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あくびとは、遠い昔にニアミスしていた。
地元はどこだという話になり、何市だよというと、あくびは、もしかして何町?とぴたり町名まであてた。
じゃあ何中学だよね?と続けられてオレは、まてよ何でそんなに詳しいの、といった。あくびはその
問いには答えず、オレを指さして、信じられない名前をいった。
「クミ、知ってるでしょ?」
クミは、オレが中学のときに少しだけ付き合っていた女だった。クミの母親の妹が実はあくびの母親
で、つまりクミとあくびはいとこ同士だということだった。あまりの偶然さ加減にオレは飛ぶように驚いた。
そしてなにか運命的なものを感じた。それは出会うべくして出会ったとか、そんな安っぽい言葉かも
しれないし、クミやその時代の仲間達や環境や思い出が、突如として頭の中を駆け巡ったショックに
よるものかもしれないが、なにかオレはとてつもなく嬉しくなってしまった。オレは酔っていたから
「運命的」などという陳腐な言葉しか浮かばなかったけれども、オレ自身がこの狂喜を納得するため
にはそんな言葉で十分だった。
minaは愛知だから、たとえ口説いたとしてもいずれ遠くなる。えへへは、練馬に住むじいちゃんちへ
しばらく滞在するとはいえ、やはり愛知だ。リピートするには遠すぎる。あくびは人妻だが、東京近郊
に住んでいる。アクセスがいい。しかも運命的ななにかを感じて、2人だけで盛り上がった。オレと遊ぶ
時間をあくびは作ってくれるだろうか。そういえばオレとあくびとの盛り上がりを、minaはどう感じただろう。
ふと気付いた。例えばオレがminaを口説かないとして、他の誰かに彼女を持っていかれるのは、たま
らなく嫌だ。軽々しく男についていくようなminaではないと、オレは勝手に確信しているが果たしてそうか。
彼女は不安定な恋愛環境にいる。違う出会いを求めてここへ来たのかもしれない。酔っている。
彼女が誰かに頼りたがっているのかもしれない。minaが、オレ以外の男を寝るところを想像するのは、
たまらなく嫌だと思った。たまらなく嫌だ。
ケータイが鳴った。液晶パネル、fu-ko。
「今、(店の)下。席、ある?」
極めて簡潔にfu-koは状況を告げた。
「あるある。ってゆうか遅いよ。」
「なら行くわ、知り合い1人おるけど、ええやんな?」
いつもよりトーンが固い。電話を切った。
「誰かくるの?」 mina。
「fu-koとその友達だって。」
「ああ!fu-koくるの?会いたい。」
minaは、めずらしく大きな声を出して、目を覚ましたように深いところから起き上がった。
両手で持っていたグラスを離し、テーブルに置いた。
■32
個室の扉が開くと、店員に案内されてやってきた女が2人。「こちらでよろしいですか?」と問わ
れて中を覗き込んでも、ただ不思議そうな顔をして、中途半端にうなずいただけだった。初めて
見る顔ばかりなのだから当然だ。店員が下がり、女2人はおそるおそるパーティールームへ
入ってきて、壁づたいに歩きはじめた。部屋の中は酒気とタバコの煙と喧騒に包まれていて、
2人はあまり注目されなかった。もとよりこの参加者がメンバー全員の顔を把握しているかとい
うとあやしくて、酒も進んでいろんな所が麻痺していたし、全く知らない人間が1人や2人紛れ込
んでもわからないような状態だったのかもしれない。
電話を受けていたオレは入ってきたのがfu-koとその友達だと知っていたから、minaやあくびや
周囲には、2人が入ってくるなり指さして小さく「fu-ko来たよ。」と告げた。こころもち前を歩いて
いるのがおそらくfu-ko、連れられるようにしてやや後ろにいるのが確か「リンリン」。fu-koがさっき、
勢いで付けた名前だ。知らない連中ばかりの宴会に紛れ込んでしまった女2人をしばらく観察
してみようとも思ったが、不安そうにしている姿があまりに気の毒だったから「おい、おまえ誰だよ」
と声をかけた。
すると不信そうな顔つきになったfu-koは勢いをつけて、「おまえ誰て、おまえこそ誰やねん!」と
