専業

平成11年2月パチンコ生活がスタートする。

元々パチンコで稼ぐ自信は高校時代に持ち始めて居たので、いつもと同じ事をすれば良いとかるく考えていた。

しかしパチンコ生活を始めた当初はパチンコ冬の時代、CR機は連荘5回までと取り決めが行われ

活気に満ち溢れたホールは少なかった。しかし、そんな当時でも本気で探せば日当3万・4万の台は幾らでも有った。

当時立ち回りのメインとしていたのは権利物『ギンギラパラダイス』ラッキーナンバー制の店で

無制限のサービスタイムやptを貯めて、無制限で打てる店を探しては生計を立てていた。

そんな頃『パチンコ冬の時代』と呼ばれた日にも終わりが訪れる。

連荘規制の撤廃と同時に登場したのは『フィーバーゼウス』丁度この辺りからCR機も打ち始めるようになる。

連荘規制の撤廃から暫くは何処のホールも客足が少なく釘の状況はそれほど良く無かった。

そんな中でも収支は安定し月間50万前後を稼げる状態が続く。

サラリーマンの全盛時代には劣るが、世間的にも収入面は良くは無いが悪くも無い。

でも心の中は何か満たされぬ気持ちで溢れかえり、むしろ罪悪感さえ感じる日々も多々有った。

確かに仕事を辞めて自由を手に入れた。収入も悪くは無い。けど何か足りない?

こんな生活を自分は望んでいたのだろうか?親に仕事辞めて何をしているの?と聞かれ

とっさに嘘を付いてしまう自分に憤りを感じた。

胸を張ってパチプロをやってるよ、といえない自分に腹立たしさが募った…

心の中での葛藤を繰り返しながらも連日パチンコ生活は続いた。

しかしそんな心の迷いが有っても一度足を踏み入れた世界。そぅ簡単に逃げ出す訳には行かない…

もっと収入を稼げば、この満たされない気持ちは解消されるんじゃないのか?それからは日々は

稼ぐ事ばかり考える様になる。

そんなある日いつも通っていたF店の新装時の玉の出し方について考え、とんでもない必勝法を編み出す。

そのF店新装開店時は狂ったように玉を出す店。

簡単に説明すれば日当4万クラスの台が、その日だけは大量に有る、でも体は一つしかない・・・

これだけの台を一度に独占して打つ事が出来れば、さぞかし儲かるだろうなぁ~と

ボンヤリと考えてるうちにチョットした知恵が重い浮かぶ・・・

『そうだ!代打ちを使えば良いんだ♪』ひらめいた瞬間に行動を起こした。

まずカラオケ店の店長時代に使っていたアルバイトに連絡し、日当1万円を支払う代わりに、

指定した台を打つ様に伝え、その日から早速行動する事にした。

最初はバイト数人を雇い実行してみた所、これが思わぬ大失敗。

そもそもパチンコのシステムを全く理解してないバイト達、保留玉満タンでも打ちっぱなし等

目も当てられない光景が繰り広げられた。しかしそんな失敗も成功のもと。パチンコのシステムを教えるうちに

バイト達の成績はうなぎ上り。収支は月間100万以上の月も数度有った。

しかし成績優秀な代打ちは次第に自分の金で打つようになる。そんな事を繰り返しながら収入も倍増した。

だが、やはり心は満たされなかった…

あれだけ好きだった筈のパチンコが何故か楽しめ無く成っていた。

液晶演出の派手さ・釘調整の均一化・何処の店に行っても同じ台ばかり。

日々、回転率を気にしながらの作業的なパチンコ。

当たりシステムと勝ち方を完全に把握してしまった自分は、

液晶画面を見て楽しそうに騒いでる人達を次第に毛嫌いし始める。

『あいつは馬鹿だ』『もぅアタリ・ハズレ決まってるんだよ』

『叩いても揺すっても当たらないんだ』『金だけ置いて帰れば良いんだ』

『そんな台打って今日勝っても・・・いつか必ず負けるんだ』

『リーチ目なんてある訳無いだろう・・・』

かつて、自分が楽しんでいた事と同じ様な事をして楽しむ人達に向かって、心の奥で

そう思う自分に嫌気がさした。この辺りから急激にパチンコの収支が下がりはじめる。

自己嫌悪に陥りパチンコ屋に行く事が次第に嫌になり始じめた。家にずっといる訳にもいかず、

嫁にはパチンコに行って来ると伝え一人ブラブラと街をさ迷っては時間を潰していた。

そんな事をしながらも行き着く先は結局パチンコ屋ばかり、CR機を打たず羽根物バカリ打ち始め

久しぶりの羽根物を打ちながら高校時代の楽しかった頃のパチンコを思い出す。

そして何日も羽根物を打ってる内に、かつて高校時代に夢見た憧れの職業を思い出す。

高校時代に憧れた職業。それは『釘師』盤面で動く玉をハンマーとゲージ棒で操るそんな技に憧れていた。

その日から釘師に成りたいと言う強い衝動に駆られるが、どうすれば釘師になれるのか判らず色々と調べてみるが

就職情報誌に載ってる様な代物では無く途方にくれる。

そう思いながらも釘師になりたいと言う気持ちは次第に膨れるばかり。

そんな心の内を色々な人に話してるうちに、ついにその扉は開かれる・・・


【続く】

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