You’s World

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【同じ空の下ならば】第4話



独りに なれた。

一人に 慣れた。

独りに 慣れた。


そんなつもりで
強がり

精一杯 笑った。


それでも
『俺』だけは変えなかった。

これも精一杯の強がりだったのか・・・・



窓際においてある ベッド。

普段ならば横になっているはずの俺が
どうしてか
今日は端に腰掛けているだけ。

朝陽が差し込み
昨晩 カーテンを閉め忘れたことを思い出す。

それでも
少し まぶしすぎる朝陽は綺麗だと思った。


まだ学校の準備をするには早すぎる時間だが
俺はウィンドブレーカーに袖を通すと

乾燥機へと向かった。
乾燥機に隣にある洗面所で顔を洗って
いざ ランニングに出陣。

乾燥機の中からタオルを取り出し 首にかけようとして….

「ぁ」

空色のタオルがないことに気づいて
あいつの顔も同時に思い出した。

「くれてやったんだっけか」

お気に入りだったんだょなぁ。割と。

俺は仕方なく
箪笥から 蒼色のタオルを取り出して首にかけた。


誰もいない部屋にこだまする俺の足跡は
特に軽いわけでもなく
いつもどおりに 部屋を後にした。



トーストをかじりながら登校するのが俺の日課となった。

決して遅刻しそうだとかそういう理由でもないのだけれど
まぁ なんつうか。
いわゆる俺スタイル。

遅刻ぎりぎりの奴がしそうだとか・・・違うし。
俺はちゃんとまともに登校しているわけで・・・・って。
どうでもいいか。


今日も相変わらず寒ぃなぁ。
俺は寒いのは苦手だ。

手袋をしてはいるが
両手はコートにつっこんでいるし
首にはマフラーを巻いている。

こんなときにこそ
朝練をすべきだと思うのだが
県大会は終わったばっかりで
試合もほかに入っていない。

学校側の規則で
冬の朝練は禁じられているのだ。

とそこで。
「俺って馬鹿じゃん。
 ランニングのまんま 学校にきてシャワー浴びればいいじゃんよ」

むぐむぐとトーストを飲み込むと
明日からはそうしようと 心に誓う。


シャワー室の鍵は俺が持っている。
とはいっても
ここは私立校と姉妹校の公立高校であって
それなりに金もあるらしく
柔道優勝旗を県1持っているわが部のために
シャワー室がつけられたのだ。

それも一昨年なので
そんなに古くはない。

まぁ
余談ではあるが
ほかの部活動にもシャワー室なるものがあるが
別に造られているのだ。



俺の足は朝練のない部室の方へと向かった。

特になにか用があったわけでもないが
習慣というのだろうか。

部室に行って 部室の窓を朝一で開けると
気持ちがいいような気がする。

もちろん雨の日は休み時間に閉めに来るが。
今日は雨も降りそうにない。

ただそれだけだけど
俺は 毎朝 部室へと足を運ぶ。
時間があれば 部室で時間をつぶすことも出来る。

何をするわけでもないが
部室が一番落ち着くような気がするのだ。

狭い部室。
広い我が家。

一人にはかわりがないのだけれど。



…..タンッ

誰もいないはずの道場から軽い足音が聞こえた。

俺は部室に行きかけた足をそのまま道場へと向けた。


….ハッ ハッ

息の切れる音。

一段落したのか
一息ついた。

「お前 冬の朝練 禁止事項に入ってるってしってるだろう??

 稲葉」

俺はため息混じりにそいつの名前を呼んだ。

稲葉は驚いたように振り向くと
声の主が俺だと確認し
ほっと息をついた。

「何だぁ 深愛かょ」

驚かせんなやと
稲葉は少し 吊り上げた目をこちらに向けてきたが
俺はひるまない。

まぁ 普通の女子だったらひるむかもしれないが
俺は 普通じゃねぇんでね。あいにく。

「驚かせるもなにも俺はそのつもりなかったんだぜ??
 てめぇこそ 何で禁止されてるのに朝練なんかやってるんだ?? 」

すると稲葉はうつむいた。

「ぁ?? いえないってのかょ。
 師範にょ」

意地悪くつついてみると
「うっ」と言葉を詰まらせた。

「…..お前より 強くなるためだ」

「……ぁ?? 」

「そんな何度も言うかよ!! あほ!! 」

稲葉は叫ぶと再び うつむいた。

もしかして・・・・
耳の赤さからいくと
こいつ かなり赤面してやがんのか??

「何でまた俺より強くなりたいわけ?? 」

俺は靴を脱ぐと
ひたひたと道場へあがった。

稲葉の隣に腰を下ろすと
バッグからタオルを取り出し 渡した。

稲葉はしばし凝視すると
何も言わず 受け取った。

「俺より強くなろうなんざ
 簡単なもんじゃねぇぞ??
 俺は柔道暦 長いんだからな」

「そんなこと 分かってるよ」

稲葉はタオルを首にかけて
左端を口元に持っていった。

「じゃぁ 何でだ?? 」

「…..お前はさ 嫌いかもしんねぇけどさ」

.....は??

