You’s World

You’s World

オリジナル 5

ざわめきと共に

すさまじき妖気の中に 輝く一筋の光が見えた。
「神無。なにしてんだ?」
静かな洞窟に 冷たく凛とした声が木霊した。鏡を持った少女が声の元へ顔を向けた。
「神楽・・・」
神楽は神無に近づくと 神無の首にきらりと輝くものを見つけ指を指した。
「何だよそれは。昨日までつけてなかっただろう?」
「・・・これは私の・・・お守り・・・。否 見守ってくれるもの・・・。」
「へぇ お前もそんなものつけるんだな」
似合わねぇよ とでもいいたそうに笑いを含めた顔で神無を見下ろした。
「これは・・・魂が宿っているの」
神無が手で掴むとシャラッと音を立てる。
「魂?誰のだょ。・・・・お前 それ 骨なんじゃねぇのか?」
「そう 骨。大事な人の 骨・・・」
「へぇ そうかい。神無にも大事な人がいるんだなぁ。まぁ 私には関係ないけどさぁ。
 ・・・まぁいたんならいいゃ。最近姿が見えねぇからさ。たまには奈落の前にも姿 みせてやらねぇと」
そういうと神楽は羽に乗り その場を去った。
そこに残された神無はまだネックレスを見つめていた。感情も何も見えない瞳でじっと。
そして瞳のように感情は感じないけれど どこか温かいようなそんな声で言った。
「蛇骨・・・」
ネックレスはまた 神無の首に戻った。そしてシャラッとまた音を立てた。

およそ1ヶ月前 七人隊は絶滅した。否 再び土に戻った。
奈落によって甦らせられ 一人一人バラバラに土に戻った。
奈落の陰謀に巣くわれた といったところか。
その七人隊の世話をしたのが琥珀・神無・神楽だった。
「なぁ 神無ちゃぁん。犬夜叉はまだこねぇのかぁ?」
甦ったばっかりのころ 神無は蛇骨の世話係として一日中側にいた。
「犬夜叉は・・・まだ来ない。でもいずれ逢うことになる。そのときは・・・」
「わぁってるってv倒せばいいんだろう?でもなぁvやっぱ見てみたいじゃんかぁv
 あぁ 犬夜叉ぁv早く会いに来いよなぁv」
神無は鏡の中をじっと無表情で見つめ 蛇骨の顔を見上げた。
「・・・・ん?どうした?神無ちゃん」
神無の視線に気付き蛇骨が神無の顔を覗きこんで聞いた。
「ここの場所を変える・・・。霧骨が甦った。合流する」
鏡を持ったまま 音もなく立ち上がると洞窟を歩いてでた。
「ぇっ!マジで?!霧骨のやろぉvやっと甦ったかぁ・・・・ん?」
外の様子に不信感を抱いた蛇骨は神無をとめた。
「ぉぃっ!神無っ!待てょ。何かいるっ!!!」
神無が蛇骨の声に反応して蛇骨を振り返った次の瞬間・・・・
ゴォォッ!!!
すさまじき炎の音が神無を襲った。
「くっ!!!」
蛇骨が神無を抱きかかえた。そして 洞窟の奥の方へ逃げ延びた。
「っ痛・・・何だぁ?よりによって俺様を狙うなんざぁ。・・・ま 今のは神無を狙ったんだろうけどな;」
そういうと 神無を洞窟の奥の岩場に座らせ 蛇骨刀を構えもう一度外へでていった。
「蛇骨・・・」
「心配すんなってっ!ちゃぁんと倒してくっからょ。まぁ甦ってどのくらいの力かって試したいんだ。何だって長い間眠ってたからなぁ。んじゃ とりあえず行ってくるから」
とめようとする神無にひらひらと手を振る蛇骨の後ろ姿を神無はじっと見つめていた。
そして鏡をみつめた。
「蛇骨・・・の敵。蛇骨にとっては簡単なものね・・・」
鏡の中にはこれから蛇骨が戦う相手が映っていた。
「はぁぁ;あいつ あんまし手応えがなさ過ぎて自分にどのくらいの力があんのかわかりもしなかったぜ;」
「それにしては・・・着物 破けているけれど・・・」
神無がいつもの感情さえ見せない目をやるとそこからは血が流れていた。
「あ・・・ぁ。これはだなぁ・・・」
神無にはわかっていた。さっき 神無をかばって洞窟の奥に逃げ延びたとき。
そのとき 地面ですったのだ。
「・・・痛い?」
神無は視線を蛇骨の顔に向けた。蛇骨は笑顔で
「いや。痛くはないけど。お前こそ大丈夫だったのかょ」
と そう言った。神無はそっと蛇骨に近づくと 傷口に手を当てた。
「な・・・?」
驚く蛇骨をよそに 神無は手をはずした。
さっきまであった傷が跡形もなく消えていたのだ。
「お前 すごいのなっv」
蛇骨は「ありがとう」とニカッと笑った。しかし神無はすごく疲れた様子だった。
表情を滅多に顔に出さない神無だから少し蛇骨は不安になり
「な。どうしたんだ?」
と聞いた。神無は黙ったまま下を向いていた。
蛇骨は「やれやれ」と腰をおろすと 神無の前にしゃがみ込んだ。
「・・・ぇ?」
顔を上げた神無の前に 蛇骨の大きな背中があった。
「とりあえずこの洞窟からでるんだろ?霧骨にも会いに行かなきゃいけねぇしよ。お前 なんか疲れてるみたいだから。早く乗れよ」
神無は黙って蛇骨の背中に身をゆだねた。「よっと」と立ち上がった蛇骨はそのまま洞窟をくぐりぬけ 夕日の沈む山を目指した。洞窟をでたところに妖怪が蛇骨刀によって切り裂かれているのを 神無は蛇骨の背中でしっかりと見た。

