雪月花

to leave or to be left














 わかったんだよ。
 わからなかった?

 置いていくことと、置いていかれること。
 しくしくと、致命的に痛むのはどちらか。

 両方、やってみてわかったんだよ。
 置いていかれる方が,随分苦しいということが。

 だからあたしは今、おいでと言っている。
 意地でも、あたしは行かないと言っている。
 これが永遠ならばそんなこと、どちらだって構やしないけど、そうじゃないから、あたしはあなたに楽でいさせてやりたい。あたしは、つらいことには慣れている。眠れないことも、食べられないことも、涙が止まらないことも、叫びだしたいことも、閉じこもるしかないことも、一通りは経験済みだから、恐いけれど、予想がついている。

 だけどそんなのは、きれいごとだ。
 少なくとも、半分くらいは。

 あなたに、懐かしがられると、恋しがられると、あたしの痛みは輪をかけて鋭く、重くなる。理由の辿れない罪悪感にまで苛まれたり、狂おしいほどの夢物語を現実と比べてしまったりする。

 あなたは、大切な人だ。
 だから、あなたを愛しているということを、実感したくない。
 あなたが、傍に居ない間は。
 だってあなたは、居ないのだもの。

 あなたをどれほど必要としているか、それを認めたまま毎日をひとりで過ごせる程には、あたしは逞しくない。いつも欠けていることさえ、認めなければいけないから。
 傍に居るときに、出会いを、涙ぐむまで感謝する。それが、あたしの精一杯だ。

 もう少し勇敢なら、きっと寂しくはないのに。










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