All The Things You Are

July 31, 2005
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テーマ: Jazz(2003)
カテゴリ: カテゴリ未分類
『All The Things You Are』(オール・ザ・シングス・ユー・アー)
君は我がすべて

これは、私が最も好きなスタンダード・ナンバーです。
スタンダード・ナンバーで好きなものを一曲選ぶとしたら、この曲になります。
美しいメロディーと美しいコード進行と美しい歌詞、どれもが完璧な美しさです。

ジェローム・カーン作曲、オスカー・ハマースタイン二世の作詞で、1939年のミュージカル
「ヴェリー・ウォーム・フォー・メイ(五月にしては暑すぎる)」のために書いた曲です。

カーンとハマースタインのコンビは、
1927年のミュージカル「ショーボート」の大ヒットで確固たる名声を得ました。

ミュージカルの祖と称される大作曲家のジェローム・カーンは、
この失敗のためにブロードウェイを去ることとなりました。
オスカー・ハマースタインも同様に、これで彼の作詞家人生は終ったと評されました。

このミュージカルはあまりの失敗作ゆえに、記されているものはほとんどないようなので、
どんなものだったのか今となっては調べることは困難ですが、
当時のブロードウェイ・ミュージカルには受け入れられない難解さがあったのではないかと思います。
この曲を見ると、そのミュージカルの内容が伺われるかのように、何もかもが実に難解なものとなっています。

しかし、この曲はジャズの曲として知らない人がいないくらいの、
代表的な大スタンダード・ナンバーになりました。
ただ、インスト(演奏)のものがほとんどで、それもかなり速いテンポで演奏されますが、
歌としてはゆったりとしたバラードでしか歌いようのないものです。


ジェーロム・カーン54歳、オスカー・ハマースタイン二世44歳のとき、この最低の作品から生まれた曲が、
大スタンダード・ナンバーとして66年の歳月を経た今も輝き続けるということになりました。
大ヒットしたからといって必ずしもスタンダード・ナンバーとして残るとは限りません。
ところが、このように当時全く評価もされなかったものが大スタンダード・ナンバーとなることもあるという、
何とも不思議な話です。


直訳するとわけがわからないものになってしまい、解釈も多様なために、
どういう訳をするかは歌う人の解釈のしかたによって変わってきます。

実に難解と言える曲ですが、言い換えれば歌い手、あるいは聴き手ががそれぞれの感覚で、
自分に当てはめて解釈することができるという自由度があり、
人それぞれ、自分の思いを歌に重ね合わせて共感できるという魅力がある曲だと言えるでしょう。

「君は星を明るくする天使の輝きのようだ。君がいるということは僕にとって一番大切なことなんだ」
「いつの日か、君をこの腕に抱く日が来て、君のすべてが僕のものになったとき、
僕にとって、それは至福のときだと感じることだろう」

私はこの曲に、春の訪れとともにやってきた恋の始まりの予感に夢を描くという、
春と恋の訪れに胸をときめかせる、甘酸っぱいういういしさを感じます。

オスカー・ハマースタイン二世は、どういうつもりでこの詞を書いたかは本人にしかわかりませんが、
春を恋の始まりにたとえ、やがて春は終わり夏が来て、秋が来て冬が来るといった、
恋の始まりと季節の移り変わりを比喩しているようにも思えます。

*****

●オール・ザ・シングス・ユー・アー
All The Things You Are
邦題:君は我がすべて

作詞:オスカー・ハマースタイン二世
作曲:ジェローム・カーン
1939年


君は、希望に満ちた春の訪れを知らせるキスのようなもの
寂しい冬が、どんなに長く感じられたことか
君は、息を止まらせるほどの夕闇の静けさだ
恋の歌が始まろうとする予感の、かすかな振るえを感じる

君は、星を明るくする天使の輝きのようだ
君がいるということは、僕にとって一番大切なことなんだ

いつの日か、君をこの腕に抱く日が来るだろう
そして、君のすべてが僕のものになったとき、
僕にとって、それは至福のときだと感じることだろう





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Last updated  July 31, 2005 01:15:52 PM
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