「蛇骨・・・霧骨がいる山は こっちじゃ・・・ない」
「ぁ?神無 お前 寝てたんじゃ・・・」
「とりあえず こっちじゃないから・・・正反対のあっちの山」
そういって蛇骨の背中から反対側の山を指さした。
「何で早く言わねぇのかなぁ;」
蛇骨はそういって反対を向いた。
「でも・・・」
「何だ?まだ何かあんのかょっ」
少々いらついた様子で蛇骨が背中の神無にいった。
「この山には・・・睡骨と銀骨がいる・・・」
「おっ。んじゃ・・・寄っていくか?」
嬉しそうに顔をほころばせている蛇骨に神無は背中で
「否 先に霧骨に逢った方がいいと思う」
と鏡を見ながら 静かに答えた。蛇骨はその言葉を聞くと はぁっとため息をつき
神無を背中からおろし
「何でなんだ?」
と首を斜めに傾けた。神無は鏡を見つめて蛇骨に視線をむけた。
「銀骨の古い部品をかえなくてはいけないから。睡骨は。だからまだ逢っても何もできない」
「なぁんだ。そぉなら霧骨の方に行くかなぁ」
蛇骨はそう言うと頭に手をやり ぽりぽりとかいた。
神無は鏡に視線を落としたまま「そう」と静かに言った。
蛇骨は神無と視線が合うように座り込んで聞いた。
「もう 歩けるか?」
神無は 顔を上げいつもの何も感じさせない表情で
「歩ける」
とだけ言った。蛇骨は「そぉか」とニッコリ 微笑んだ。
「んじゃ 行くか」
静かに立ち上がった神無より少し先に 何かから守るように歩き出した。
神無はそれに気付いたかどうかわからない。何せ 表情にはでないのだから。

