第08話-2



・・ラグランジュポイント・・重力と引力の境界線に浮かぶ衛星港・タケトンボ

その横に、タケトンボの3倍はあるS.Gの大型ユニバース・ドライバーが横付けされているのが見えた


「・・何でしょうね、アレ?」

「何もアレも・・S.Gの大型母艦だろ?決戦目的で作られたとか言う・・」

「何十機もギア積んで突っ込んでいくだけの戦艦ですか・・特攻目的にも思えますね」


それはともあれ、これから行く所の話なのだから着いてから聞いてみればいいだろう

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「およ」

「あ、スタン君」


ちょっと難しい顔をして、レオネや別隊のメンバーと難しい話をしているリィズがいた

ロディに気が付くと軽く駆けて、こっちに向かってくる


「どうしたんだよ、あんなでっけーの用意して・・?」

「新しい実験機の受け渡しよ・・ちょっと一般UDで運ぶには大きすぎるから、大がかりになってるだけでね」

「でもたいちょ~・・「ワーズ・キャリア」なんて、こういう時でもなけりゃ使いませんよぉ」


レオネが言うのは、外の大型ユニバース・ドライバーの正式名称らしい


「ようやく私の乗機が来たの、全長30メートルの大型ギア・・」

「・・おい、S.Gはいつから大艦巨砲主義になったんだ?」

「平和のためよ、平和のため」


リィズが思いっきり嬉しそうに笑っている所を見ると、どうも彼女のリクエストが反映された機体らしいという事は想像がついた


「時間が逆行した話・・つーか、今時間が逆行しちまったってのは知ってるよな?」

「ええ・・実験機を受け取ったら私達も遺跡の調査に向かう予定だったんだけど」

「やっぱりロストテクノロジィが関わってそうだな、これは」

「空白の10日間もそうだって言われてましたからねぇ・・・(汗)」


ロディ、リィズ、ネスはいきなり悩むが・・

考えてもしょうがないという事で、それぞれの行動に戻る事にした


「それじゃ・・またその「ギア」機会があれば見せてくれよ」

「了解♪」


リィズはまた、レオネと別隊との会話に戻る


「・・さて、俺たちもとっとと仕事に行くか」

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・・そのころ・・


地上では、ユニオンリバー社をサクラが訪れていた


「どーやったぁ?詩亞ちょん、頼りがいのありそーなT.Cだったでしょ~」

「は、はい・・・ていうか・・あなたはどなたです・・か????」

「あ、ごめんごめん」


サクラは眼鏡を外し、コートを着替えて髪をほどいた(この間約10秒)

(日本で詩亞と会った時、サクラはこっちの姿だったらしい)


「では改めて・・どうです?確かに私の言った通りの方々だったでしょう?」

「・・・」


その変わり様を目にして、詩亞の眼鏡がずり落ちた


「・・詩亞はん、驚くのはよう分かるがな・・みんなこういう感じやで、ここの人」

「・・かく言うシード、君は恐竜じゃないか?」

「おお、こりゃシュウに一本とられたわ(笑)」

「・・・・」


詩亞はがくん、と首を落とした


「・・とりあえず私達も、それなりに探してみましょう」

「そうですね、姉さんが持ってきた「遺跡」の一部を解析すれば・・」


サクラがここにをれを持って来た理由は二つ

一つは、シュウがいて、彼が作った専用の設備が事務所の地下にあること

もう一つは・・


「私のメモリーですな」

「そう、遺跡のガーディアンだったガンマくんを調べれば・・」

「何が起きているか分かるかもしれない、と?」

「それなりには・・ね」


いずれゆっくり調べさせてもらうつもりのシュウだったが、こうなってしまっては急ぎ解明する必要があると考えたのだ


「じゃ、僕たちは地下にいます」

「なにかありましたら、直接いらしてくださいませ」


・・ぱたん


二人はガンマと遺跡の一部を持って、とっとと事務所を出て行ってしまった

部屋に残されたのはシードと詩亞の二人だけ


「・・どうしましょうか」

「とりあえず座ってぇな、パンしかないけど持ってくるわ」

「あ、お気遣いなく・・」


二人は特にする事もないので、黙々とお茶会をすることになった(汗)

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・・メインターミナル・・

昨日のオーロラの一件も終わり、時間が逆行してしまったという新たな混乱もあったものの・・ここは平和だった

ニュースに出ないということは、別に宇宙のあちこちでもこういう光景なのだろうが


メイとセラはここで、買い物を楽しんでいた


「お姉ちゃん・・大量に持ってきて・・・それは何?」

「うんとね~・・小麦粉とチョコレートとタマゴとバニラビーンズと・・」

「あ、お菓子の材料なんだね?・・でも、どうして現物じゃなくて、 「材料」 を・・?」

メイの性格からすると、どうも手当たり次第にお菓子を買い込んできそうな気もするのだが


「うん、帰ってからボクが作るんだよ~」

「え゛?」


セラは狐につままれたような顔をして、しばらく硬直してしまう

・・お姉ちゃんが・・お菓子作り・・???


