青い空と蒼い月

青い空と蒼い月

4話



「さあ、記念すべきレオの初仕事、人捜しに出発だ!まぁ、人捜しと言っても、未だに帰って来ない仕事仲間なん
だがなぁ。はっはっはっ!」

‘事務所兼従業員室’を出てからすぐにニコルは、緊張しているであろうレオナルドを気遣ってか、半ば冗談混じ
りに豪快に笑い飛ばしてみせた。
しかし、ニコルの狙いが外れたのか、やはり緊張しているのか、レオナルドは、ただ口元を歪めただけの冷めた笑
いになっていた。

「・・・少し聞いてもいいか?」

「え?あ、はい。どうぞ・・・。」

「レオ。お前はさっき、アッシュにどこの生まれか聞かれた時に黙っていたよな。あれは何故なんだ?聞かれたら
困るところなのか?それとも・・・。」

「・・・。」

レオナルドはしばらく黙っていたが、意を決したのか少しずつだが話し始めた。

「すいません・・・。僕、実は・・・、記憶が、消えてしまって覚えていないのです。」

「そうだったのか・・・。それで、いつからなんだ?記憶が途切れているのは。」

「僕が覚えていることはあまりないのですけど・・・。今、一緒に住んでいるミーヤおばさんの話では、僕は、どこ
かの山に捨てられていたそうです。」

「な・・・。捨てられていただと?!お前がか・・・?一体、どういう理由かは知らんが、子供を捨てるとは許せ
んな!」

ニコルは両手に力を込めて握り締め、ワナワナと震えていた。

「よし!決めたぞ!俺は、お前の記憶を取り戻すことに協力する!そして、お前の親をぶん殴ってやることにした!
『何故、レオを捨てたんだ!』ってな。」

意気揚々と、二の腕にありったけの力を込めてレオナルドの顔の前まで突きだした。
最初は驚いたレオナルドだったが、自分のことを思ってくれたニコルを見ていると自然に涙が溢れてきていた。

「おいおい、泣くヤツがあるか!今は、その涙は我慢しろ。いつか、本当に泣ける時までお預けだ。いいな!レオ。」

「・・・はい!」

「よし!それじゃ、人捜しに行くぞ!」

新たな気持ちで、外に出ようと勝手口のドアノブに手を掛けようとしたその瞬間、勝手にノブが回り、ドアが開いた
のだった。

「おわっ?!」
「きゃっ!」

危うく出会い頭でぶつかる手前で、ニコルと外から買い物袋を持って帰ってきたらしい女性は、お互いに反射神経
が良いのか、ぶつからずに済んだようだ。

「こんな時間にどこへ行こうとしていたの、ニコル。・・・あら?見慣れない顔ねぇ?この子はどちら様かしら?」

「あぁ、こいつはさっき、マルクのじいさんが連れてきた新しいお仲間というわけだ。さぁ、挨拶しな。」

「はい。僕はレオナルドと申します。今日からここで働かせていただくことになりました。宜しくお願いします!」

「あらあら。わざわざどうも。私は、スン=リンレイよ。どうぞ宜しくね。あ!まさか、ニコルと一緒に私を捜しに
行こうとしてたわけ?」

「いや、リンレイを捜しに行こうとしていたのはワシじゃよ。その二人は、イルゥとクラマを捜しに行かせたのだが
なぁ。」

「!?」

レオナルドがその声に驚いて振り返ると、いつからいたのか、マルクが立っていた。

「マルクさん!?」

「じいさん!ダメだよ、黙って後ろにいたら!レオが驚いているじゃないか。」

「スマン、スマン。驚かせてしまったようだな・・・。はっはっはっ!」
「・・・。」

「大丈夫?レオナルド君?そんなにびっくりしちゃったかな?私も教えた方が良かったかしら?」

「いえ・・・。大丈夫ですから・・・。ニコルさん早く他の二人を捜しに行きませんか?」

「ん?あ、あぁ。そうだな。行くとしよう。」

レオナルドは、ニコルを伴って、そそくさと勝手口から出て行った。

「どうしたのかしら・・・。なんだか、慌てて出て行ったみたいだったけど・・・。」

「・・・。やけに感の鋭い子みたいじゃな・・・。」

リンレイの問いかけにマルクは独り言のように言い、踵を返し、また奥へと歩いて行った。

「一体、どういうことなのかしら?私にはさっぱり訳がわからないけど・・・。」

リンレイは首を傾げつつマルクのあとを付いていった。

「あ!じいさ~ん!ここまで来たのなら一つ荷物を持って行っても良いんじゃないですか~?」


一方、足早に外に出たレオナルドとニコルは、店の前を通っている第2の通りである‘ブルーストリート’を歩いていた。

「・・・・・・。」

「おい。なんか怒ってないか?」

「いえ。別に怒ってなんかいませんよ。ただ・・・。」

「ただ?」

「いきなり、後ろにマルクさんが立っていたことに驚いただけです。」

ニコルは、少し考えてレオナルドに言った。

「はは~ん。さては、さっき、俺に話したことをマルクじいさんに聞かれたと思っているんだな?なぁに、心配は無用
だ!俺達は、みんな何かを無くしたり、背負ったりしている連中ばかりなんだよ。だから、お前さんだけじゃないから、
そう心配することはないさ。かえって心配する方がおかしいってもんだな!」

その言葉を聞いたレオナルドは、立ち止まり、ニコルの方に振り返った。
「それ、本当なんですか?僕だけじゃないんですね?!・・・良かった。」

そう言って大粒の涙を流しながら思わずニコルに抱きついた。

「おいおい、さっき言ったばかりだろう?泣くのはあとだって・・・。まぁ、今回はしょうがないか・・・。でも、
今回だけだぞ!」

「グズッ・・・。はい!すみません!ニコルさん!グズッ。」

ニコルは、しばらく黙ってレオナルドをそっとしておくことにしたのだった。自分の幼い頃と重ねながら・・・。

ふと、自分に視線を感じたレオナルドは、後ろを振り返った。
20メートルくらい離れたところに一人、
立ってこちらを向いている人物がいた。どうやら、少し酔っているらしくその場でフラフラと千鳥足でいつ倒れても
おかしくないくらいだった。

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