こしゃくな読書

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無為の力─マイナスがプラスに変わる考え方 河合 隼雄(著), 谷川 浩司(著)


河合 隼雄(著), 谷川 浩司(著)
http://www.amazon.co.jp/dp/4569639372/ref=nosim/?tag=donzoko-22





 思い出したのは三女の登校拒否の時代。

「中間テストだけは来てみないか、と言われたので行ってみる」

と言った彼女の言葉に飛び上がりたいほどうれしかったが、

なるべく平静を装った。

あまりに喜んでしまえば、プレッシャーになるような気がしたのだ。



 そのときは結局また行けなくなってしまった三女の姿に、

これで良かったのだろうか、と考えもした。

それが今回この本を読んで三年ぶりに、あれで良かったのだと思えた。



現状把握が出来てないで、物事の楽観的な面だけ見て喜ぶ危険性を、

分かりやすく説明してくれたのである。

何となく娘にしんどい思いはさせたくないと思っただけで、

こんな風に筋道立てて考えたわけではなかったが、

『無為の力』の有難味をかみしめた。




 「最近は食べるのに困らないから問題が深刻になる」

というのを読んで、無視やいじめの問題もそうなのだろうと、

何となく思った。


食べるのに困っているような状態の時は、

そんなこと気にもしていられない。

これは実感として覚えがある。

確かに貧しい国では、

日本のように中年の人が自殺したりはしないのだ。



 かばちゃんという山口にいる仲間が面白い実験をした。

ニンジンを三つに切って、朝晩

「ありがとう」、「ばかやろ」と声をかけたもの、無視したもの、

で、どういう変化があるか、という実験だ。


驚いたことに、「ばかやろ」と朝晩声をかけたものより

無視したものの方が早く腐ったことだ。



 ニンジンだって無視されれば腐るのである。

人間だもの、なにをかいわんや、である。



 河合さんはカウンセリングは待っているだけの商売だという。

大切なのは希望を失わないで待つことだという。

『ばかやろ』という言葉さえも無視よりは光があるということか。



 「何もしない」というのは本当に難しい。

河合さんのおっしゃるプエブロ族の人たちのように、

よい死を迎えるというのが人生の最終目標であったなら、

確かに物より心の豊かさの方が大切になる。




希望を捨てず、無視をせず、無為で待てるようになりたい。

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