青き天体研究所

青き天体研究所

第二十二話  インターミッション



「応っ!!」

レーツェルは参式を抜け出しタウゼンフォスラーへ向かう。

タウゼンフォスラーに着いたレーツェルはすぐに格納庫に向かう。

「レーツェルさんですか?」

「確かラトゥーニだったかな。君の事情は知っているよ。」

「・・・・・・その話は言わないで下さい。それよりセインさんから依頼された物を受け取って下さい。」

ラトゥーニはレーツェルを格納庫のある一角に連れて行く。

「これは・・・・・・」

「はい。あなたの新しい機体です。」

そこにあった物。それは黒く塗られたヒュッケバインだった。

肩には謎の紋章が刻まれている。

「この機体はヒュッケバインMk-3です。ブリットさんでしたっけ。彼のデータを参考に改良された物です。」

「・・・・・・」

「テスラドライブ装着していますので飛行も可能となっています。」

レーツェルはヒュッケバインMk-3を見上げる。

黒く塗られた機体は自分の愛馬のように凛々しく、そして気高くも感じた。

「トロンベよ。再び私に力を貸してくれないか。」

Mk-3は答えるように光輝いていた。

「ハァァァァ!斬艦刀・一文字斬り!」

巨大化した斬艦刀は複数のゲシュペンストを巻き込む。

だが数が多く、対応しきれないでいた。

「・・・・・・。」

ゼンガーはこの状況に顔が歪む。

量産型ヒュッケバインが一斉にライフルを参式に向ける。

もはやここまでかと思ったその時!