「あぁ 霧骨も無事だったなぁ」
懐かしそうに目を細める蛇骨の隣には当たり前のように神無がいた。何か熱心に鏡を見つめているようにも見えるが表情からは何も読みとることは出来ない。
蛇骨はそんな神無を見て はぁっとため息をついた。
それに反応してか 神無が顔を上げた。
「・・・・」
蛇骨は 黙って蛇骨を見ている神無に吹き出して 笑い出した。
「何にも言わないのなぁ。神無ちゃんは」
「何か・・・言ってほしかったの?」
か細い声からも何も感じられない。蛇骨はなぜかその声に安堵感を抱くようになっていた。
「まぁ 何か言ってほしかったわけでもねぇんだけどさ。っつうか こっちが聞きてぇことがあるっつうか」
何か歯切れの悪さを感じるその言葉に神無は多少なり気になった。
「答えられるなら答えるけれど」
神無のその言葉を聞いた瞬間 蛇骨は「あぁ」とまた歯切れの悪い返事を返してきた。
「言いたくないのなら 聞かない・・・」
神無は再び 視線を鏡に戻した。蛇骨は
「はいはい。言うから聞いてよ」
と 苦笑して言った。蛇骨はそれでもどこかまだためらっているようだったが話し始めた。
「あのさ。神無って奈落から“無”だって聞いたんだけどさ・・・。そこまでは間違いない?」
確かめるように聞く蛇骨。神無は鏡に視線を落としたまま無言でうなずいた。
「んじゃさ。何ていうかさ。気持ちとかって無いわけ?」
こんなこと初めて言われた神無は鏡から視線をはなし蛇骨を見つめた。
「気持ち・・・。あるかも知れないけれど。今はそれに気付かない」
神無はしばらく考えた後 蛇骨にそう言った。蛇骨は「そっか」とまたため息を1つ ついた。
「何か 関係があったの・・・?」
神無は再び鏡に視線を落としていたが 蛇骨に聞いた。蛇骨は「否。何でも」とそっけなくそう答えたのだ。
神無は蛇骨のそっけなさに少し疑問を抱いたが何も聞かず鏡を見つめていた。
「犬夜叉とは逢えたんでしょう・・・?」
神無は鏡を見つめたまま蛇骨に言った。蛇骨は「あぁ」と嬉しそうに顔をゆがめた。
「犬夜叉ってのはホント可愛かったぜ。あぁ あの耳ほしいなぁ。なぁ 神無。次に犬夜叉に逢えるのはいつか分かるか?」
「・・・分からない。未来のことはまだ。それに変わる確率もあるから・・・」
「そぉかぁ。でも逢えるよなぁvきっと。あいつは俺を捜すだろうし俺もあいつを捜す。何たって俺は七人隊 切り込み隊長の蛇骨様なんだからなぁv」
神無はそれを聞いて黙って立ち上がった。蛇骨は「何だ?」と聞いたが神無は答えず 今まで蛇骨と2人でいた洞窟に背を向けた。
「神無・・・?戻って来るんだろ?」
蛇骨の呼びかけが神無の耳にも入ったが・・・神無は無反応で洞窟をあとにした。
「神無・・・?」
蛇骨は不思議げに首をかしげ 「まぁいいか」と洞窟の奥の方へ進んでいった。

朝 蛇骨は誰かに呼ばれたような気がして目が覚めた。
「ん・・・?ぁれ?神無・・・?」
まだ寝ぼけている蛇骨の耳に
「起きましたか。蛇骨様」
と 少し若すぎる男の声が入った。蛇骨は重たげに頭を上げた。目の前には 妖怪退治屋だと思われる黒い服を身にまとった少年が立っていた。
「ぁれ?琥珀ちゃん?」
「今日 蛮骨様が作戦を開始なさるとの連絡が入りました。合流いたします。ご準備を」
琥珀と呼ばれた少年は蛇骨の前にひざをついた。
「あぁ そうか」と蛇骨は頷いた。
「昨日は 俺ら別行動をとったんだなぁ」
と蛇骨は頭の中を整理しながらさっき琥珀が言った言葉を思い出した。
「ぁ?蛮骨の兄貴がぁ?!んな唐突な。まぁ大兄貴らしいがなぁ。んで?今日は煉骨の兄貴と銀骨 睡骨のやろぉは何処にいんだ?」
蛇骨は「やれやれ」と頭をかいた。
「煉骨様 銀骨様は向かい側の山の洞窟に。睡骨様は白霊山よりかなり離れたところの村にいらっしゃいます。収集を神楽と神無が呼びかけております。蛮骨様はあちらの山にいらっしゃいますので その少し前の谷で 煉骨様 銀骨様 睡骨様 蛇骨様は合流することになっています」
琥珀はこれからの事を蛇骨にさらっと教えた。蛇骨は「あぁ」と首を縦に振った。
たが立ち上がる気配はない。
『俺 神無になんか悪ぃこと言ったのかなぁ。ってかあいつに逢わなくなって何日になんだろぉな。あいつがいねぇと何か・・・調子狂うなぁ』
考え込んでいる蛇骨を目の前に琥珀は
「蛇骨様でも考え込むことがあるのですね」
と聞こえよがしに呟いた。蛇骨は はっとして立ち上がった。
「琥珀ちゃんもきついなぁ;俺だって考えることぐらいあんだょ」
苦笑しながら蛇骨は 何日も前 神無がここの洞窟をあとにしたように同じ道をたどり 洞窟の外へでた。

