隔離病棟

ここは戦時中、結核やハンセン病の患者が余生を過ごした病棟で、今では廃墟と化しています。心霊スポットとしても名高く、結構ネットでも取り上げられています。

そんな場所へ行くきっかけは友達のこんな一言。「涼しくなろう」
夏休みも半ば、宿題の事なんか眼中に無かった高校一年生の夏。男友達４人（自分と、霊感があると豪語するＳ、マジでビビリなＴ、幽霊なんか信じないハイテンション人間のＨ）で隔離病棟へ行ってきました。
ちなみに時刻は午後９時。
ちゃんとした入り口があるのですが、中から鍵が掛かっているのか、全く開かす、仕方なく、近くの横穴（多分、窓か何か）から入りました。

中に侵入すると草の臭いが一気に鼻につきました。足元にはちゃんと床があるのですが、穴だらけで踏めば今にも抜けてしまうような状態。あちこちでその床を破り異常に育つ竹。明らかに外とは空気が違いました。
その中をあても無く歩き回る自分たち。最初に入った部屋がトイレでした。
「何？ここ」
「トイレじゃない？」
近くに破損した便器。それを見て今までハイテンションによって隠されていた恐怖という感情がみんなを襲いました。ただ一人を除いては…
「うわっ！学校のといい勝負だ！記念にしていこうぜ♪」
「Ｈ！お前怖くないのかよ！」
「なんで怖いんだよ！マジでテンション上がるし♪Ｔも一緒に来いよ」
「ふざけんな！気味悪ぃだろ」
「いいから来いって」

二人がああこういっている間、自分とＳは他のところを見て周ることに。
トイレから５ｍあるかないかのところに病棟がありました。病棟に入るとＳは、
「まずい…なんか来る」
と耳打ちしてきました。自分なんか霊感のない人間なので、Ｓの言葉を素直に信じ、
「どうする？逃げたほうが…」
と言っていると、目の前の窓がいきなり開きました。
「うぁぁぁぁ！！！」
自分が叫び、逃げようとすると、目の前にＨが…
「びっくりしてんじゃねーよ、窓から入ってきたくらいでさ」
「ふざけんな！マジで死ぬかと思っただろ！なぁ、Ｓもなんか言えよ。」
「俺はこいつが来るのが見えたから。だから言っただろ、なんか来るって」
「はっ？普通に言えよ。まったく…」
そんなやり取りが交わされていた時、Ｓが気づきました。
「あれ…Ｔは？　Ｈと一緒じゃねぇの？」
「あいつはおまえらと一緒じゃねぇの？俺が便所の中に連れて行こうとしたらお前らの方に逃げていったからさ～」
「えっ？っていう事はあいつ、今一人じゃん」
「マジかよ！！！」

皆でＴの捜索が始まりました。病棟は三階建てですが、二階～三階の階段が壊れていて、登るにはがけをよじ登るしかないので、一階と二階を手分けして捜索。皆、暗く、いつ出てもおかしくないような場所を、懐中電灯だけを頼りに単独行動しました。
自分は一人が嫌だったので、なるべくＳから離れない程度に距離をとりつつ探していたのですが、まったく見つからず、挙句の果てにＨともはぐれる始末…

しばらく探していると時刻はもう１１時。Ｔは見つからず、単独行動時にＨともはぐれてしまったので、Ｓと二人で行動していました。するとＳが、
「そっちに行くな。まずくなってきたから一回出よう」
と言ってきました。
「なんだよ、またＨか？」
「違う、今度はほんとにまずい。いいから行くぞ」
Ｓが自分の腕を引っ張り、侵入口へ行こうとした時、
「いたぞ！！Ｔだ！！」
とＨの声が。しかも「行くな」と言われたその先から…
「行くぞ！Ｓ」
「バカ！行くんじゃねぇよ」
Ｓを無視して先へ行くとＨがいました。
「いたよ！Ｔが。ほら、うずくまってる」
その方向に目をやっても何もいない。
「Ｔ、何やってるんだよ！来いよ！いじけてるのか？」
すると黒い影が懐中電灯の前を横切ったように見えました。
「うぁぁぁぁ！！！来るな！」
Ｈが叫び、Ｓが
「早く出ろ！！」
と叫ぶと同時に、急いで外へ出て病棟の正面まで行くとＨが、
「今のじいさんだったよな？」
「えっ？じいさん？」
「多分患者だよ。まだ住み着いてたんだ。」
ＳとＨには見えたのですが、患者の幽霊がうずくまっていたらしく、Ｈの声に反応して向かってきたらしい。
しばらく恐怖でその場から動けませんでしたが、Ｓが
「結局Ｔはどうするんだよ？」
と言って来たのですがＨが
「警察呼ぼう」
と言ったので交番まで歩くことに…
しかし、その途中、うずくまってる人を発見……Ｔです。
「大丈夫だったか？」
「大丈夫じゃねぇよ。ずっと一人だったんだぜ。」
今までのことを話すと、Ｔが、
「どうせ怖がらせようとしてるんだろ？」
といい、気まずくなってしまいました。

Ｔの家に泊まることになっていたので行こうとすると、ＳがＨに、
「お前、お払い行った方がいいぞ」
と言ったのでＨが
「はっ？なんで俺だけ？どうせ憑いてるとか言うんだろ？第一、さっきはびっくりしたけど、今思えば錯覚だよ。疲れたからＴの家に泊まるの止めて、自分の家帰るから」
Ｈが機嫌を損ねて一人、別の道へ。
「じゃあね」
「あぁ、じゃあな」
Ｓに、
「なんであんなこと言うんだよ。」
と言うと、Ｓは、
「仕方ないだろ。あのままだったら、とり憑かれてたんだから」
「どういうことだよ？」
「まぁ、気にするな」

次の日、Ｓが熱を出し、お払いへ…
人間には憑かれやすい体質と憑かれにくい体質があるのだとか。
そして、憑かれやすい人に憑くと大変なことになるとか…
Ｓが言うには、Ｈが憑かれやすい体質らしい。

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