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Zero-Alpha/永澤 護のブログ
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【市民大学 齋藤孝氏主宰人間ゼミ 1998-1999内容紹介】
*作成責任者:永澤 護
1998.前期
1. ゼミ方針の説明 自己紹介
2. テ-マ:「笑い」
テキスト 三浦雅士「笑いにおける近代」『身体の零度』
村瀬 学 「子どもの笑いは変わったのか」
3. 坂口安吾「わが戦争に処せる工夫の数々」
テ-マ:「笑い」,状況から身を引き剥がす技
4. 坂口三千代『クラクラ日記』
テ-マ:男女の関係
5. 宮本常一『忘れられた日本人』-1「対馬にて」他
テ-マ:うたう(『動詞人間学』) 「寄り合い」
6. 宮本常一『忘れられた日本人』-2「土佐源氏」「子どもをさがす」他
テ-マ:「移動する」こと
「語りの力」,記録することの意義
かつての共同体のあり方
7. キャンベル『神話の力』「犠牲と至福」-1
テ-マ:神話と宗教の違い,死と再生
8. キャンベル『神話の力』「犠牲と至福」-2
テ-マ:「自分にとっての聖なる場所,儀礼とは何か」
9. 辺見 庸『もの食う人々』-1
10. 辺見 庸『もの食う人々』-2
テ-マ:「食べることをめぐる自分の印象的な体験ベスト3」-1
11. 辺見 庸『もの食う人々』-3
テ-マ:「食べることをめぐる自分の印象的な体験ベスト3」-1
「水とん」で盛り上がる
12.「三星堆」見学(世田谷美術館),茶話会
古代の思考 神・儀式・仮面(キャンベルとの関連)
13.前期を振り返っての自由討論
後期への希望
1998.後期
*衣食住と臍下丹田 戦後まもなくの生活など ぞうきんがけ
*阿部謹也『「世間」とは何か』 「世間」というテ-マをめぐるアンケ-ト
* 鷲田清一『じぶん・この不思議な存在』 他者の他者であるということ
自分という存在の物語の書き換え方
* 下村湖人『論語物語』 「天命を信じること」 孔子は「宗教家」ではない,「布教」を目的としていない
* 中島敦『弟子』 極めて高度なカウンセラ-としての孔子 その人を観て語る,「一般的な真理」を語るのではなく、一対一の/唯一無二な場の中で伝えていく
* 深沢七郎『楢山節考』 屋号と生のスタイル 癖の技化 人物相関図 山村の掟 歯を砕く お山へ行く作法(楢山まいり) 振舞い酒
ゼミ補講・自主研修
* 棟方志功『板極道』 一貫した変形 あこがれる力 その人の「考え」よりもその人独特の「やり方」に注目する 「この人は年中ねぶた祭りだ」
* 出会ってきた本 私に影響を与えたもの いろは歌留多
1999.前期
* 二回の自主補講の報告
* 自主研修の報告
*宮本常一『家郷の訓』 「母親の躾」「父親の躾」
流儀の伝承 しつけ 子どもの頃の遊び 通過儀礼
* 渡辺京二『逝きし世の面影』 <子ども>の誕生
*幸田文『父・こんなこと』 倫理=生の美学 ぞうきん 薪割り 自己の生のスタイルは伝統を背負っている どこで躾が切れるのか
* 青木玉『小石川の家』
* 世田谷美術館 宮本三郎展 型中心の前近代 実践中心の近代 マニュアル中心の現代
* いあい道 すり足 物と人間・過去と未来・静と動・時間と空間---の間
「型」(文化)を生かすのが「間」(生身・呼吸)
* ゲ-テ『ゲ-テ格言集』自己形成 偶然を必然として捉える
* 神話・民話の復権 同時代人・良寛
* 地水火風ゲ-ム
1999.後期
* 三つの力にまつわる経験・思い
* ジャン・グルニエ『猫のム-ル-』 自分が豊かになるための伴侶としての-----
* 藤原新也『毒蛇の伴侶』
* 人間をやめるとすれば-----
* ジンメル『重力の美学』『ヴェネチア』自分が住んでいる空間と自分との関係