怒鳴り返してきた。怒った口調にはなっているが、顔が少しほころんでいる。
「うるさい。声でわかれよ。」
「9696か?もー早よ声かけっちゅうねん、部屋ぐるっと一周して帰るとこやったわほんま」
えへへとあははが席をひとつずつスライドしてminaの左の椅子を空けた。
「席ここ?ありがとう」とえへへとあははに礼をいってから振り向いて、「リンリンおまえはあっちや、
いい男めっちゃおるで?」といってStussyの方を指した。リンリンは一瞬間をおいてそれから満面
に笑みを浮かべてガッツポーズを作り、よっしゃ、といってからStussyやともやがいるテーブルへ
向かっていった。fu-koが遠ざかるリンリンの背中に向かって「今日はおまえリンリンやからな」と
いうと、リンリンは振り向きもせず左手を上げて「了解」の合図を作った。
リンリンのあの調子なら心配には及ばないだろうが、fu-koに「お友達、いいの?」と聞いてみた。
「知らん。めっちゃウザいねんてあいつ、今日も連れてけ連れてけうるさいから連れてきてみた
けど、めっちゃはりっきっとんねん、今日はマジでみんなに迷惑かけるかもしれへん」とfu-koは
いった。リンリンはテニスのビーナスウィリアムズのような速乾性新素材ワンピースを着ていて、
筋肉質な生足は光沢を帯びている。
「彼女、なんかスポーツしてるの?テニスとか。だいぶいいカラダしてんじゃん。」
「テニスと思うやろ、ちゃうねん、格闘技マニアやねん、エンセン井上の、めっちゃファンやねん」
fu-koは、椅子に座っていても腰のあたりが見えるほどの丈の短いシャツを着ていた。
「なに腹みせてんだよ。」
「腹ゆうな、ヘソゆえヘソ」
最初は金色に染めた髪と関西弁のムードに気をとられてしまい気付かなかったがfu-ko、よく
整った目鼻立ちをしている。ともすればこの中で、一番いい女かもしれない。
「おまえさ、誰かに似てるっていわれない?」
「えー?誰やろ?誰誰?ゆってみて?」 fu-koは引いたあごに手を添えてわざとらしく上目遣い
になり、目をパチパチさせた。そのしぐさに心当たりがあったオレは、
「野沢尚子とか。」といった。するとfu-koは嬉しそうに、
「ホンマ?めっちゃうれしいわ、尊敬してんねん」といった。
minaを紹介してやるとfu-koは、「めっちゃ会いたかってん」と叫びながら、minaに抱きついて
しばらく離れなかった。
■33
miffyが入ってきたときに、まずともやが立ち上がって彼女に椅子を勧め、Stussyは振り向いて
「おーmiffy!」と叫び、全員に紹介するように両手をかざし、歓迎の拍手を求めた。拍手が沸き
起こったときにfu-koはふてくされたような演技をしながら「なんや、うちらと全然扱いちゃうやん」
と拗ねた。「そりゃそうだろ、出来が違う。」 fu-koはかなりいい出来をしている。しかし蔑まれて、
「めちゃめちゃ感じ悪いわ」と悪態をつく一連のやりとりは、彼女の会話の定石で、本当にふてく
されているわけではないことは誰もが知っている。
miffyはあいかわらず女優のような顔をしていて、前に会った時には黒かった髪が少し茶色く染
まっていた。デニムスカートからまっすぐに伸びた白い生足は艶やかで眩しい。黒いチューブ
トップに綿の白いシャツを重ねているmiffyは、少し派手目な印象だったが、ごく自然なメイクと
上品な身のこなしのせいで、売春婦のようには全く見えない。
miffyはともやから勧められた椅子には座らず立ったままおそらく、みんなの顔を見るためにま
ずぐるっと回って座るのはその後、というようなやり取りをしたあとに、ともやがいるテーブルの
メンバーが紹介されつくしたタイミングで、オレが遠くから手をあげて彼女を呼んだ。
オレに気付いた彼女は小さく敬礼のポーズを作ってそれに応えた。キュートだった。
テーブルの間を縫ってオレの席に近づいてくるmiffyの顔や足に、多くの視線が向けられた。
ただ、どの視線も遠慮がちだったのは無遠慮な視線は相手に失礼だし、露骨な態度は自身の
人間性を問われるし、そしてそれをお互いに咎められる関係が出来上がっていたからだった。