※この間に想像・・果てしない「破壊」と「芸術」の想像が行われました


このハッピーな言動からするに、どうもマシな物ができるとは思えない


「・・大丈夫なの、お姉ちゃん?」

「うん、ボクねぇ、じーちゃんにいっぱい作って、いっぱい食べてもらったんだよ♪」


・・お疲れ様でした、アルザードさん・・(汗)


こっそり心の中で、亡きメイの祖父に向けて敬意を表すセラ

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事務所に戻ってきたメイとセラは、2階に上がるとお茶会をやっている詩亞、シードをスルーしてキッチンに向かう

・・簡素なものだが、料理するには不足のスペースではない

セラは材料を渡すと、心配そうにメイの調理を見守った


・・そして、目を疑った


タマゴを混ぜるタイミング、ほどよい量の材料の混入比、隠し味に入れる斬新なアイデア

まるで一流パティシエのクッキング講座を見るような、そんな驚きがあった


「お・・お姉ちゃんすごいっ!!」

「えへへ~・・そう?」


と言いながらスポンジを焼き上げ、クリームを塗って・・あっという間にショコラケーキを仕上げてしまったメイ

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「美味しい」

「うまい」

「・・・・・(言葉もない)」


その味は、食べた三人が言葉で実証した

詩亞に至っては食べながら泣いている始末である


「スポンジの食感も去ることながら、隠し味に仕込まれたこのバニラとゼリーの微妙な味のハーモニーが・・」


以下略。


「ホントに美味しいね、お姉ちゃんってこんな凄い特技があったんだ・・」

「んとね、じーちゃん家のメイドさんに習ったんだけど・・その人より上手くなっちゃって(汗)」

「才能やん、こーんな美味けりゃ立派にパティシエやれるで、メイはん」

「・・・ ただ ね」


メイはそれまでの誉められて有頂天・・な表情から一変、暗く影を落としてつぶやいた


「なんか、美味しいんだけど・・食べた後に必ず「悪いこと」が起きるんだって。」


・・メイは語りを暗くして、苦笑いをしている


「なんでだろ~?」

「なんでだろって・・・そんなモンワイらに食わせたんか、あんさんは?」

「そんなモンって言ってもさ・・美味しいでしょ?」

「い、いや・・美味しいのはええ事やケド・・・いくらなんでも(汗)」

「どういう悪いことが起きたの、今まで食べた人には?」


詩亞は自分の世界に陶酔していて、三人の会話など聞いていない(まだ解説中)


「え~とねぇ・・じーちゃんの知り合いが食べた時は、転んで膝すりむいて・・」

「・・軽傷ならええやん」

「隣で飼ってた犬が食べた時は、その翌日にその家が爆発して・・」


がたんっ!!


シードがよろけ、テーブルが揺れる

段々セラの顔が青くなっていく


「ンで、じーちゃんが最後に食べたのがボクのケーキだったんだけど・・・」

「・・・亡くなったんやな、翌日」

「うん」


シードが真っ白になった

セラも冷や汗に似た汗を流している


「・・だ、大丈夫だよ~・・きっと悪いことなんて・・」


メイは気楽に言ってくれたが、その言葉は決して信用ならなかった

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「・・以上が、システムの概要です」


所変わって、再びロディとネス。

二人は各地を転々として、「遺跡」の科学者や研究員達から情報を集めていた

オーロラの発生後、通信途絶になってしまった場所がいくらかあるという話もあったので・・地道に当たっていた

ロディは普段なら 「こんなちまちました仕事やってられっかぁ~!!」

とか言いそうだが、今回はフィアの事もある、本気で望んでいた


「マスター、お母様の情報は一向に見つかりませんね・・」

「ああ・・そだな」


どうも、上の空の様子のロディ・・・ようやく彼も疲れてきているらしい

いつも本気で望まない仕事に、いきなりとっかかっているのだから疲労がたまるのも当然か・・


「母さんが消えた遺跡、確か木星だったよな?」

「ええ・・確かフォボスとエウロパの間にあったはずですが・・」

「・・行ってみよう」


このときすでに日付は変わろうとしていて・・9年前の、二日目が始まった

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