『いかなる意味でも文学者ではなく』 意味が沢山含まれている瞬間 ある都市・人・本に出会うのにふさわしい時がある
*栗田勇『良寛入門』 聖にあらず俗にあらず 無心になる場の道具が人によって違う/技になっている/良寛の場合は手まり 遊びと書 書体・風貌・生のスタイル
* 世田谷パブリックシアタ-の紹介 テンションの高い状態/動と低い状態/静との往復
数を数えるゲ-ム
* 世田谷美術館 プラハ展
* 卒業レポ-トへ向けて各自のテ-マ・スタイル・素材の例を出し合う
子どもの頃のこと・家系・芭蕉・自分、他人がこの2年間どう変わったか・母・自分の物語・遊び・論語、孔子・自分の再発見
創造性:「誰かがそう言わなければ絶対私はこう言わなかった」「スタイルは意識してやっているものではない。スタイルという言葉を使うとかえってぎこちなくなる」
文章を他の何か[書・彫刻etc]に見立てること:スタイル間コミュニケ-ション
* 介護 参考文献:『黄落』『蕨野行』『父丹羽文雄 介護の日々』
『看護婦の現場から』 札幌麻生脳神経外科病院の記録ビデオ(NHKスペシャル)を観る
* 呼吸法
*参考(アマゾン「人間劇場」レビューより転載)
市民の出会いの場から生まれた贈り物, 2002/06/08
私は、本書のあとがきにある「世田谷市民大学・人間ゼミ」で1998年5月から2000年3月まで著者と共に仕事をさせていただいた。かけがえのない個人の生の<スタイル間コミュニケーション>の実践を目指す著者の、まさに今誕生しようとしている、あるいは熟成しようとしているコンセプトの数々が、市民との多様な出会いの直中で渦を巻いていた。この本には、そんな出会いの場から生まれた力が息づいている。
世田谷市民大学人間ゼミ修了レポート
1999
世田谷市民大学ゼミレポ-トに代えて
先日の木曜日に、ゼミ生の皆さんのレポ-トの読み合わせをしましたが、予想していたこととはいえ、皆さんの文章の水準の高さにあらためて驚きました。ゼミへの贈り物としてここまでの文集が生まれれば、もうなにも言うことはありません。こうした喜びとともに、最高の果実に遅れてなにかを付け加えることの間の悪さを身にしみて感じます。講師補佐として恥ずかしいことですが、私には、今頃になって皆さんの水準にふさわしいレポ-トを書き下ろす力がありません。
そこで、私と「私の実在する友人」とのメ-ルでの対話のごく一部を多少組み替えて大幅に簡略化したものを、友人の許しを得てここに書き記します。なお、友人は「日本人」ですが、このメールにおいて、私は彼をRoger[ろぢゃあ]と呼んでいます。
――私:
Dear,Roger
私が去年から詩を発表している『潮流詩派』に載せる詩を送信します。
ニッポンの食卓
冬の日の午後零時10分ちょっと前に冷蔵庫から取り出した冷凍加熱食肉製品(包装後加熱)『焼鶏丼の具 炭火焼』を無論冷凍のまま封を切らずに袋のまま熱湯の中に入れ約10分間加熱した後初めて封を切り朝食の残りご飯にかけて食べた 腹が減っていたのでかなり美味かった ふと目に入った「原産国 タイ」という文字
そう言えば次のことは私にはとてもできそうにない
私がまさにこの『焼鶏丼の具』を製造したタイの人々に出会いまさにこの『焼鶏丼の具』を上記のようにして食べたときの味が一体どのようなものだったかを伝えることがそれだ
もう随分昔からずっとそうだったように
多分2000年もこうして過ぎ去っていく
ニッポンの食卓
――Roger:我々[私と妻]共通の突っ込みとして、「私にはとてもできそうにない」内容が、それほど難しいと思えません。タイ人とコンタクトを取って、状況を説明すればいいように思えるのです。
――私:「説明」して何か伝わるものがあるでしょうか。大抵の日本人は説明する気などおよそ起こらないし、ましてや実行しないでしょうが、他方、「説明すればいい」と思えることも「日本人」らしいと言えるのではないでしょうか。