思わず クエスチョンが頭の周りにでちまったじゃねぇか。

「お前はさ
 女だからとか言われるの 好きくねぇかもだけどさ」

相変わらず うつむいたままで
表情までは伺えない。

「で??」

「.....でもお前も女じゃんかょ。
 お前一人じゃどうしても力不足だってとこがあると思うわけょ」

「ん~….
 まぁ 俺も柔道はできるが万能ってわけじゃねぇし
 そうなんじゃねぇの?? 」

すると稲葉はやっと顔を上げた。




「何だ 稲葉。
 その驚いたような顔は」

「ぃゃ…..お前のことだから
 『俺は柔道できんだから力不足ってことはねぇ!!』
 っつうと思ってたんだけどょ」

意外だった。
不意打ちをくらったと稲葉は頭をポリポリとかいた。

「まぁ 俺も万能になれたらいいなぁと思うがなぁ。
 柔道は先輩の背中みてて かっちょいいと思ったからやってただけだし
 護身にもなるしなぁ」

俺はクククと笑った。

「で?? 続きは??もういいのか?? 」

「ぁ。
 ん~…」

「お前が俺より強くなりたい理由」

「ん~….
 お前より強くなって…..」



「お前を守りたいなぁ….とか」

な。

ってあっち向くな!! こら!!

意味がわかんねぇ。
俺って守ってやるぜ!!
お前みたいなひ弱なやつ 守ってやりたいんだ!!
傍にいねぇと危なっかしいんだょ!!っていうオーラだしてっか?!

「俺 そんなに弱くうつってんのか?!てめぇの目に!! 」

思わず稲葉の胸ぐらをつかんで勢いよくゆすぶってしまった。

稲葉の頭がグラングランと力なく揺れて
「うわぁ。とりあえず 落ち着けや」
これもまた力ない声で言うもんだから
逆に拍子抜けしてしまって

「わり….」


「さっきの質問の答えだがなぁ。
 別にてめぇが弱弱しいオーラがでてっからとかじゃねぇぞ?? 」

こいつ….俺の心ん中 読み取ったのか??


「お前にだって
 傷の一つや二つ あんだろ??
 傷があるってことは
 弱みもあるっつうことだ」

人差し指をピンっとたてて話す稲葉はどこか偉そうだ。

「お前は柔道もやってるし
 強そうだし
 実際 口調とかも男っぽいし
 性格とかもそんじょそこいらの女子よりさっぱりしてて
 守ってもらわれる要素なんてねぇみたいに見えるけど」

「けど?? 」

「そういうやつに限って
 強がりだったりすんじゃねぇのかなぁ みたいな」

俺の勝手の憶測だけどな。
そういって稲葉は笑った。

何を言えばいいんだろうか。
いや むしろ頭の中 真っ白で何も…..

「ぃゃ
 ちょ...稲葉。それってどういう意味なんだ?? 」

「ん??」

稲葉は先ほどの赤面はどこかに捨て去ったみたいな表情で
俺の顔を覗き込んできた。

「だから俺が守ってやるって。
 俺が彼氏になるの 嫌か?? 」

……..―――――――――――
へ??

「か.....?? 」

「そう 彼氏だょ」

言ってるこっちも照れるからそう何度もいわせんなやって
稲葉は俺の頭をぐしゃっとなでた。

不器用そうな大きな手は

温かかった。



今まで

クリスマスやバレンタインの季節になると
街角でも

恋人たちが幸せそうに
肩 寄せ合ったりして

温かそうにしてやがるから

思わず寒がりな俺も
「寒ぃ」とか声にだしちまったりするじゃんか。


恋人に憧れを抱いたことはない。

恋人を自分に置き換えて妄想したこともない。


決して興味がなかったわけではない。

けれど
俺に言い寄ってくるやつなんて

俺の中身なんて知らねぇ奴らばっかだし
俺の男口調を聞けば ひくだろう。


しかし こいつは……

「深愛!!何してんだ!!
 授業 始まんぜ?!」


座り込んでいた俺の腕をグイっと引っ張る
力強い手。

「ぁ?? ぇ?? 」

「ったくお前 俺が告ったとたん
 固まって何にも反応しねぇんだもん。
 俺 シャワー浴びてきちまったぜ?? 」

なるほど
首からは昨日 やった空色のタオル。
洗濯したからか
洗剤が淡く香った。

「ぁ。あぁ」

あっけにとられていたのか
俺は立ち上がった。


「な 深愛って可愛いのな?? 」

「ぁぁ?? 稲葉 てめぇ 喧嘩売ってんのか?? 」

「なんでそうなる」

クスクスと笑う稲葉。

「稲葉 お前 何が言いたいんだ??」

「は?? お前 気づいてねぇの?? 」

「なんに?? 」


すると稲葉はふと立ち止まり
俺の耳に唇を寄せた。


「顔 真っ赤ダゼ?? お嬢さん」



ポーカーフェイス

深愛。


もろくも稲葉 零の前に崩れ去った。





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