青い空と蒼い月

青い空と蒼い月

5話



「おぉ!イルゥじゃないか!今、お前を捜しに行くところだったんだよ!クラマは一緒じゃないようだが・・・。」

イルゥと呼ばれたその男は、千鳥足でニコルとレオナルドのもとへふらふらと近付いてきた。

「なんだぁ?ヒック。見慣れねぇ小僧がいるがぁ、こいつは誰なんだいぃ?ヒック。」

イルゥは、レオナルドの近くまで歩いていき、彼の目の前まで顔を近付けて挨拶をした。当然、飲んでいる酒の臭い
がレオナルドに直撃する。
その臭いは、レオナルドが今までで嗅いだことのない強烈な臭いだった。

「うっ!」

思わず、レオナルドはその強烈な臭いに敏感に反応して、口に手をやり、近くの下水道まで走り出した。

「おい。イルゥ!子供相手にその酒臭い息を嗅がせることはないだろう!」

「ヒック。あぁ、悪かったなぁ。ニコルよぉ。ヒック。相手はまだ、小僧だもんなぁ・・・。それはそうと、その小僧
は何者なんだぁ?ニコルと一緒ということは、またあのジジイがどこからか拾ってきたのかぁ?ヒック。」

「おい、イルゥ!言葉に気を付けろよ!それから、今後は酒を控えた方が良いな。酒が入ると性格が変わるからな、
お前は。これからは、レオナルドという仲間が出来たんだ。もう少し責任というものをだな・・・。」

「わぁった!わぁったから、そこまでいうなってぇ・・・。」

そう言うと近くの下水道のところでうずくまっているレオナルドのところまでヨタヨタと歩いていった。

「悪かったなぁ、大丈夫かぁ?」

「はい・・・。なんとか・・・。」

「ま、とにかく、これから仲間になるってんだし宜しく頼まぁ。え~と、名前は何てんだっけ?」

「レオナルドです・・・。」

「あぁ、レオナルドか、ひとつ宜しくなぁ。」

「はい・・・。宜しくお願いします。イルゥさん。」

イルゥはレオナルドの背中を軽く一つ叩いて、未だに千鳥足の状態で歩き出し、ニコルにも、右肩を一つ叩いてブルー
ストリートの暗がりに消えていった。

「本当にすまないな・・・。普段は良い奴なんだが、酒が入るとああなってしまうんだ。許してやってくれ・・・。」

「はい・・・、わかりました。でも、馴れたら大丈夫だと思います。さあ、あと残るは、クラマさん・・・でしたよね?
事務所にいなかったのは・・・。頑張って捜しましょう!」

「あ、あぁ。しかし、お前はもういいのか?」

「はい。少々強烈でしたが、今はもう大丈夫です。」

「そうか。それならいいが、意外にタフなんだな。お前は。」

「僕自身も驚いています。でも、今までにいろいろありましたから・・・。さぁ、ニコルさん。クラマさんの行きそうなと
ころはどこか、わかりますか?」

「あぁ。そうさなぁ・・・。あの人は、普段行き先を言わずに出掛けて行く人だから、どこにいるか捜すとなると、一体ど
こに行ったら良いのか・・・。」

「それなら、ここの辺りを一回りをして戻りませんか?僕は、この街は初めてですし、これからお世話になるところですから
一通り見てみたいんです。」

「そうだな・・・。夜は物騒だが、俺と一緒だし、少しだけ一回りしてみるか。」

「はい。お願いします。」

二人は、すっかり暗くなってしまって、街灯がぼんやり灯るブルーストリートを歩き出した。
レオナルドとニコルの二人は、まばらだが人波が途切れることは無さそうな路地を、時々大きな身振り手振りで話している
ニコルにレオナルドは笑いながら歩いていた。

すると、どこからか、怒声が聞こえてきた。

「ど、泥棒だ~!俺の財布を盗みやがった~!誰か捕まえてくれ~!」

その周辺にいた人々は騒ぎだし、皆、自分の持ち物は取られまいと必死のようだ。
ニコルは途端にさっきまでのレオナルドに話しかけていた優しそうな顔が眉間にシワを寄せて鬼の形相に一変していた。

「レオ。少し様子を見に行ってくる。お前は、道の端に待っていてくれ。いいな。」

「はい。気を付けて下さい。」

「あぁ、わかっている。」

ニコルは、険しい顔のまま、騒いでいる場所に向かって行った。レオナルドは、その険しい形相を見て一瞬寒気がした。
それほど、ニコルはこの街で罪を犯す人間を許さないということをレオナルドは思い知らされた。

「誰か!捕まえてくれ~!」

遠くから取られた人らしい声が聞こえている。まだ犯人は逃げている様子らしい。
歩いている人達は、避けるばかりで誰も捕まえようとはしなかった。
見るに見かねたニコルは、道の真ん中に仁王
立ちし、両手を広げ、ここから一歩も通さんとばかりに犯人が通るのを待っていた。

「どけぇ~!」

前から走りながら声をあげ、道をあける様な仕草をしている男が見えた。

「うおぉぉぉ~~!どけどけぇ~~!」

その男は徐々にニコルの方へ近付いてきた。
相変わらず、声を張り上げながら走っているが、ニコルは微動だにせず、鬼の形相のままその場に立っていた。

「どけ!どけぇ~!」
「うおおぉぉぉ~!」

逃げる男とニコルの声が重なるように響いた次の瞬間、ニコルは男の走ってくる速度に合わせて身体を反転させた。
その時に、右足を前に出した。男は咄嗟のことで対応に遅れ、その右足に引っ掛かり転んでしまった。

「いってぇ~!何しやが…!?」

男は転ばせたニコルに文句を言おうとしたが、あまりの形相の為に躊躇ってしまった。


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