Bond

Bond

傘で殴られた


母が暴力をふるったことがある

言葉はきついので
いつものことだけど、
ぶたれたのはあの時だけ。
だから憶えている

その日、
母は機嫌が悪かった。

なのに、
私は折り畳み傘を一階のソファの上に置き忘れた。

二階に上がってきて、
「しまいなさいっていったでしょ!!!」
母の顔は怒りでゆがんでいた。

次の瞬間、
折り畳み傘を私に向かって振った。
そのとき、
「あたる」と思った。
でも、あたっても少しだろうと思っていた。

そのとき、
折りたたみの柄の部分が伸びて、
思いっきり腰を直撃した。
あまりの痛さにおもわず体が動く。

その衝撃には母も予想外だったらしい。

でも、母はおこったまま
一階へ降りていった。

怒りで満ち満ちていた。

一方、私は
ぶたれたことの肉体的な衝撃と
殴らないと思っていた母から殴られた心理的な衝撃と
二つの衝撃の間で行き場を無くしていた。

家の中に、
味方は一人もいなくなったのだから

© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: