その2.「わたしメッセージ」の補足



まず、「わたしメッセージは怒って言ってもいいの?」という質問。

もちろんいいんです! 
「もーのすごくイライラしてるー!」と怒鳴っちゃってもわたしメッセージです。
悲しい時は泣きながら、悔しい時はギリギリして言っていいんです。 ただ、親業ではわたしメッセージの感情に「怒り」というのをなるべく使わないように考えよう、と言っています。

「腹が立つ」 「イライラする」というのは感情でないとは言えないのですが、実はその奥に「悲しみ・悔しさ・恥ずかしさ・不安・傷つき・怖れ…」というようないろいろな感情があって、「怒り」というのはそういう気持ちにさせた相手に向けた攻撃の感情であることが多い…と。
だから、たとえば姑さんにいけずをされてすごく腹が立った時、実はその奥でとっても悲しかったり傷ついていたりする。 そしたら「怒り」ではなくて、「悲しい」「つらい」という感情の方を表現しよう、ということです。
でも、怒っている時に確かにその奥の感情があると思っていても、なんかそっちは弱い感じがして、そっちを表現したんじゃ負けたような折れるような気がして意地でも言えない、みたいな気持ちもありますよね。 私もあります。

それでも、これは”負けるが勝ち”じゃないけど、怒りの応酬をするより、こちらの気持ちはずっと伝わるはずです。
とはいっても、私もなかなかムカッときちゃうとできない。
でも、その時できなくても、あとで「私は何であんなに怒ってたんだろう。」と考えてみると、本当はとってもその人のことが好きだったりとか、楽しくやりたいという気持ちが強かったり・・・っていうのを発見したりします。 これなら少しはできそうでしょ。
そしてもう一つ。 次の日でも何日かたってからでもいいから、気持ちが落ち着いている時に素直な気持ちを言ってみる。
「この前、すごく怒っちゃったけど、本当は楽しくやりたかったのにできなくなっちゃって、悲しかったんだよね。」…とか。 大人同士とか夫婦だとけっこう照れくさいけど、子どもは言いやすいし、(おかちだけかも)子どもってそういうことをすぐ許してくれます。

もうひとつ、感情に理由や説明をつけるか、という質問。

わたしメッセージというのは文字通り、「私」を主語にしたメッセージなので、
     「私、かなしーい!」でも
     「私、もううんざり」 でもわたしメッセージには違いありません。

でも、親業の「わたしメッセージ」のところで特にとりあげているのは「3部構成のわたしメッセージ」というものです。
3部とはなにかというと、
  「行動」 「影響」 「感情」  の三つです。
うえっ、何だかもうやな感じ、と思う人もいるでしょう。
でも一応説明しますね。

   「ここにかばんを置くと(行動)」
   「足を引っ掛けそうで(影響)」
   「心配だよ。(感情)」

これが全部入ったのが3部構成のわたしメッセージです。
それに対してさっきの「わたし、かなしーい!」は2部構成のわたしメッセージです。

わたしメッセージで具体的に相手が行動を変えることを期待するには、3部構成が必要なんですね。 何でかって言うと、2部構成は私の価値観を伝えているだけなのです。
  「おかあさんは、そういう服装嫌いなの!」
  「そんな風に言うなんて、恥ずかしい。」
こういうのは、こちらがそういう価値観を持っていることは伝えられるけれども、相手が違うからといってそれを変えさせる力はないんですね。
3部構成は相手がしていることがこちらに具体的な影響、もっと言えば迷惑を及ぼしていることを伝えていますから、「どうにかしてほしい」と迫れるわけです。

だけど、実際にはこの3部構成を自然にやるのは、とっても難しいなあと私は感じています。 すごく長くなっちゃったり、理屈っぽくなっちゃったり。 でも映画なんか見ると、やっぱりアメリカやヨーロッパの人は子どもにもよく説明してるな、っていう感じですよね。

とまあ基本はこういうことですが、私は不自然なことは続かないと思っているので、まずとにかく私を主語にしてしゃべる習慣をつけられたら、いいんじゃないかな。 それだけで、ずいぶん自分の発想や相手との関係は変わってくるんじゃないかな、と思っています。

でも、3部構成の中の「影響」を考えてみることは大切です。 講座でそれぞれ自分の身近な人に言いたい、3部構成のわたしメッセージをつくってみようとすると、全然言えることがなくって困っちゃう、っていう人がけっこういるんです。「影響」がないことばっかり、言ってるんですね。

「もっと勉強しなさい。」とか
「お友達をいじめちゃダメでしょ。」 とか
「どうして忘れ物ばっかりするの。」 とか・・・。

一生懸命影響を考えるんだけど、残念ながら私への影響ってどれもないんですよね。 影響がないことは「価値観の対立」で、即効で解決はできません。 自分の姿を見せたり、なんでもないときに自分の価値観を充分伝えたりすることで、じわじわと影響を与えていくんですね。

だから、今解決するのを迫れるかどうか、詰め寄っても相手が受けとめるかどうかを見きわめるのが、「影響」があるかどうかです。
親ってどうしても子どもの問題をしょいすぎてしまって、「あんたが困るでしょ」と怒ったりしちゃうんですよね。
3部構成の「影響」は私への影響です。 「あんたが困る」という相手への影響ではないので、おまちがいなく。

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