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ついに『キャシアン・アンドー』シーズン1(全12話)を観終えた。
正直な感想をひとことで言うなら、**「いままでのスター・ウォーズ(SW)の中で、最もジメジメしていて、最もリアルな大人のドラマ」**だった。
ルーク・スカイウォーカーのような「ライトサイドの光」や「きらびやかな大義名分」を期待して観ると、見事に裏切られる。なぜなら、ここには「綺麗な英雄」なんて一人も出てこないからだ。
1. 主人公キャシアンは、ただの「闇バイトの犯罪者」?
主人公のキャシアン・アンドーに対して、現時点で「感情移入できる!」という人は少ないのではないだろうか。かくいう私もその一人だ。
確かに彼には「故郷を消された」という重い過去がある。しかし、シーズン1における彼の行動原理には、銀河を救うといった「大義」がこれっぽっちも感じられない。やっていることは身分証の偽造、殺人、強盗、そして脱獄……。見方によっては、現代でいう**「闇バイトに手を染めた犯罪者」**にしか見えないのだ。
しかもタチが悪いことに、彼が生き延びるためにコソコソと立ち回るせいで、育ての母マーヴァは心労を抱え、元カノのビクスは帝国に捕まって凄惨な拷問を受けることになる。**「お前のせいで周囲の人間がどんどん不幸になっていくじゃないか」**というイライラ感が、このドラマのリアルな重苦しさを加速させている。
2. むしろ共感してしまう、帝国側「左遷高官」のサラリーマンの悲哀
そんな泥沼の人間関係の中で、皮肉にも一番シンパシーを覚えてしまったのが、帝国側の元高官であるシリル・カーンだ。
彼は彼なりに「社会の秩序を守りたい」「ルール通りに真面目に仕事を全うしたい」という強烈な正義感(悪く言えばマニュアル主義)を持って動いていた。それなのに、キャシアンという一人の犯罪者を捕まえ損ねたせいでキャリアを完全にはぎ取られ、実家に強制送還。母親にネチネチと説教されながら、冴えない事務職へ左遷される。
この**「組織の歯車としてすり潰されていくやるせなさ」**は、SWの世界でありながら、現代のサラリーマンの悲哀そのもので胸が締め付けられる。むしろ彼の方を応援したくなってしまうのは、このドラマの脚本がそれだけ人間の描き方に深みを持たせている証拠だろう。
3. 唯一のオアシス、老犬のようなドロイド「ビー」
裏切りと騙し合い、そして泥臭い政治劇が続く本作において、唯一の救いでありオアシスなのが、ドロイドの**B2EMO(ビー)**だ。
吃音(どもり)があり、バッテリーも古く、トコトコと歩く姿。そして何より、マーヴァが亡くなったあとに「お留守番はいやだ」「寂しい」と車体を震わせる姿は、無条件の忠誠心を持った「老犬」そのもの。みんなが自分の利益や思想のために動く中、ビーの純粋な愛だけが、この冷酷な銀河で唯一温かい。
総評:このジメジメの先に、あの『ローグ・ワン』がある
シーズン1のラスト、キャシアンはついに逃げるのをやめ、「俺を殺すか、仲間に引き入れるか選べ」と覚悟を決めた。
このシーズン1は、**「まったく大義なんて持っていなかった闇バイトの男が、あまりにも酷すぎる帝国の現実を突きつけられて、ようやく反乱軍のスタートラインに立つまで」**の物語だったのだ。ちなみに、刑務所で彼らが作らされていた謎のパーツが、のちに多くの命を奪う「デス・スター」の部品だったというラストの伏線回収には鳥肌が立った。
綺麗事だけでは銀河の歴史は変わらない。
この泥水をすすった男が、ここからどうやって映画『ローグ・ワン』のあの感動的なラストへと向かっていくのか。シーズン2でのキャシアンの覚悟と、そしてあのやるせないシリル・カーンがどう狂っていくのか(笑)、今から楽しみでならない。
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