秋の日の 傾く時に いざ行かな
車輪桃
の実の 赤く照る見む (銀輪家持)
(本歌)この雪の 消残
る時に いざ行かな 山
橘
の 実の照るも見む
(大伴家持 万葉集巻 19-4226
)
次も赤い実。
(カマツカ<鎌柄>の実)
この木も当初、名前不明であったが、ネット検索でカマツカの実であることが判明。
バラ科カマツカ属。
カマツカ
(鎌柄)
という名称は、その材を鎌の柄に用いたことによる。
別名、ウシゴロシ(牛殺し)などという穏やかならざる名前。
学名、Pourthiaea villosa
(同上)
われはもや 鎌柄見たり 皆人の 見過ぐし行ける 鎌柄見たり (藤原鎌柄)
(本歌)われはもや 安見児得たり 皆人の
得がてにすとふ 安見児得たり
(藤原鎌足 万葉集巻2-95)
カマツカ(鎌柄)とカマタリ(鎌足)とで遊んでみた戯れ歌です。
鎌足はカタマリとかカマボコとか遊びやすい名前である(笑)。
次も、赤い実でヒメリンゴ。
正式な和名はイヌリンゴと言うようだ。
(イヌリンゴ 別名ヒメリンゴ)<参考> イヌリンゴ
・Wikipedia
昨年の秋にもこの実を見ていて、ヒメリンゴのようだと思ったのだが、確信が持てず、不明としていたが、やはりヒメリンゴだろうというのが今回の結論。
サクランボくらいの小さな実。齧ってみたら、酸っぱいリンゴの味。
勿論、美味しくはない。しかし、ヒメリンゴと結論付けるには十分な味でありました。
バラ科リンゴ属のイヌリンゴ。別名、ヒメリンゴ。
学名:Malus prunifolia
犬とあらば かじらなくあり 姫林檎 姫とありこそ かじりもぞする (犬家持)
姫とありて 齧りみたるも 食へる実に あらずありけり 犬なる林檎 (猿家持)
イヌとかサルとかヘビとかが名に付されていると、齧るのもいささか躊躇されるが、ヒメと付いているとちょっと齧ってもみるかという気になるから、面白い。
名前による印象で、人の行動も左右されるようであります。
(同上)
さて、赤い実が続き、目が充血してしまったかもしれないお方の「箸休め」ならぬ「目休め」にこんな実のような花はどうでしょうか。
(ヒマラヤスギの雄花)<参考> ヒマラヤスギ
・Wikipedia
マツ科ヒマラヤスギ属の常緑針葉樹。
学名:Cedrus deodara
当初、実かと思ったが、そうではなく、これは雄花の蕾のようです。
ヒマラヤスギの花期は10月~11月だそうだから、季節的にも合致する。
花ではなく実であったとしても、さすがのヤカモチもこれを齧ってみようとは思わない。
ヒマラヤスギではなくヒメラヤスギという名であっても、同じである。
雄花は熟すと茶色になって開き、黄色の花粉を風に飛散させ、やがてポトリと落下する。
この木はヒンドゥー教では聖なる木とされているようだが、白っぽい薄緑色の雄花が幾つも並んでいる姿は、物静かで、何か爽やかな感じがする。
ヒマラヤの 杉の雄花の 涼しかり 音無く風に 少し揺れける (杉家持)
(同上)
再び、実の話に戻りましょう。
カリンの実です。
(カリン<花梨>の実)<参考> カリン
・Wikipedia
これはお馴染みのカリン。その名を調べるまでもない。
バラ科カリン属の落葉高木。
学名:Pseudocydonia sinensis
果実は何やら間の抜けた顔立ちであるが、花は可愛い顔をしている。
それ花は 可憐なれども 花梨の実 何処吹く風の 間抜け面して (実家持)
次は、クロガネモチの実。
(クロガネモチ)<参考> クロガネモチ
・Wikipedia
モチノキ科モチノキ属の常緑中高木、クロガネモチ。
黒金餅、黒鉄黐が漢字表記。
別名、フクラシバ、フクラモチ。
学名:Ilex rotunda
庭木としてもよく植えられているが、それはクロガネモチが金持ちに通じるからだそうな。しかし、クロガネモチであってオオガネモチではないのだから、大金持ちになれるという訳ではない。熟して赤くなった実を沢山つけている姿は美しいものがあるから、それが愛されて庭木としての人気があるのでしょう。
写真の実は10月15日撮影のもので、まだ赤く熟する前の実であるが、今は濃い赤色になっていることだろう。
先月の クロガネモチの 実のごとや まだ色浅き ヤカモチわれは (白金持)
(同上)
クロガネモチつながりで、次は黒い実。
同じ、モチノキの仲間では、ネズミモチは黒い実である。ネズミモチの写真は、過去記事の何処かに掲載されていると思うが、手許のブログ未掲載写真の中にそれはないので、クスノキの実の写真にします。
(クスノキの実)<参考> クスノキ
・Wikipedia
クスノキ科ニッケイ属の常緑高木、クスノキ。別名、クス。
漢字表記は、楠または樟。
尤も、中国では、クスノキは樟で、楠は、タブノキのことだという。
学名:cinnamomum camphora
アボカド、ニッケイ(シナモン)、タブノキなどはクスノキの近縁種。
近縁種のタブノキは、万葉では「つまま(都万麻)」と呼ばれて万葉植物の一角を張っているが、クスノキは登場しない。
クスノキの 実の黒づけば 吹く風も 秋深からし 葉陰 にそよぐ (偐樟持)
(本歌)磯の上の 都万麻
を見れば 根を 延
へて 年深からし 神
さびにけり
(大伴家持 万葉集巻 19-4159
)
(同上)
次はランタナの実。ランタナの実も黒い実である。
(ランタナの実)
黒い実というのは美味しそうに見えない。
黒い実の植物は、実を小鳥に食べてもらって、種子を遠くへ運んでもらうということを期待していないのではないかと思ったりもしたが、そうでもないようで、鳥はこのような黒い実も食べるようです。
ランタナの種子にはランタニンという有毒成分が含まれているらしい。
しかし、鳥は実を丸呑みするだけで噛むということをしないから、問題ないが、哺乳類などは嚙み砕くので、危険と説明しているものもあれば、種子だけでなく実にも有毒成分があると説明するものや、その毒性は大したものではなくこれを摂取した殆どの人は無症状であり、一部の人に嘔吐の症状が出ただけなどと説明しているものもあったりで、よくはわからない。
まあ、ヤカモチもランタナの実は齧らないようにしよう(笑)。
勿論、丸呑みするということもしませんが。
(ランタナの実)<参考> ランタナ
・Wikipedia
クマツヅラ科ランタナ属の常緑小低木。ランタナ。
和名は、シチヘンゲ(七変化)。
学名:Lantana camara
中南米原産。
(同上)
黒い実と言えば、黒い実であるが、クスノキの実の黒とは違って、ランタナの実は、暗紫色と言うか、やや青味がかっているようです。
ランタナの その実な食ひそ 毒ありと
言へる人あり 虚実知らねど (曲家持)
墓参・チョウセンアサガオなど 2024.09.07 コメント(6)
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