オレの席のところに来たmiffyは「ひさしぶり、全然感じ変わるね、仕事の服じゃないと」といった。
前に会ったときは仕事帰りだったからオレはネクタイを吊るしていた。彼女は黒いスーツだった。
「そっちこそだいぶ派手になってんじゃん。」 miffyにはなぜか「おまえ」とは呼べない。
miffyは「えーそう?」といって下を向いて自分の服装を気にしだした。オレが「いやいや、だいぶ
似合ってるよ。」とあわてて繕うと、fu-koが少し離れたところから手を伸ばしてオレの後頭部を
はたいて「なに照れとんねん」といった。それで気をとりなおしたオレはまずminaからあくびや
fu-koやえへへやあははをmiffyに紹介してやって、手や首の上げ下げによる簡単な挨拶を
一通り交わし終えると彼女は次のテーブルへと移っていった。
miffyが去ると、minaは「キレイな人だね」といい、fu-koは「あの足、たまらん」といった。あくびは
「クロスケ、鼻の下鼻の下、」とオレをからかい、えへへとあはははため息をつきながら彼女の姿
に見入っていた。
miffyは遅れてきたことで結果的に、一番派手な登場の仕方を演出してもらい、多くの拍手や
注目を浴びた。そして各テーブルを回り一人ずつ紹介を受けるという特殊なイベントを行って、
強烈に存在感をアピールすることに成功している。
容姿もさることながら思いのほか彼女、割と計算高いのかもしれない。
■35
リンリンが壊れはじめた。fu-koが危惧していた通りの事態が起こった。
最初Stussyのテーブルに着いたリンリンは、遅れた酒をとりもどすために、ピッチャーであたりかまわず
ビールを注いでは一気を強要していた。相手がようやく1杯飲む間にリンリンは2杯飲み、驚異的なハイ
ペースで酔いの遅れを取り戻していった。飲み干したグラスをテーブルへ叩きつけるように置いて、強烈
なパンチをもらったレイセフォーのような微笑みを浮かべ強さをアピールし、次々と相手を粉砕した。
あまねく周囲の男に打ち勝つと、酒が強そうな顔の男を見つけては、ピッチャーを片手にテーブルを次々
と替え、飲み較べを挑んでいった。スピードにおいて彼女に勝る男は現れなかったが、さすがにかなり
ペースが落ちてきて、片手に持ったピッチャーの重量にやられ、足どりがおぼつかなくなってきた頃に、
Stussyへ勝負を挑むとあっけなく彼女は負けてしまった。それからしばらくリンリンはStussyのとなりの席
にいて酩酊しながら絡んでいたが、支離滅裂だった。おそらく、まとも会話ができないだろうとの判断を
下したStussyは、反対側のmiffyやその隣のともやに向き直り話し始めた。
するとリンリンはStussyの左手をとり人差し指を選び、そして口元へ運びそのまま咥えてしまった。
Stussyは気付かずに反対を見たまま話していたが、miffyが、笑顔になって彼の腕をポンポンと叩き、
目とあごの動きで合図を送ると、Stussyは振り向いて驚き声をあげた。
Stussyが気付いてもリンリンは咥えた彼の指を離さなかった。挑発的な視線を送りながらエロティックな
舌の動作を織り交ぜて舐め続けた。
fu-koはそれに気付くと「あかん、最悪のパターンやわ」といって頭をかかえた。ともやは苦笑いを浮かべ
ている。miffyは興味深そうにリンリンの舌の動きを見つめている。Stussyは困ったような顔になっているが、
Stussyの左手はリンリンの両手によりしっかりとホールドされていて、少しのチカラではなかなか振りほど
けそうにもなかった。
ようやく左手が解放されると、Stussyは立ち上がり、さりげなく濡れた指をGパンで拭った。そしてトイレへ
行き帰ってくると、オレやminaのいるテーブルに来て照れくさそうに座った。
その間リンリンは、弱そうな男つまりダミーを標的にして腕相撲を挑んでいた。「悪いけどそこいらの男に
は負けないよ?」というセリフを何度も繰り返しながらリンリン対ダミーの対戦が始まった。ダミーは顔を
真っ赤にしていつもより血管を太く浮き上がらせ女相手に全力で挑んだが、3秒だけ拮抗した後にすぐ