――Roger:どう感じたかを正確に伝えたいと言うなら、日本人同士でも不可能ですよね。
自分の感覚を他者と共有することはできないのですから。でも詩の中に記述された行動と食後の感想は、今なら説明して伝わると思いますよ。相手は少なくとも他国に向けて製品を作ると言う意味で、他国の文化と自国の文化の差異に関しては受入態勢が整っていると思いますから。私は詩の中で「私にはとてもできそうにない」とされている内容が、妻や私に「できそうに思える」と書きたかったのです。する気になるかどうかは別です。
「できそう」なことを「できそうもない」と食わず嫌いのように避ける方が、「触らぬ神に祟り無し」的な日本人性を感じます。そしてそれが日本人による詩であることを強く意識させる鍵となっているのだと、私は解釈していました。
――私:「説明する気などおよそ起こらないし、ましてや実行しない」を言いかえるなら、この詩のような状況下においても他の場合でも、他者への「説明」といった観念すら頭に浮かばないということです。
――Roger:これは分かりますが、詩の中で「伝えること」が話題に出ているからこそ、「説明」の観念が想起されたわけで、それなしに「説明」の話は出てこなかったと思います。
――私:そうですね。これは私の方に要因がありました。が、詩の中に登場する「私」は、日本人としてはすでに特異なタイプになっていると言えます。「伝えるとすれば」なんていう奇妙な想定をしているのですから。が、こうしたタイプを登場させたのは、観念すら浮かばない大多数の日本人を浮かび上がらせるためです。
――Roger:観念を持つ詩人は伝えることを諦めていて、持たない大多数は詩人により想起された観念に対して、「そんなの説明すればいい」と、自分ではしないくせに勝手に片付ける、という理解で合っていますか。詩では「伝えること」が「私にとてもできそうもない」内容ですよね。「そうだよなぁ。タイの一介の労働者に、日本人が焼鳥丼で得た感動なんか伝わらないだろうなぁ」と試しもしないで共感する方が、よっぽど「非常に日本人らしい」と私には思えます。少なくとも私は具体的な方法論まで踏み込んだ上で、「説明できる」と思いました。まず可能な限り、自分の得た感覚を英語で表現し、現場まで届けます。英語の分かるタイ人が、現場の作業員に解説すればいいのです。
――私:そんなふうに「具体的な方法論まで踏み込んだ上で」考え、表明さえするRogerは日本人としては特異過ぎて、まったく例外だという見解はどうでしょうか。
――Roger:ぶゎっはっは。一本取られました。「触らぬ神に祟り無し」が日本人であれば、詩人に対して突っ込みを入れている時点で、私自らを自分でくくった日本人の枠から追い出してしまっていますね。
――私:「単なるこの詩の読者」という状況下で、しかも「説明すればいいじゃない」と思う人は(例えばここ13年ほどにおいて)「日本人らしい」と言う感じがします。偏見ですが。外資系職員とか大企業の海外派遣組に多いのかもしれません。Rogerのようにそれなりにリアルな場数を踏んでいる人もいるでしょうが、「国際化時代」における「説明責任」を観念として受動的に意識しているだけかも知れません。
――Roger:ところで、詩の中にはタイ人の視点がありませんから、ナガさんのいう「自己」と「日本人」の差異化は成されていません。しかもタイ人の視点は想像でしか持ち込めませんから、そういった差異化は単なる詩人の空想でしかありません。
――私:「想像・空想」以外で持ちこむのは例えばルポライタ-・ジャ-ナリストの仕事・義務です。「タイ人の視点」がないのは、そこが狙いです。それこそが「ニッポンの食卓」ですから。上記の文章は詩一般に対する批判ですか?
