You’s World

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普通の裂け目◆1◆


静かだった。
その部屋は静かだった。

そんな場所で2人は出逢った。

***普通の裂け目***

人は呼ぶ。
その部屋を。
「クズの溜まり場」と。


眠っていた。
こんこんと。
ただ眠りについていた。
変えれなかった。
返れなかった。
還れなかった。

もう2度と。


コンコン、と音がした。
出逢いの、始まりの音がした。

「はい。」

午後だった。
恐らく5限目が始まって30分が経ったくらいだろう。

「ちょっと良いかね、桧埜ちゃん。」

声がした。
ドアが開いた。
誰か入ってきた。
2人。
先生

と

誰だろう。
知らない人。

どうでもいい。
どうでもいい。
全て。
もう、どうでもいい。

「さ、こっちだよ。詩夷ちゃん。」

すると、シイチャン、と呼ばれた少女がそっと部屋に入ってきた。

髪が長かった。
校則だからか、きちんと後ろで2つにくくり、三つ編みにしていた。

「さ、そこに座って。」

先生が、この部屋の担当である西沢が
目の前の机に付いている椅子を引きながらドアの前に立ち尽くす少女に言う。
少女は少し迷ってから、西沢が引いた椅子の先にそっと腰を下ろした。

それを確認すると今度は、前方でソファーに座り本を広げている少女に向かって
「桧埜ちゃんもこっちへ。」

ヒノチャンは一瞬ためらい
一瞬面倒臭そうに顔をしかめ
一瞬俯いてから、本を閉じて立ち上がり、目の前の椅子を引いて腰をおろした。

三瞬はかかったものの、自分に従った少女に満足し、西沢は喋り始めた。

こっちは、と椅子の先に遠慮がちに座る少女を指差して
「C組の笹月 詩夷ちゃん。」
と
その言葉に反応して無言で少女は、詩夷は頭を下げた。

そして、と詩夷が頭を下げたのを軽く無視し、さらに続ける。
「この子はF組の柊 桧埜ちゃん。」

少女は、桧埜は頭を下げ返した。
というか、ずっと俯いていた。

気まずい空気が流れたような気がした。

と

「じゃあ、あとは2人で適当に話しなさい。」

―は?!

やっと頭を上げた桧埜が
「待ってください、先生。」
そう言おうとしたときには既に、西沢がドアの向こうへと姿を消していた。

―まいった。

桧埜は人と、特に初対面の人と話すのを大の苦手としている。
間に誰か挟まなくては、一言も喋れない。
はっきり言ってこの状態を、桧埜はどうする事も出来なかった。

沈黙が流れた。

2人の出逢ったその静かな部屋に
沈黙が流れた。





(世古月 柚side)

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