「おぉい。蛮骨の大兄貴ぃ」
蛇骨は銀骨の体の上で手を大きく振った。
「おぉ!」
蛮骨は嬉しそうにそれに答えて手を振る。
「大兄貴。凶骨と霧骨は・・・」
「あぁ 死んだんだろ?わぁってる。聞いたから」
睡骨の言葉を蛮骨は遮った。蛇骨らは蛮骨と会話を楽しんだが 蛇骨自身 何を話しているのか分からなかった。蛇骨の頭の中は今 神無の事でいっぱいだった。
「・・・・骨 蛇骨。聞いてたか?」
と 突然 自分を呼ぶ声に気がついた。
「ぇ?あぁ 1時間後にここで落ち合うんだろぉ?蛮骨の大兄貴」
蛇骨は 立つとぱんぱんと着物に付いた砂を払い落とした。蛮骨は「あぁ」と短く答えると視線を蛇骨に向けた。
「蛇骨 お前 着物変えたのか?似合ってるじゃねぇか」
「大兄貴はめざといねぇ。前のやつ 破れちゃってさぁ;」
蛇骨は苦笑しながら蛮骨にそう答えた。
「んじゃ 俺は用事あっから。1時間後な」
蛮骨は1人 先に山を下りた。残された4人は思い思いに手を伸ばして寝転がったり
武器の手入れをしたりし始めた。
蛇骨は立ち上がり 山を下り始めた。
「蛇骨。何処に行く?」
煉骨が蛇骨の背中に問う。蛇骨は振り向いて
「あぁ 神無に預けたいものがあっから会いに行ってくる。1時間で帰ってくるから」
と煉骨に答えた。煉骨は
「何処にいるのか分かっているのか?」
と蛇骨に再び聞いた。蛇骨はぽりぽりと頬をかいて「それが・・・」とばつの悪そうな表情を浮かべた。
「まぁ あいつは“無”だかんなぁ;気配はねぇし。まぁとりあえずは歩いてみっけど」
煉骨はそれでも何かを聞こうとする様子なので それを察し蛇骨は
「わかっただろ?煉骨の兄貴。時間がねぇんだ。行ってもいいか?」
そういって煉骨の言葉も聞かず山を下り始めた。ひらひらと手を後ろに振って。
「ったく。何を渡しに行くんだ?一体。せめて頭を使い 琥珀を連れていけば良かったものを」
と ぼやく煉骨の後ろから睡骨が寝ころんで青空を仰ぎながら言った。
「琥珀はさっき煉骨が書いた手紙もって城に行っただろう。今 いねぇよ」
「そぉか」と煉骨は短く答えて銀骨の隣に腰を下ろした。
そして煉骨と睡骨は顔を見合わせて同時に言った。
「「あいつ このごろおかしくねぇか?」」