――Roger:詩一般に対する批判ではありません。詩人に空想の持ち込みを禁じようとは当然思いません。「その差異化による自己の二重化は、ナガさんが空想で楽しむ内容ですね」という意味で、「私に同意を求める内容ではありませんよ」と言いたかったのです。
私の妻は、日本が貧国の労働力を搾取している例として捉えていました。内容は額面通りに受け取ったようです。つまり「ああそうでしたか。そう思いますか」ということですね。素直に読めばその通りですよね。
――私:「南北問題」との接点を意識したことは事実ですが、もちろんどのように読んでもいいのです。何か感じ考えてもらえば。
――Roger:私が感じたのは食物に限らず、作り手とそれを消費する者の間に大きな隔たりがある象徴的な例だと思いました。実際、製造者である現場のタイ人は、作っているものが日本人に食されるとは意識していないのではありませんか。輸出用とは分かっていても。しかし、明らかに自国流とは異なる味付けのものでビジネスが成り立つことを認識しているということは、彼らにとって製品が全くおいしくなくても、それをおいしいと感じる世界があることを知っていると言うことになりますから、日本人がタイ人に、「焼鳥丼の素がおいしかった」と言えば、「なるほど、それでビジネスが成り立つのか」と理解する可能性があると言う意味で、「受入態勢が整っている」と書きました。
――私:これは、経営者側の感覚ですね。私がテ-マ化した現場の末端労働者に、こういったクリアな感覚があるでしょうか。無論、なければないでちょっと奇妙な感じではありますが。
――Roger:私の意図したのは末端の労働者でした。現実に味付けを行う工程を担当しているタイ人が、その奇妙な味付けをすることで給料をもらえることを認識している、と捉えたのです。経営者は日本人とタイアップしている意識がありますから、味付けうんぬん以前にビジネスが成立することが分かっています。
我々は作者と知人であるという恵まれた状況にあるので、作者が何を意図して、あるいはどういった衝動からこの詩を作り上げたのか、訊いてみたいと思っています。
――私:さしあたりは先立つ意図・衝動は何もない状態で、ふと思いついた日常の素材で
書いただけのものです。
――Roger:ふと思いつくことを衝動というのではありませんか。意図も衝動も無く創作が行われることはないでしょう。もちろん衝動には大小があるでしょうけど。
――私:定義によりますね。詩作にとってはあまり意味がありませんが。少なくても今回の場合、例えばフロイトによって発見(あるいは創作)された「無意識」によって「意図や衝動」を解釈してもあまり生産的ではありません。言いましたように「予め意識した意図や衝動」はなかったわけですが。「狙い」と書いたのは「書き終わった後に意識化されたもの」です。
――Roger:それは潜在意識により創作せしめられたと解釈すればいいような気がします。なんとはなしに書いてみた結果、実は引っ掛かりを感じていた内容が表現されていたと。
――私:ええ、そうですね。コメントに感謝します。
以上、こんなおかしな詩を酒の肴にする私たちのような人も中にはいるのだなという実例の一部をご紹介いたしました。もっとも、私も友人も初めての経験だったのですが――
最後に、私が3歳から小学校2年一杯まで住んでいた福岡市の記憶を素材にした詩を添えて、私の修了レポ-トに代えさせて頂きます。ゼミ生の皆さん、齋藤先生、そして市民大学のスタッフの方々への思いは言葉では表現しきれないものがあります。皆さんと出会ったときから変わらず、今もただ、「ありがとうございました」としか言えません。この出会いは、まさに私に生きる希望と喜びをもたらす泉であり続けたからです。そしてこれからもずっと。ですから、この「ありがとう」は、言葉を超えた言葉なのでしょう。
あの街にもう一度出逢いたい
もう三十年以上も前のこと
夕暮れ時になるといつも
角の駄菓子屋で僕は牛乳を一気飲みした
街で初めてのス─パ─ができた
駄菓子屋もス─パ─も楽しかった
でもいつしか
駄菓子屋だけがどこかへいってしまった
怪獣のカ─ドが
毎日毎日増え続けていった
TVもどんどん面白くなる
ウルトラマンやウルトラセブン
何とか怪獣や**星人たちがやってくる街
それは まぎれもなくこの僕の街なのだった
いま俺は確かめたい
あの街が一体いつどこにあったのか
お前は一体誰だったのか
俺は今気づいた
そこには何もかもがあったんだが
それがいつかみな消えたとき
俺たちはまたお前を求めたのだと
俺はあの街にもう一度出逢いたい
夢とうつつの狭間で
この俺を引き裂いた何か
それをこの眼で発見するために
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