『……仕込みの道徳と飼い慣らしの道徳とは、自らを貫徹する手段においては、完 全に互角である。我々がここで最上の命題として立て得るのは、道徳を作るには、そ の正反対につく絶対の意志を持たねばならないということである。これは私が最も永 い間にわたって追求してきた大きな問題、不気味な (u n h e i m l i c h e)問題で ある。即ち、人類の「改善者“Verbesserer”」たちの心理学だ。(……)マヌも、 プラトンも、孔子も、ユダヤ教やキリスト教の教師たちも、かつて彼らの嘘をつく権 利を疑ったことはなかった。彼らは、全く別の権利に疑いをかけたことがないのだ… …この事情は次のような公式で表現できよう。これまでそれによって人類を道徳的に しようと図った全ての手段は根底から(von Grund aus) 不道徳なものであった、と』 (ニ-チェ『偶像の黄昏』「人類の“改善者”たち」最終節[DTV版1980.で 102ペ-ジ]強調は原文による)