そしてその理由がこの子。偶然にしてはできすぎである。
信じてもいない神様に感謝する瞬間。



「どんな話なのかな」



とても良い前評判に、期待に胸を膨らませ歩いていると
見慣れている風景の中に、ちょっと気になるお店があった。
いくつも続いている露天の一つ。絵を売っている。
その絵が気に入った。

それだけならまた来週来ればいいのだ。
機を逃すと映画なんて物は、いつのまにかビデオが発売されてしまっている。
もしそのビデオを見た時に感動してしまったら、
映画館で見なかった事を後悔する事になるだろう。

でも実際はそれだけではなくてね、、、

散歩の途中で、
ふっっときれいな彩色の絵が並んでいるのが目についた。
とても明るい絵。ぼーっと順に眺めていると
絵の売り手が目に入った。
高校生の女の子、、、いや中学生かもしれない。

どっちでもいい。当然絵も気に入ってるのだけれども、とにかく一目惚れしてしまったのだ。
一通り絵を眺めた後、意を決して彼女に声をかけた。
「あの、明日もお店やってますか。」
「うん、やってるよ。」
「じゃあ、この絵とっておいてくれないかな。あした必ず買いに来るから。」
「了解っ!」

素直に白状すると、物を買うにはいつも優柔不断な僕が
すぐに買う約束をするには、ある計算があった。
店は2時までやっているらしい。
なので2時に来た。
ダメモトで運が良ければデートに誘えるじゃないかなんて期待をして
いたから、この時間でいいのだ。玉砕してもキッカケがつかめるし。。

ところが大失敗!
昨日店があった場所にはあきらかに不自然な空間が残っていた。
もうちょっと早く来れば良かった!

そう思いながら、渋谷の方向に足を向けていた。

「まだ紅葉がまばらだね。」
「そうだね。また来週来ようか。」

隣を歩いているカップルの声が聞こえる。僕もまた来週来なきゃ。



ビュウ



少し冷たい横風が音を立てた。


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