「友よ!諦めるな!!」

その声と共に黒い何かが量産型ヒュッケバインを破壊していった。

その様子はまさに竜巻のようであった。

「レーツェル、その機体は。」

「フッ。新たなトロンベの力、見るが良い!!」

レーツェルが言うトロンベは再び物凄いスピードでゲシュペンストを破壊していく。

その様子を見ていたゼンガーは負けじと斬艦刀を振るった。

インスペクター戦線を勝ち抜いた二人が揃った時、もはやゲシュペンストや量産型ヒュッケバインでは歯が立たなかった。

数分後、敵機は全滅しクロガネを待つだけとなっていた。










クロガネが到着し参式とMk-3トロンベはR-1、タウゼンフォスラー、破損したビルトラプターを回収した。

ファントムとの対戦の結果を知ってのことか、リュウセイを心配し何人かは出迎えにきた。

「大丈夫か!?リュウセイ!!」

「ヘッ!大丈夫に決まってるだろう・・・」

そう言いつつリュウセイは前に倒れ込んだ。

セインがすぐに気付き、リュウセイを支える。

「無茶するな。かなり疲労が溜まっているはずだ。」

「やっぱ・・・お前にはバレちまうな・・・。アリガトな。」

セインにそう言った後、その場で気絶してしまった。

「アリガト・・・か。こんなにボロボロにして礼を言われるとはな・・・。」

そう言うセインの顔は少しばかし安堵に満ちていた。













「ラトゥーニです。よろしくお願いします。」

やる事を一段落させ、セイン達は新しく入って来たラトゥーニの紹介をしていた。


「好きな人はいる?」「何でそんなに操縦が上手なの?」等、学校の転校生に色々聞くようなノリでラトゥーニに質問していく。

その様子を見ていたテツヤはア然とするしかなかった。

主役であるラトゥーニもただ混乱するしかなかった。

それを聞いていたセインの肩が徐々に震え始め、ついに・・・。

「静かにしやがれ!ガキでもねぇのにペチャクチャペチャクチャ話やがって!!」

「セ、セインさん?少し落ち着い・・・」

「黙れ!少しは人の・・・」

セインが説教を始めようとした時、強烈な痛みが走った。

セインはたまらず膝をついてしまう。

「どうしたんだ!?セイン!!」

「何でも・・・ない・・・。」

「何言っている!?顔色が・・・」

「良いから!!気にするな・・・」

そう言い残して自室に向かってしまった。








少しばかしアクシデントがあったもののラトゥーニの自己紹介も終え、全員テンザンの乗っていた機体についての検証が言われた。

「ミラージュシステム?何だそれは・・・」

「戦ったことのあるリュウセイは分かると思うが、このシステムはその名の通り視覚からレーダーまでを無効化する事ができる。」

「つまり完全に消えてしまうって事ですか?」

「正確には物質はあるが見る事が出来なくなるんだ。まぁ消えるのと同義だがな。」

「そうですか・・・」

「・・・・・・そしてミラージュシステムは現在マオ社で作られている為存在しないはずの物なんだ。」

その言葉に一同衝撃が走った。

無いはずの物が存在している事の不気味さにただ震えることしか出来なかった。

「つまり何者かがそのデータを盗んだか、あるいは・・・。」

「元々存在してたかのどちらかという訳ね。」

重々しい空気の中、キョウスケとエクセレンが話をまとめた。

全員ただ首を縦に降ることしか出来なかった。

ただ一人、リュウセイを除いて・・・・・・。








クロガネのメカニック達はビルトラプターの修復作業を始めた。

誰かがこうなる事を予測していたかのように予備のパーツを積んでいたのである。

少しでも戦力を増やす為とはいえ、ここまで用意周到だと不気味な感じもする。

その様子を見ていたイリスはふとあるものに目が行った。

修復中のビルトラプターの横にある、骨組み状態の機体を。

疑問に思ったのか、イリスはそばに近寄ろうとした。その時・・・。

「それに近づくな!!」

突然叫ばれ身構えるイリスをよそに龍虎王の影から現れてきた。

「なんてな♪俺も気にはなっていたんだよね、この機体。」

その影から現れたのはマサキであった。

どうやらサイバスターの調整に来たらしく、今はシロとクロに任せているらしく暇をもてあましていた様だ。

「確か・・・マサキでしたっけ。どう思いますか、この機体。」

「まだ出来てねぇからわからねぇけどこの段階でもかなりいい機体だと思うぜ。何処と無く魔装機に似てるしな。」

「魔装機?サイバスターとは違うのか?」

「ああ、サイバスターは高位精霊が宿ってるんだ。それ故に選ばれた者しかしか使えないんだけどな。」

マサキは嬉しそうに話す。

そうやら自分の乗っている機体の自慢が出来る事がとても嬉しいようである。

そこに調整が終わったのかシロとクロがサイバスターから降りてきた。

「何とか調整終わったニャ。」

「ご苦労だったな。で原因は分かったか?」

「それが全く分からニャいのニャ。」

「そうそう。簡単ニャ調整で済むんニャけどニャ」

「何かあったのか?しょっちゅう調整してるようだが・・・。」

シロとクロはやっとイリスの存在に気付き話し始める。

「イリスニャか。実は最近何もしてニャいのにサイバスターの出力が上がる事があるのニャ。」

「何もしてないのに?壊れたんじゃないのか?」

「そんニャ事ニャいニャ!簡単な調整ニャけで直るんニャから。」

そう言って再びサイバスターを見上げた。

精霊が宿っているからなのかまるでこっちを見ているようであった。

「そうか・・・。私はクロとシロを信じるから安心しろ。」

「「ありがとニャ♪」」

「俺は違うのかよ・・・。」

その会話を聞いていたマサキがすねた様に言っていたのには気になっていたが、セインの事が心配でうわの空であった。









夜も更け、全員が眠りに入った頃エクセレンは一人のお酒を飲んでいた。

今もなお働いているメカニックの事を考えてのことであろうが、何だがつまんそうであった。

そこに一人、エクセレンの部屋に入ってきた。

「エクセレン。起きているか・・・。」

「キョウスケ!?どうしたの、こんな夜中に!!」

「まぁな。それより頼みがあるんだが・・・。」

キョウスケはそう言って近くにあった缶ビールを開ける。

その様子を見ていたエクセレンはただ呆然と見ている。

キョウスケが自分の部屋に来る事が珍しい事なので反応が少し遅れてしまったようだ。

「な、何!?頼みって・・・。」

「セインとフィスについて調べて欲しい。あの症状もそうだが、あの兄弟には何かあると思うんだ。」

「確かに何かあると思うけど・・・。何で私なの?」

「お前の事を一番信用してるからだ。悪いか?」

それを聞いたエクセレンは開いた口が塞がらなかった。

キョウスケにそんな事を言われるとは思っていなかったので驚きを隠せないのである。

しかも、そのキョウスケは恥ずかしげも無く言った為こっちの方が恥ずかしくなっていく。

その事だけで頭の中がパンクしそうになり、落ち着こうと深呼吸をする。

落ち着いたところでエクセレンは話し始める。

「・・・・・・分かったわ。そこまで言われちゃやらなくちゃね。女は義理堅くなくちゃ♪」

「頼むぞ。俺の方も少しは調べとくから・・・。」

そう言ってキョウスケは部屋から出て行った。

エクセレンの部屋の中で何やら歓声の声が聞こえた事だけが気になっていたが・・・。

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