蛇骨はとぼとぼと山を下りながら大きなため息をついていた。
『はぁ;ホントに神無に1時間以内に逢えるって確率は低いわけで;あいつは何たって“無”なんだからなぁ;』
そんなことが蛇骨の頭の中でぐるぐると駆けめぐっていた。
蛇骨自身 気付いていた。最近 自分がおかしいということに。気がつくと神無を 神無の姿を目で捜している。
神無の姿が目にはいるとほっとする自分がいる。神無の表情からは何も読みとることは出来ないけれどそこにいてくれさえすれば 自分の目の届く範囲にいるだけで それだけで何とも言えない感覚に襲われた。その感覚は消し去りたくない感覚で。蛇骨はおかしいと心底思っていた。
「だぁってょ。神無は男じゃねぇじゃんか・・・」
「・・・私は確かに女だけれど・・・」
帰ってくるはずのない声に蛇骨は驚き 足下にあった石に躓いた。
「・・・ぃててて;」
蛇骨は自分の足から滴る血を眺め はっと気付き 顔を上げた。
「・・・神無?何でここにいんだょ」
蛇骨は状況が飲み込めず ぼぉっとしてそこにいる神無に聞いた。神無はいつもの鏡をかかえた格好で蛇骨の前に立っている。
「なぜって。七人隊の世話をしているから・・・。他の理由はない・・・」
いつもの静かで感情すら感じられない声が蛇骨には安堵感をもたらした。
蛇骨ははぁとため息をついて「よいしょ」と立ち上がった。
「なぁ 神無。なんで俺に何も言わずにいっちまったんだ?それにこの着物。お前が用意してくれたんだろ?」
蛇骨は自分が今来ている着物を指さした。神無は黙ってうなずくと話し出した。
「言う必要がなかったから・・・。奈落に 蛮骨の世話をしろと言われていたからあの洞窟を去っただけ・・・。それに私は 貴方の荷物じゃないから・・・」
蛇骨は自分の心臓が ドキンッと脈打つのを感じ取った。
そして神無と視線を同じにするためしゃがみ込み 諦めたような口調で神無に話しかけた。
「あのな。俺 男専門だったはずなんだけどな。まぁこんなこと言ったところでお前は結局のところ“無”なんだろうけどさ。俺 もしかしたらっていうかさ。いつ死ぬか。否 いつ土に戻るかわかんねぇわけじゃん?奈落って奴は信用できないかもしんねぇって煉骨の兄貴が言ってたし。だからさ 今生きているうちに。神無と逢えているうちに話すけど。俺 お前の存在が俺の中ででかいことに気付いたんだ。・・・これがどういう意味か分かるか?」
神無は黙って蛇骨を見つめていた。蛇骨は自分を捨てる覚悟でまた話し始めた。
「神無が・・・その。なんてぇか 気になるんだょな。その・・・側にいてほしい存在?」蛇骨はいつまにか苦笑していた。神無はいつものように表情1つ変えずにその場に立ちすくんでいた。蛇骨は ため息をひとつついた。泣きたいような 否それでよかったと思う気持ちが入り交じっていて 蛇骨は複雑な表情を浮かべ静かに言った。
「・・・まぁ お前は無だからな。こんな事いっても分かるわけねぇしな」
「・・・蛇骨の気持ち・・・を?」
蛇骨が驚いて目を見開いた。神無の表情からはいつものように何も感じることはできなかったが確かに神無は言ったのだ。『蛇骨の気持ちを?』と。
「おま・・・俺の言いたいこと・・・」
驚いてまごつく蛇骨をよそに神無は歩き出した。蛇骨が元きた道を。蛇骨は神無の背中を眺めていたがすぐにあとを追った。
「・・・蛇骨。私は確かに“無”だけれど・・・考えることはできるから・・・」
蛇骨は黙って神無の後ろ姿を眺めていた。しかし蛇骨の顔には先ほどと明らかに違う表情があった。
「なぁ 神無。お願いがあんだけどさぁ」
蛇骨は神無の後ろから神無に叫んだ。神無は歩みをとめると静かに振り返った。
「もしよければだけどさ。
 俺 絶対また土に戻ると思うのよ。だって四魂のカケラがとれちまえば・・・だろ?
 だけど俺の骨は残るから。その骨で。うぅん・・・心臓部分から骨 とっていいからさ。
 肌身離さず持っていてほしいんだ。飾りとして。もし俺の気持ちが神無に伝わったら・・・な」
蛇骨はにっこりと神無に微笑んでみせる。神無は微妙に首を傾けると
「・・・なぜ心臓部分・・・?」
と蛇骨の方を向いて聞いた。蛇骨は心臓を指でトントンッと叩くと
「神無の事を一番 想っているところだからな」
そういった。神無は少し黙って それから静かにうなずくと前を再び歩きだした。
隣に 神無に想いを伝えた蛇骨をつれて。

