NO17. 心の原風景


 人の心の中には幼い頃の原風景というものがあって、環境がその人に与える安心感というのは、この風景に大きく関わっていると何かで読んだことがあります。 視界が山でさえぎられていないと落ち着かなかったり、逆に開けていないと息が詰まったり、水の流れる音が安らかなBGM だったり、カーテンを照らし出すネオンがないと恐かったり…。

 2歳から6歳までを新潟県の長岡市で過ごした私にとって、暗い空から絶え間なく降ってくる雪の映像は、心に焼き付いている原風景といえるかもしれません。 友だちと雪でいろいろなものを作ったり、スキーをしたことは楽しい思い出です。 でも、かすかな音をたてながら雪が落ちてくる空を見上げたとき、私の心のイメージは広い広い宇宙にたった一人で立っていて、自分の理解を超えた、はるか彼方からやってきている雪に少しずつ少しずつ埋め尽くされていく…、そんな感じでした。 今思うとそれはかなり孤独で、無常感が漂う光景ですが、子どもにそういう体験をさせてくれるのが、自然の力なのかもしれません。 自然の中での孤独は、人間の中での孤独とは質の違う、痛みを伴わない孤独のような気がします。 私が信州の冬が好きだったのは、あの凛とした空気と風景に、清々しい孤独を感じるからかもしれません。

 あなたにとっての原風景はどんなものでしょうか。 今の生活にその安心感はあるでしょうか。

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