ダミー劣勢に傾くと、そのまますぐに負けた。ダミーはブーイングを浴びた。リンリンは喝采を浴びた。
さらに目つきを妖しくさせたダミーは「もういっぺんだけ、左のほうが強いねん」といって左にはめていた
シチズンのクオーツ時計と銀淵のメガネを外して几帳面に折り畳みテーブルに置いてから指を鳴らし
リンリンとのリターンマッチを望んだが、彼女は二度とダミーを見なかった。
暴走リンリンが招いた嵐は、Stussyが元いたテーブルの調和を壊滅せしめた。残っているのはmiffyと
ともや、それともう一組の男女だった。当初から中の良かったもう一組の方はすでにカップルとしての
合意が暗黙裡に交わされているらしく、顔を近づけて話し込んでいる二人を結界が覆っている。
一方ともやは、miffyの気を惹こうと夢中になって話し掛けていて、miffyもまんざらでもなさそうに丁寧な
相槌を打ちながら会話していたが、こちら側の賑わいを気にした彼女が向けた視線をとらえたオレと何度
か目があった。
■36
リンリンが今度は誰か相撲をやろうといいだしたときに、fu-koはみかねて立ち上がり「それはあかんやろ、
こんな狭いところで相撲とったらめちゃめちゃやで?」といってたしなめた。するとリンリンは少し大人しく
なって席についた。fu-koには従順だった。
混乱が収まると、各地では男が女を口説く姿が多く見受けられるようになった。リンリンが起爆剤になった
のかどうかはわからないが、闘争本能は性的欲求を呼び起こすという。死ぬかも知れない戦地へ赴く男
は、遺伝子を残すという本能が働く。たとえば疲労が極限状態に達した場合に性欲が活発になるのは、
極度の疲労が死を警告しているからだ。死の恐怖と性の快楽は、案外近いところにいる。
ロサンゼルスに暮らすStussyにfu-koが、向こうでたくさんライブを観てみたい、と話し始めた。関西弁
ではなく標準語だった。少し高いトーンで上品そうに話した。オレとはだいぶ扱いが違う。オレが、
「無理してカタコトの日本語使うなよ。」というとfu-koは、「よかった~、ツッコミはいらへんかったらずっと
とこのままやったで、あかんねん、人見知りすんねん」といって関西弁に戻った。
Stussyが暮らすロスの自宅マンションにはトレーニングジムがあり、日々ワークアウトをこなしているという。
彼は大胸筋を誇示するポーズを作り、fu-koやえへへに触らせた。fu-koはStussyの胸を触るや否や、
「なんやこれ、キモッ」といい何度も触り、挙句には握りこぶしで強く叩いたりしていた。えへへは、
「うぉっ、うぉっ、」と声にならない驚きの声を発し同じように何度も触っていた。
興味が湧き「オレにもちょっと触らせてくれよ。」といって触ったStussyの胸板は鉄のように硬く、間の溝
は異常なほど深かった。fu-koが「絶対なんかはいっとんねん」というと、Stussyは真にうけてTシャツを
めくって地肌を見せた。彫刻のような筋肉が現れた。女は唸るような低い感嘆の声をあげてその身体に
見入った。照れたStussyはTシャツを下ろして頭を掻いた。
あくびがふいにオレの胸を触り「うわ、やわらか!」といってからかった。「ちょっとまてよ、今硬くするから」
といって大胸筋にチカラをこめて再度触らせたが、Stussyほど硬くならなかった。オレの胸に触れながら、
あくびは嘲笑を浮かべ首を横に振った。
「あくびのよりは硬いと思うぜ?」といったその勢いでオレは右手であくびの胸を掴んでしまった。掴んだ
といっても優しくだ。しかしあくびは拒みもせず動じることなく「硬かったらどうする?」といって笑顔を作り、
オレの手に触られるままになっていた。その先をどうしていいかわからず、整った形をしたあくびの胸を、
優しく包み込むような手つきで触れてるままオレは、しばらく固まってしまった。すると後ろから、3人に
連続で頭を平手打ちされた。minaとfu-koとStussyだった。それでようやくあくびの胸から手を外したが、
胸のやわらかい感触と、ブラのワイヤー部分の固い感触のコントラストが、手の中にいつまでも残った。
■37
伝票を携えた店員が近付いてきた。「申し訳ございませんそろそろお時間ですので」
