こしゃくな読書

こしゃくな読書

科学の扉をノックする (集英社文庫) 小川 洋子(著)


小川 洋子(著)
http://www.amazon.co.jp/dp/4087466744/ref=nosim/?tag=donzoko-22





 「結局、一度誕生した物質は、無にはならないのです」

やっと、すっと流れるように文脈を追える本にたどり着いた。


混乱しながら読書していても、ちっとも頭に入ってこない。

初めは矢沢永吉氏や中村天風翁の

ざっくばらんな語り口の本を選んだのだが、

いつもはくみしやすい話し言葉が、

なおさら遠くに聞こえる号令のようだ。



無理だ。

私より若い空手の師範が亡くなったのである。



事実と同じくらい、本の内容を受け入れることはできなかった。



 まさかな、と手に取ったのは薄い文庫本。

買ったまま積んであった。

時々、こういう本が必要になるから、と、

導かれるように購入した本だ。


ああ、役に立っちゃったな、と少し悔しい。



 「一九七四年にプエルトリコから球状星団M13に向けて、

3分間のメッセージが電波で送信されました。

この電波がM13に届くのに2万3500年。

もし万が一相手の宇宙人が受信に成功して、

返事がもらえるとしても、4万7000年後となります。

いくら宇宙人がいると思っても、やっぱり遠いんですよ。」




いくらいると思っても、やっぱり遠いんですよ。か。

でも、いるといないのでは全然違う。

私だって生まれたときから、いないものだと思っていた父が、

生きていたと知った時は嬉しかった。

周囲の感情を考えれば、決して口にはできなかったけれど、

ああ、ちゃんといるんだな、ということだけで嬉しいものだ。



生涯、会うことは叶わないだろうが、

元から無いものは、失うこともない。


それに引き換え師範…

彼の笑顔、明るさ、優しさを失う人は山ほどいる。




 不思議と科学の話はこういうときでも理解できるようだ。

DNAの97%が、

まだどういう働きをするのかわかっていないという。

宇宙でも分かっているのは3%。

ミクロにも宇宙にもこの3%の壁が立ちはだかる。




「人間として生まれてきたということは38億年間、

一度も負けていないということなんです。

勝ちっぱなしということです。」



 やっぱりへこんでいるときは科学の話に限る。

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