2節 冬





きゃっ!



シーズン初めで空いているゲレンデに
小さな悲鳴とズザザという音が聞こえた。

友達と一緒に滑っていたし
普段なら大きく迂回してすり抜けていく所なんだけど、
あの時は違った。

なんでだろう。
ゲレンデのど真ん中でコケたので危なかったから。
そういうことにしといて。



「大丈夫かい?」



飛ばしてる奴が多くて危ないから
雪だるまの山側に止まって声を掛けた。

「痛ったーーーい!」

声を掛けられるのを待っていたかのように悲鳴があがった。
いや待っていたのかな?
なんて思いつつ、もう一度聞いてみた。

「大丈夫?」

「大丈夫じゃないっ!」

当たり前の答えが返ってきた。聞いた俺が馬鹿だった。

「大丈夫そうだね」

危ないから彼女が立ち上がるのを待って、滑り出した。



「すごーいおいしそー♪」



どこかで聞いた声だった。
声の主を確かめたけど見覚えのないかわいい子だった。
なんとしても思い出さねばならない。と思った直後

「あっ!ゲレンデで会いませんでしたか?」

ん?
あ、あの時の・・・コケた子だ。

「ああ、昼間あそこでコ・・・会いましたよね」

「ひどいんだよーこの人。痛いって言ってるのに先にすべっていっちゃうんだもん」

一緒にいた友達にいいつけられてしまった。
やさしく見守ってたつもりなんだけどなあ。

えーここで勇気を出して一言。

「せっかくだから一緒にご飯食べない?」

さりげなく言ってみた。他意はありません。ございません。

「うん。是非是非!」

彼女の友達の発言。
神様ありがとう。
・・・他意はあったらしい。

みんなで楽しくお食事をした。
我々と同じく東京から3連休を使って遊びに来てるらしい。
我々と「同じく」である。
神様ありがとう。

解散する時にこういう提案をして見た。

「明日一緒に滑ろうよ!」
「うん。じゃあ明日・・・10時に3番リフトの前ね!」

今度は彼女直々のお言葉。
神様ありがとう。



きゃあ!



ありがちだけど
強引に中級コースまで引っ張って来てしまった責任を
今取らされています。

というか取らせていただきましたといったほうが正しいのかな。
我らが友人達は、通り過ぎる事3回。
おなじリフトを繰り返し使ってくれているあたり心優しい仲間達です。
違うリフト使ってくれてもいいんだけどなんて、思ってませんよー。

ともかく二人っきりで楽しいスキー教室。
もとい彼女は必死なんですが・・・
こりゃあ初詣ぐらい行かないとばちがあたりそうだね。



「ね、下ばっかり見てないでさ」



ボーゲンのカッコで背中を丸めて固まっていた彼女が顔をあげた。

「え?」

「ちょっとだけ視線を上げてみなよ。スキー場って景色も奇麗なんだよ。知ってた?」

「うわー奇麗だねー」

その言葉を出す時のタイミングが、発音が、とても気に入った。
正確に言い変えると彼女の周りの空気が好きになった。

「ね、帰ってからまた会えないかな?」

自然と口から言葉が出てきた。



「携帯番号教えてよ。向こうでもまた会おうよ♪」



素晴らしき雪と木々の景色がもっと輝いて見えた。

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