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yuuの一人芝居
格子戸
格子戸
鶴形山には、観竜寺と阿知神社がある。また、北側は墓地となっていて、沢山の石塔が立ち並び、彼岸と盆には香が立ち昇る。
山を下りると倉子城で一番賑やかな本町へ出る。低い軒の商家が並んでいる。旅篭、小間物屋、提灯屋、研ぎ屋、化粧(けわい)屋、陶器屋、この道筋に来れば何でも揃った。 大店は汐入り川に面して並んでいたが、小商いの商家は裏道の本町通りに集まっていた。村人の出入りが多いのは何でも揃うこの通りであった。
秋の祭りの頃のことである。
「おみつ、阿知の神様へ御参りしてもいいよ」
と女将が帳面をつけていた顔を上げて、空雑巾で格子窓を拭いている小働きのみつに声をかけた。
「いいのでしょうか」とみつは心の表情を顔に表して言った。
「素隠居に生剥げが剽軽に舞って賑やかだょ」
素隠居というのは、ひょつとこに似た面を被りおぶりの内輪を持って煽り、村人に福を授けるというもので、生剥げは天狗のような面を被り荒法師が持っ鳴物の杖で村中を歩き災難を追い払うというものであった。
みつが、木賃宿「波倉」に小働きとして奉公にあがったのは十二の時だった。それから三年が過ぎていた。
みつには母がいなかった。尋ねると死んだと父は顔を背けて言った。それから母のことは聞いたことがなかった。
倉子城から浜の茶屋を通り生坂の峠を越えた西に広がる地がみつの産まれた清音と言う土地であった。
「波倉」の女将はみつの伯母であったから優しさと厳しさで、嗜み躾はとくに喧しかった。ぞんざいな扱いは受けなかった。
山陽道は岡山から大供、野田、白石、庭瀬、庄、生坂、山手、清音、そこで松山川の渡たり、真備、矢掛、井原と言う道筋で、備前、備中から備後へと入る。街道沿いは人の往来も多かったが、ひとつ入れば青青とした田地が広がっていた。
みつの父親は百姓をしながら、鍛冶屋も熟していた。それというのも備中は北房の刀鍛冶の血をひいていた。刀工として先祖は名を成した人がいた。
備前の長船は名のある刀工を世に出して有名だが、備中の北房呰部は國光、國重らの名で業ものが多かった。 吉井川の砂鉄、松山川の砂鉄が名匠を産んだのだろう。
少し話が前後するが、作兵衛が四十瀬のお鹿に「砂鉄が・・・」と問うが、よい材料がなくては良い物が造れない、その出る場所を尋ねたのであろう。
よく家を空けたといったが、作兵衛はお鹿に教えられた松山川の支流を歩き回っているうちに、みつの父親國蔵と出会い、清音で軒先を借りたたらを習った。
みつがおさよの看病をしていた時期である。人の巡り合わせの妙である。
十五のみつは女の盛になろうとしていた。月のめぐりを太ももに感じたのは十三の時だった。もう子供ではないと、耳は熱くなり、頭がのぼせたようにぼーとしていた中で思った。痩せて骨の見えるからだが少しづつ肉をつけはじめ、滑らかな膨らみ、肌もきめ細かくすべすべした女に変えていった。
「みつも女になった」とその時伯母の女将も喜んでくれた。
「女になったら、滅多に肌を男に見せてはいけませんよ」と付け加えた。
みつは父から貰った着物を着て、阿知神社への石段を下駄で踏んで上がっていった。
幟が何十本も建てられ、風にはためいていた。子連れの夫婦が手をひいて燥ぐ、子供達が境内を走り回る、屋台の風車売りの掛け声、車座になって酒を酌み交わしながら豊年を祝う人たち。
みつは賽銭箱に一文投げて、知っている人の幸せを願った。
その時、みつは袖を引っ張られた。
「おとうちゃん」
「ようやく御先祖様に申し開きの出来る代物を打つことが出来た」
國蔵はそう言った。
「これが売れたら、おまえに豪勢な嫁入り支度をしてやれる」
「うちは、まだ嫁にはゆかん」ときっぱりと言った。
「それならそれでええが・・・」
みつは國蔵と屋台を冷やかして回り、倉子城を見下ろせる場所に立った。
「みつ、この刀を持って、本城新太郎道場へ行き目利きをして貰ってくれんか」
「いいわ。でも、おとうちゃんが持って行けば・・・」「何も言うな、お客がそうして欲しいと言っていると、お父のことはどんな事があっても話してはならん」
みつは何かの事情があるのだろうと思った。
國蔵は刀の入った布袋を出した。白鞘に新刀が納められていた。
「ほほ、ふふ、うう・・・」
本城は懐紙を口に挟み食い入るように見詰めていた。「北房は呰部・・・。よくここまで鍛練なさいましたな、と、お伝えください」
本城はみつの前に戻して言った。
「拙者が購うのも、腰に差すにも勿体ない。長船、呰部、それをこの業物は超えておる。みつさん・・・これは遠い話です・・・」
本城はぽっりぽっりと話し始めた。
秋の獲り入れを終えた頃、山陽道を二人の少年が京を目指し歩いていた。歩幅は軽やかだった。目は希望に満ちていた。
備中北房呰部の産まれ刀鍛冶の倅達だった。が、殆ど刀を打つ事がなく鍬や鎌を作り、たまに頼まれて鉈や包丁を拵えた。刀工國重以来の伝統の業は泰平の世では必要がなかったのも廃れるもとであったろう。
京までは同じ想い、先祖に恥じない刀鍛冶になろうが合い言葉であったが、純粋な少年の目に映ったのは綻びかけた散る前のあやうげな世情の波だった。
戦になる、その予感が斬れればいいだけの刀を造らせた。刀鍛冶は殺す刃を作ることのみに専念していた。
少年の一人はそれに嫌気がさし江戸へ出た。お玉が池の千葉へ通った。
もう一人は刀に拘って、辛抱し続けた。
「みつさん、あなたはいい父親を持ったな」と本城は言葉を落とした。
そして、
「人間とは、縦に生きる事しか出来ぬ者と、横にしか生きられない者がいる。今の歳になってもその何方がいいのかさっぱり分からん。まるで格子戸のようじゃ」
と呟いた。
「おとっちゃん、おっかさんのことを聞いていい」
みつは國蔵に本城の話を済ませた後に聞いた。
「おまえも分かる年ごろになったから・・・」
國蔵が重い言葉を落とし始めた。
「本城と師匠の娘さんとの間に出来た子だ。本城はそんなことは知らないだろう。江戸へ行った後に子供が出来ていることに気づき・・・。その事が師匠に分かれば大変なことになる・・・。わしが、連れて帰った。おまえを産んで暫らくしていなくなった。江戸へ、本城のいる場所へ・・・。その後のことは分からないが・・・」
「みつ、お前はわしの子だ。お前の母をわしは密かにすいとった。お前と三人の生活は幸せじゃつた。本城が千葉の免許皆伝を持って倉子城に道場を開いたとき、わしがお前に残してやれるものは後の世まで値打ちの変わらぬ刀じゃと考えた。
今までの柵を断ち斬る事の出来る刀、その刀にお前の幸せを託すこと、そう考えて打ったがいいものは出来なかった。
刀は人斬り包丁じゃが、己れを守る為の物、好いた人を守るために生き長らえる道具、と考えたらこの一振りの刀が打てた。お前の幸せの、お前の母の・・・」
「いい、おとっちゃん・・・」目頭が熱くなりみつは袂で顔を隠した。
國蔵と名のある刀は、今、倉敷の医者の床の間に飾られてある。
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