17時の開店と同時にスタートした宴会は、19時で終了するという約束だった。週末の新宿は大抵の店が
2時間制を採用しており、時間きっかりに店員が現れて手際よく追い出されることになっている。
そのほとんどが初対面同士であるにもかかわらずこのオフ会グループは、2時間という短い時間で想像以上
にうちとけそして盛り上がった。混乱に乗じて成立した何組かのカップルもいる。リンリンは誰か男の膝の上に
のって相手の首に手を回しながらカクテルを飲んでいる。短い丈の新素材ワンピースは、広げた足によって
大胆にめくれ上がり、中のパンツが見えそうというより何度か見えていたが、誰も気にしなかった。
miffyはともやから離れてStussyの輪の中にいて、Stussyが受取った伝票を引き継いで会計を請け負った。
minaは酔ってしまっていることを気にしていたが、少し落ち着いてきたのか頬の赤みはだいぶ退いていた。
会計を済ませて席を立つと個室の外の一般席はほぼ満員だった。店の外へでると、エレベーターホールでは
次の席が空くのを待つ列は10人以上にも及んでいた。おそらく我々がいたパーティールームが片付けられた
あと、いくつかに区切ってこの客たちを詰め込むのだろう。2機のエレベータでは30人からなる大集団の輸送
をまかなえず、階段もつかわせながらビルの下へ全員を運ぶのに15分から20分もの時間がかかった。
オレが次を想定して仮押さえしていた店はいわゆる小洒落たバーだったが、30もの人数が入れるはずもなく、
もとより30名まるごと引き連れて行くつもりもなかったし、大勢の流れによってはいつでもキャンセルが可能
だった。時間は既に19時半になろうとしていて、日が沈みかけているとはいえ外はまだ明るかった。17時から
飲み始めた集団は2時間という短い時間の中で驚くほど深く酔っていて、それはリンリンの爆発的なパワーが
作用したことが大きな原因だったが、集団は、夜が長いような気がしていて嬉しそうに、「まだ明るいよ、
信じられる?」を連発した。
■38
何組かの男女が「じゃ、俺らはここで」といって、ひとしきり冷やかされると、新宿駅とは反対方向へ向かって
いった。5,6人の若い学生は、カラオケに行きたがっていて、Stussyやmiffyやともや辺りの動向を窺っていた。
Stussyとmiffyがオレのところへやってきて、「クラブ行かない?」と言い出した。
オレは19やハタチではなかったから、「クラブはいいよ」と断った。minaは「わたしクラブなんて行ったことない、
それに踊れないし」といって牽制したが、Stussyは「平気だよ!みんな適当に騒いでるだけだよ」と食下がった。
しかしminaは「やっぱりやめとく、行ってきなよ」といって断った。miffyがfu-koに「今日一日、リンリン借りても
いい?」といった。fu-koは不思議そうな顔になって「はぁ?あいつの面倒、みてくれはるの?」といった。
リンリンは路上で男と相撲をとっている。男の方はリンリンの身体のどの部分を触って体を組めばいいのか決
めあぐねて棒のように立ち尽くしているが、リンリンはしっかりと腰を落としがっぷりよつの体勢で万全の構えだ。
miffyは「もちろん、リンリンちゃん気に入っちゃった、fu-koもクラブ行こうよ」といい、リンリンの相撲を応援し始
めた。fu-koは「微妙やなー、minaたちともも少し話ししたいし、miffyやStussyともあまり話ししてへんし、」と悩
んだ。miffyは「じゃあ後でみんなと合流しようよ」といって説得を始め、やがてfu-koは承諾した。
学生の男女で構成された5,6人の男女は、代表がStussyに断りを入れてから、カラオケ屋へ向かい始めた。
「小洒落たバーがあるんだけどさ、もう少し飲もうよ。」といってオレはminaを誘い、minaが「「小」洒落た、ね、
いいよ、行ってみたい」といって誘いにのった。酒が飲めないあくびにバーは少し辛い選択肢かもしれないとも
思ったが「あくびも行こうよ。」と誘った。酒場の雰囲気は嫌いではないというあくびは、「もしかして誘ってる?
行ってもいいけど、口説くなよ?」といった。
えへへとあはははカラオケ組にも乗り遅れたし、Stussyやmiffyと一緒にクラブへ行くようにも見えなかったから
小洒落たバーへ行くことになる。この幼そうな二人にバーの雰囲気を味わわせてやることの優越感を想像しな
がら、クラブへ行くことになったStussyとmiffyとfu-koとリンリンとともやに手を上げて軽く別れを告げた。ともや
はクラブへ行くことにあまり乗り気ではない顔をしていたが、Stussyやmiffyの勢いに押されたのと、他に身を
寄せるグループがいなかったことからやむなく従うことになってしまっていて、彼は複雑そうな顔のままオレらを
見送った。オレはminaとあくびとえへへとあははを従え小洒落たバーへ向かって歩き出した。
先頭を歩くオレに後ろからminaが駆け寄ってきて、並んで歩き話しはじめた。「リンリン、すごかったね」
minaの肩がオレの腕のあたりに触れている。「ああ、かなりパワフルだったよな。」
minaは野球帽のつばに隠れた小さな顔を上に向けて見せて「おもしろかった。でもStussy、襲われないか心配」
といって酔った顔をさらにほころばせた。
思わずキスしたくなってオレが顔を近づけるとminaは、「なにしてんだよ」といってすぐに下を向いてしまった。
「いや、なんかかわいかったから。」というと、「ばか、照れるよ」とminaはいった。
今度は彼女の小さい肩を抱くようにして歩き始めてみたが、minaは拒まなかった。新宿の雑踏の中をしばらく
minaの肩を抱いて歩いていると、「なんか、歩きづらいね」とminaはいった。そして、「ねえ、手、つなごうよ」と
いってminaはオレの手を取った。後ろを歩いてるはずのあくびやえへへやあははの視線はあまり気にならない。
すると、どこからかダミーが現れた。
恋人同士のように歩いているオレとminaの前にダミーは立ちはだかった。複雑そうな顔をして黙ったまま、
オレらの行く手を遮るように立っていた。
■39
ダミーのことは忘れていた。忘れていたというよりできればダミーとは行動を共にしたくなかったから
他のグループとどこかへ行ってくれることを願っていたし誘ってると勘違いされないように目を合わせ
ないように心がけていたからどちからといえば心に占めるダミーの割合は高くて実は忘れてようと努
力していただけだった。例えば恋愛において忘れたくても忘れられない人をふとしたきっかけや時間
の経過により忘れることに成功していつも通りの生活を送っていたときに突然目の前にその相手が
現われたら忘れたことの意味がなくなりまた思い出がよみがえる。良きにつけ悪しきにつけ最終的に
忘れたいと思うような恋愛は最低だ。この場合オレはダミーを連れずにバーへ向かうことでうまく忘れ
たような気になっていたのに突然現われられたからオレは一瞬固まってminaと手をつないで歩いて
いてほころんでいた顔は無表情になった。
ダミーは京都に住んでいて名古屋駅でminaとえへへとあははと合流し、東京のオフへやってきた。
どのグループにも属せず心細い彼が最終的に依存するのはminaだ。オレはminaを誘ったが、mina
も彼を誘わなかった。例えばオレが本心のままダミーを無視したとする。するとおそらくminaやあくび
が声をかけて、取り残された彼を救う。結局ダミーはバーへ行くことになるが、その場合オレは最後
まで、ダミーと険悪なまま過ごさなければならない。こんな奴のためにしこりが残るのはまっぴらだ
ったから、むしろ彼のためというより自分自身の保身のためにオレは驚いたように、「どうした?」
と声をかけた。
ダミーの視線は、minaと手をつないでるあたりやminaの胸元のあたりをいったりきたりしている。
後ろのえへへやあははのあたりをさまよっている。しかし誰とも目を合わせないようにしいている。
無差別に人を刺し殺していきそうな目つきだった。本能的に身の危険を感じ取った。あわてて薄ら
笑いを浮かべた。するとダミーも、にやり、という顔になった。しかし口元だけの笑顔はいびつだった。
「なんだよ、あ?」
この時点でオレに非はない。こんな不快な思いをする道理はない。あまねく嫌がられて、どこの
グループにも属せなかったのはダミーだ。オレが仕掛けたわけじゃない。オレが声を荒くして苛立ち
をあらわにしてもダミーは黙ったままだった。やっぱりこいつは虫だ。そのまま歩きだした。minaの手
を強く握ったままダミーのよこを通り過ぎるとき、オレの顔から10センチも離れていない距離でダミー
の鼻息が聞こえた。理不尽だ。なぜ恨む。こんな仕打ちには耐えられないと思った瞬間、目の前が
真っ白になった。ダミーの胸倉をつかんだ。叫びながら、叫んだ勢いにまかせて、チェックのシャツを
上から下へと引きちぎった。5つか6つボタンが弾け跳んだ。中にきていたTシャツをつかんで振りま
わしているときに、minaとあくびに押さえられてようやく我に返った。
■40
「なにしよん?暴力はあかんやろ」
埃をはらうようなしぐさをしながらダミーがいった。ボタンが跳んでなくなったシャツと、メガネのずれを
気にしていた。顔を真っ赤にしていたが、オレに向かってくることはなかった。minaとあくびがオレを
押さえ込んだことで、彼女らがダミーの味方についたと思ったらしかった。余裕を示す薄ら笑いさえ
浮かべていた。格闘技に精通している先輩の話を思い出した。ケンカの相手を戦意喪失させるには、
相手の膝を砕くのが一番迅速らしい。かかとの部分で前蹴りすると間違いなく逆方向に折れて、皿も
割れるという。こいつの膝こそ、砕くべきだ。夜の新宿や池袋では、血まみれで歩いていても誰も気に
しない。立ってさえいればファイティングポーズとみなされるからだ。荒くなった呼吸を整えた。
そのとき突然、minaが、悲鳴のような強烈に高いトーンの叫び声を上げた。
新宿通りを歩く人の群れは一瞬動きが止まった。
息が切れるとまた同じように繰り返して、小刻みに何度も何度もminaは叫び声をあげた。
人の群れも次第にその声を気にするようになって、minaとオレとダミーは注目を浴びた。
そしてminaはダミーに歩み寄り、ものすごい勢いでビンタを喰らわせた。
どよめきと歓声と、まばらなひやかしの拍手が起こった後にminaは、ダミーの耳元へ近寄って、
二言三言なにか囁いた。
ダミーは驚いたような顔になり、やがて宙へと視線を這わせて、いつもの覇気のない顔にもどった。
集まっていた人の群れもいつのまにかなくなった。
そしてminaはまたオレのところへ戻ってきて、手を取って歩き始めた。あっけにとられたあくびや
えへへやあははも後ろから歩いてくる。すこし経ってからダミーも、離れてついて来る。
「さっきさ、ダミーになんていったの?耳元でなんか言ってたじゃない?」
「あれはね、妹とヤっちゃってること、みんなにバラすよ?って。嫌ならおとなしくついてきな、って」
「なんでそんなこと知ってんの?」
「適当に言ったら当たった。母親とヤってるかどっちかだと思ったんだけど、両方だったりしてね」
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