HANNAのファンタジー気分

HANNAのファンタジー気分

August 11, 2026
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 子どもの頃から 「ぽっぺん先生」シリーズ や 『トンカチと花将軍』 が大好きだった私。 舟崎克彦 の大人向けファンタジーと聞くや、( 「科学朝日」 での)連載は知らなかったのに、即買いしたのでした。

 日常にひそむちょっと怖い話×日本各地の紹介×自然科学のウンチクや哲学。連作短編集で、主人公は科学ライター。児童書でも希有なほど練れた文体は今回、ぐっと大人の雰囲気をまとって…、
 たとえば、主人公は母の納骨のために岐阜県に行き、近くの お千代保稲荷神社 を訪ねる。境内の「足留めの木」の紹介;

  色とりどりのゴムゾウリやスニーカー…[中略]…故郷を捨てたのだろう人びとの形見を、彼らの行く末を案じる者たちが人知れず…[中略]…朽ち木のかすかな隙間を見つけては釘を打ち、ひたすら無事の帰郷を願っている
『黄昏クルーズ』

 その場所から主人公についてきた、見知らぬ老婆。あとから、母の祖母の日記に、孫娘が家出したので足留め願掛けをした、という記述を発見。母の遺骨はこの日、故郷に還ったので、

  たしかに老婆の願いは、今にいたって叶えられたのである。  ――同前書

 こうした死者との遭遇とか、殺人にまつわるエピソードとかが多く、「黄昏」というタイトルは、文字通り「誰そ彼」と不可思議に思うところからつけられたのでしょう(「クルーズ」の方はとってつけたようで何だかいただけませんが)。
 ホラーブームの最近、このような日常のちょっとゾクッとする小話も、流行しているように思えます。お千代保稲荷の足留めの木は、皆が願掛け(呪いとも)をしまくった挙げ句、木がだめになって現在は閉鎖?されているようですが。

 はたまた、「黄昏」は、本の帯にあるように、トワイライト・ゾーン。つまり科学(現実)と幻想の境界。それを体験する科学ライターは、不思議体験をする生物学助教授「ぽっぺん先生」の大人版なのでしょうか。
 …それにしては、私はあまりこの短編集を面白く思えませんでした。イヤミス的な読後感の悪い話もありますが、それだからではなく、昭和のかおりのする女性との艶事の暗示がちりばめられているから、でもなく、そう、主人公に魅力がない、いや、人間味とか個性すら感じられないからなのです。
 のっぺらぼうの匿名氏のように、どんな人なのか、まるでつかめない主人公。各話に出てくる各地の「誰そ彼」たちの方がよほど個性を感じます。
 そして、最終話、主人公は恋人に誤解から殺され、それを報じる新聞や、机に置かれた弔電や花を見ます。

  私の第二の人生は、こうして始まった。     ――同前書

 これで短編集は幕を閉じますが、すると、主人公=語り手はすでに死者なのでしょうか! だからあんなにも没個性で存在感がなかったのでしょうか。けむに巻かれたような、奇妙な読後感。
 同じ、日常にひそむファンタジー×自然科学のウンチクならば、やっぱり私はぽっぺん先生の方がだんぜん好きです。





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Last updated  August 12, 2026 05:33:37 PMコメント(0) | コメントを書く


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