こしゃくな読書

こしゃくな読書

泣いた赤鬼


浜田 廣介 (著), 長崎 尚志 (監修), 浦沢 直樹 (イラスト)
http://www.amazon.co.jp/dp/4103534281/ref=nosim/?tag=donzoko-22





 ファミレスで、お子様ランチのおもちゃの入ったかごから、

孫が選んだのは、指輪のセットだった。

パパは「え?!指輪?」と小さく驚いていたが、

叔母である三女は「きれいだもんねえ」と言い、

母親である長女は「そうなのよ、きれいなの好きなの、最近」

といい、婆バカは「美しいのがわかるのか〜」とご満悦。

優しいパパは、そういうものか、という顔をしてうなづいた。


 そう、我が家は先入観や思い込みと言うものと縁が薄い。

男の子であろうと、指輪が欲しいなら付けてみればいい。

孫はその場でパパに指輪を付けてもらうと、立ち上がって

いつものように、見えない敵と戦い始めた。

「新型ヒーローだね。」

「うん、クリエイティブじゃん」

「なおちゃん、かっこいい〜」

口々にほめそやしながら、ランチを食べる女たちなのである。

パパは少し、眉間にしわが寄って、左右の眉の位置が上下していた。




 そんな場面を思いだして、三女が笑いながら言う。

「お姉ちゃん、ほんといい人と結婚したよね。否定しないもん」

「そうだねえ、うるさい人だったら無理だね」

「そうそう、不思議そうでも、理解してくれようとするし」

「パパのおかげでのびのび子育てできるわね〜“チームなおき”は」


 そう、長女が保育士を続けていられるのも、

ばあばが仕事を辞めずに“お当番”のときだけ子守が出来るのも

学校の都合がつくときだけ三女が孫のお迎えに行けるのも、

毎朝保育園まで孫を送って行ってくれる優しいパパがいてこそ、

なのだ。


 パパは青鬼さんのようだと、ばあばは思う。

いつも優しい赤鬼さんである長女をそっと助けてくれる。

外国人やネグレストや知的障害など、

この市で一番問題の多い保育所で、

7年も勤めていられるのは、本人の努力もさることながら、

パパのおかげだ。


 だから孫が大好きなこの本を読んであげながら、ついつい

「いくら青鬼さんの考えでも、

大切な大切な青鬼さんを悪者にするなんて

絶対しない方がいいね〜」

って、そんな心配もないのに、わざとらしく言ってしまうのだ。

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