神無は白霊山の中で鏡をじっと見つめていた。
「なぁんだ。神無 ここにいたのかよ」
神無の背後から神楽が羽にのってやってきた。
「・・・神楽・・・」
何か用?と神無が言い終わらないうちに神楽が
「後ろに乗りな。退治屋と法師が来るよ。それをやれってさ。奈落が」
と嫌な顔をして言った。神無は黙って神楽の後ろに乗った。
下に降りていく時に神楽が神無に話しかけた。
「お前 何じっとみてたんだ?さっき。鏡の中。奈落・・・じゃなかったよな?」
神無は黙って下を向いて
「関係 ないから」
そう言ったっきり 何も話さなくなった。神楽はため息を1つつくと
「お前はいいよなぁ。自由で」
と羽を急降下させながら言った。

「蛇骨が・・・やられた」
神無は鏡の中に映し出された光景を目の当たりしていた。神楽が隣で「ぁ?」と鏡を覗き込んでいた。
「ん?犬夜叉がか・・・?・・・ぁ?こりゃ・・・」
神楽は隣にいた最猛勝に言うと蛮骨の元に送った。
神無はふらふらと立ち上がると 蛇骨のいる方へと歩みを進めていった。
その神無の行動を不思議に思った神楽が神無の前に立ちはだかって神無を見下ろした。
「どうしたんだよ。神無。なんか蛇骨に伝えたいことでもあったか?」
神無はその言葉を聞き 静かに首を縦に振った。
「・・・伝えたいこと・・・あった」
神楽は初めてみる神無の表情にとまどいを隠せず とりあえずため息をついた。
そして神無が向かう先には奈落が放った妖怪が道をふさいでいた。それは神楽と神無がこれ以上進めないようにしているかのように。
神楽は神無の隣にたつと前の妖怪を見つめていた。
「・・・おぃ。あれをお前1人でどうやって通過すんだ?」
「・・・魂を吸える・・・」
「おぃおぃ。バカじゃねぇのか?数は半端じゃねぇんだぜ?ついでにもって奈落はここを通る者ならば誰でも殺すようにって言ってるんだぜ?妖怪に。あたしたちでも・・・だ」
「それでも・・・今 いかなくちゃ・・・この山は 崩壊する・・・・」
「お前も分かってたか。奈落が体をここで作れば少なくともこの山は犠牲になるな」
神楽はそれでも行こうとする神無を複雑な表情で見た。神無は神楽と目を合わせようとしない。まぁ あわせたところで神無の瞳からは何も感じ取ることは出来ないのだけれど。
「・・・ったく。行けよ」
「・・・神楽・・・?」
神楽は扇子を構えた。
「伝えたいこと あるんだろ?なら行けよ。伝えるために。さ。
 あたしはこんなキャラじゃねぇけどなっ 姉のお前のことは分かっているつもりだから。
 あたしには扇子があるし もしかしたら後から犬夜叉達が来るかもしれないしな。そしたら倒させることもできるだろうしな。
 ほらもたもたすんじゃねぇよっ!行けっ!」
そう言って扇子を振り上げた。扇子から引き起こされる風で道は空いた。神楽は空いた方の手で神無の背中を押した。
「しっかり 伝えてこいよっ!」
神無は黙ってうなずくと空いたばかりの道に一歩を確実に踏み出した。
時折両側から妖怪が攻め寄せてきたがそのたび 神楽の風が守ってくれた。
神無はなにやらわからない自分の胸の中の感情に素直に従い 後ろを振り向いて
「ありがとう・・・・」
と 呟いた。神楽はそんな神無の声を聞くことはできなかった。神楽はただ神無を遠いところから援護していた・・・・。

「ごほっ・・・ぐっ」
数々の岩の下で蛇骨はまだかろうじて目を開けていることが出来た。蛇骨はもう動かすことの出来ない手を岩の透き間から見つめていた。
「・・・もうこの手で神無を触ることはできねぇんだな・・・・」
神無・・・その名前を口にすると自分の何十年も前に朽ちたはずの心が高鳴るのを感じる。そしてその心の高鳴りを自覚し 苦笑する。
「俺は 男専門だった・・・はずなんだけどなぁ。・・・ぐほッ」
蛇骨は自分で もう無理だと分かったかのように瞳をゆっくりと閉じた。その顔には苦痛とも言える表情が浮かんでいた。

「蛇骨・・・・」
静かな声が 先ほどの犬夜叉との戦いは嘘かのように静まり返った洞窟に凛として響いた。蛇骨は再び目を開けることになった。
「・・・神無?何で・・・」
「無理に話さなくていい」
神無は蛇骨の精一杯の声を遮った。しかし蛇骨は話し続けた。
「もう俺 死ぬんだろう?」
「・・・私に 未来のことは分からない。未来は変えることもできるのだから」
神無は岩の間を縫って蛇骨へと近づいた。
蛇骨は目をわずかに開けて神無を自分の瞳に納めようとしていた。
「もうすぐここに煉骨の兄貴が来る。兄貴は四魂のカケラをとるぜ。・・・そしたら俺は骨になれる。神無・・・約束 覚えているか?」
神無の相変わらず何も感じさせない瞳が蛇骨を見つめる。蛇骨はふっと力を抜くと今までに見せたことのない様な笑みを浮かべた。
「俺は 男専門だった・・・んだけどなぁ」
神無は蛇骨を瞳に映しているのに 自分の目がぼやけていくのがわかった。
「蛇骨・・・約束。覚えているから。私は 覚えている・・・から」
「神無・・・」
蛇骨は静かだが驚いたような声を上げた。神無の瞳には涙がにじんでいた。しかしそれ以上何も言わなかった。
神無の瞳からは純粋な涙が頬を伝って蛇骨の頬へと落ちる。蛇骨は岩に挟まれて動かなくなった手に渾身の力を込め 神無の頬にそっとふれた。
「泣いて・・・くれるのか?こんな俺のために・・・?」
神無はしっかりと蛇骨の手を握り返して小さくうなずいた。
「こんな だなんて言わないで。少なくとも私は・・・・」
「いいよ。ありがとな」
蛇骨は神無にそう言うとその手で神無を押した。
「もう・・・行けよ」
「じゃこ・・・」
「行けって!!」
神無は黙って立ち上がると 後ろを振り返らず歩き出した。
しかし 涙だけは止まらなかった。
止めどなく流れる涙をただ呆然と神無は受け止めていた。
「神無・・・俺はいつでもお前の側にいるから。さよなら・・・じゃねぇよな」
蛇骨の呟いた言葉は神無の耳に届いた。けれども神無は立ち止まったが振り返ろうとはしなかった。
その後すぐ 蛇骨のもとに煉骨が現れた。
蛇骨は力無く笑って煉骨を迎えた・・・・。

シャラッ・・・・。
神無の動くたびにどこか涼しげな音がする。
1ヶ月もかかってやっと仕上げたネックレスは神無の首もとで踊っている。
「さよなら・・・じゃないよね。近く なったんだよね」
神無はふっと笑みを浮かべた。
「さぁ 神無。行こうぜ。また仕事だとよ」
隣で立ち上がった神楽にはしっかりと神無の笑顔が見えていた。
神楽も笑みを浮かべると
「似合うじゃねぇか。それ」
と神無の首もとで輝いているネックレスをこの間と同じように指さした。
「えぇ。ありがとう」
神無はいつもの何も感じさせない表情に戻っていたがそう答えた。
今日も鏡をもち 首には・・・蛇骨が神無を見守っている。
神無は今日も何も感じさせない表情で 奈落の言うがまま・・・・・・。

「けっ!今日もでやがったな!神楽ぁ!!」
「ふん。私も好きであんたの相手 してるわけじゃないんでね 犬夜叉。
 さっさと終わらせようぜ。あぁ 今日は神無もいるんでな」
「ちっ・・・珊瑚ぉ!かごめを頼む!弥勒は俺の援護だっ!」
「わかりました!」
「わかった。かごめちゃん こっち!!」
「いっ・・・犬夜叉!気を付けてよっ?!」
「おぉ!」
ざわめきと共に 神無の胸には微少ではあるが優しさと想う心が芽生えていた。
しかし・・・表情からは何も読みとることは未だ誰にも出来なかった。


あとがき。
こんにちわ。久しぶりに小説UPした 遥です。
この小説は リクされて作ったもんです。
なので お持ち帰りは。。。禁止です。すんません。
これから 今まである 小説をちょい改良してまたUPするつもりですw

この作品は。神無が難しすぎて死にました。
逆に蛇骨を書くのは楽しかったです♪
またこぉぃぅの書きたいです☆次はまだ上手になっていたいです;
表現力。


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: