青き天体研究所

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第二十六話  雛鳥が飛ぶ時(後編)



「クソ!いい加減、遊び感覚で戦争してんじゃねぇよ・・・。」

少しずつ追い詰められていくR-1。

そしてファントムは止めを刺すべく、ミラージュシステムを発動させる。

不可視モードとなったファントムを捕らえる事の出来ないR-1はその連続攻撃を全部食らってしまった。

R-1はその損傷により、一時的に動きが止まってしまった。

その機会を逃さず、ファントムはコックピット目掛けてロシュセイバーをを振るった。

『これで・・・しまいだ!!』

「クッ!?」

もうダメだと思い、目を瞑るリュウセイ。



刹那―――――



突然、ファントムの持っていたロシュセイバーとそれを持っていた左腕が破壊された。

何が起こったのかわからないテンザンは身動きを取る事が出来なかった。

『誰だ、何処にいる!?』

【ここに居るだろう。・・・・・・お前の後ろに。】

その言葉を聞いてファントムは振り返る。

そこには今まで居なかった筈の機体が悠然とした姿で立っていた。

その姿はスレイヤーと酷似ており、唯一違う点はバックパックに付いた謎のウイングと武装である。

【大丈夫だったか、リュウセイ。後は私に任せてくれないか?】

「!! その声はイリスか!?その機体は一体・・・。」

【話は後!雛鳥があの戦艦のほうに向かっている。そっちを手伝ってくれ。】

「雛鳥・・・。分かった、ここは任せるぞ!!」

そう言い終わるとR-1はすぐさま敵艦へと向かう。

『させるかよ!!テメェは俺が・・・。』

「させない!!」

そう言ってロングコートナイフを取り出し、ファントムへと突撃する。

そのスピードはアルトアイゼン同等、それ以上の早さであったため、避けきる事が出来ず右腕を完全に破壊した。

「私の・・・この子の速さについて来れるのかな?」

『この・・・クソ雑魚が!!』

そう言ってファントムはミラージュシステムを起動させ、何もさせずに倒そうとする。

だがイリスの機体はその動きが分かるかのように回避、反撃する。

『な!どう言う事だ!?何故俺の位置が・・・!!』

「残念だがお前のミラージュシステムは完璧に解析された。それに・・・。」

イリスが言い終わる前に機体の姿が段々消えていく。

「もう、ミラージュシステムは古い!!」

消えた機体は何も捕捉される事無く、ファントムに攻撃を仕掛ける。

ミラージュシステムでも捕捉出来ない機能に何もする事無く四肢を破壊された。

『何故だ?何故・・・!?』

「プロトファントムの機能の前にはお前のミラージュシステムなぞ、玩具同然!」

そう言い終わるとクロガネの防衛に向かった。














『敵機が接近中。数は1、いや2!敵機の判別結果不明です!!』

『来たみたいだ。私の最高傑作が・・・。』

その言葉通り、戦艦の前に一機のパーソナルトルーパーが現れた。

ヒュッケバインMk-2に似た機体であったが、各部分が異なっており色も深い青から薄い紫色に変わっていた。

『久しいな、ラトゥーニ11。私の元に返ってきたのか?』

「・・・あなたを討ちに。私の過去を清算するために。」

『そうか・・・。だが貴様には出来ない筈だ。貴様には私に対する恐怖がトラウマとなっているのだからな。』

「・・・・・・・・」

アギラの言うとおり、ラトゥーニの手はずっと震えっぱなしだあった。

自分の意思では討とうとしているものの、体の方が拒否し続けている。

その葛藤によって動きが止まってしまう。

『安心しろ。私の下に来ないならすぐに楽にしてあげるから・・・。』

そう言って敵艦の主砲がMk-2カスタムに向かって発射された。

Mk-2カスタムはその事に気付き反応するものの、回避には到底間に合わなかった。

【ラトゥーニ!そこをどけぇぇぇぇ!!】

「!!!」

その言葉に言うとおりにすると、R-1がその主砲に向かって突っ込んでいく。

【あの弾丸を打ち砕け!!T-Linkナッコォォォォ!!】

R-1の右手にエネルギーが集束し、主砲に向かって殴り始めた。

ぶつかり合うエネルギーとエネルギー。そして見事勝利したのは・・・・。

【ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・。】

「リュウセイさん!?大丈夫なんですか・・・。」

「何とかな・・・。」

R-1の右腕は破損しているものの、機体その物は無事だったらしい。

リュウセイはすぐに通常回線に切り替えて話し始める。

「やっと見つけたぜ。テメェをぶっ殺す!!」

『あの時私に反論した愚か者か。私を殺した所でラトゥーニ11のトラウマは治るわけではあるまい。』

「・・・・・・・・・。」

その言葉を反論する気力の無いラトゥーニ。その様子を気にも留めずにリュウセイは話し続けた。

「トラウマなんて俺たちが治してやれば良い!弱いところがあればそれを補っていけば良い!仲間とはそんなものなんだ!!」

「!!!!!!!」

「俺は人間として、大切な仲間として貴様の言ったことが許せねぇ!!だから俺はラトゥーニを助けに来たんだ!!」

『これだから弱い者は・・・。互いに傷を舐め合い、仲良しごっこ。詰まらん理屈だ。』

アギラはリュウセイが言った事を鼻で笑い始める。

そのことを反論すべくリュウセイが言おうとしたその時。

「そんな事無い!リュウセイは私の為にいろいろな事をしてくれた。」

「ラトゥーニ・・・・。」

ラトゥーニの言葉にただ驚くことしか出来なかったリュウセイとアギラ。

そんな事知らずにラトゥーニは話し続ける。

「何も言おうとしなかった私の事を親切にしてくれた。私が諦めかけた時、励ましてくれた。だから私はリュウセイを馬鹿にしたあなたを許せない。」

『たかが作品如きが!私に反論するなど・・・!!』

「仲間の素晴らしさを馬鹿にしたあなたを許せない!!だから私は・・・あなたを討ちます。私が進む為に!!」

ラトゥーニの意思に同意するかのようにR-1のT-Linkシステムが反応した。

破損した筈の右腕と左腕にエネルギーが集束されていく。

「何でR-1が・・・・。」

「お前の気持ちが伝わったんだろ、この機体にも。済まないが手を貸してくれないか?」

「・・・・・・うん。」

そう言ってMk-2カスタムは破損した右腕を持ち上げた。

持ち上げられた右腕と左腕に集束されたエネルギーが剣の形になっていく。

『何なんだ!?それは・・・!』

「これがラトゥーニの・・・仲間の力だ!食らいやがれ!!」

そう言ってその剣が敵艦目掛けて発射された。

敵艦はなす術も無く、その剣に直撃してしまう。

『認めない・・・私は認めない!!』

「認めなくても構わない・・・・。でも私の中から消えて!!」

そう叫ぶと敵艦は爆発を起こし、跡形も無く吹き飛んでしまった。

「これでやっと前に進める・・・。」

そう呟いて、ラトゥーニは気絶してしまった。











気が付くとそこは医療室だった。

真っ白なベットに寝かされており、自分自身何があったか分からなくなってしまう。

「ラトゥーニ、気が付きましたか?」

「フィリアス、さん・・・?何故・・・・・。」

「フィスで結構ですよ。あなたはあの戦闘の後、気絶してしまったんです。すぐにクロガネに帰還し精密検査をしましたけど大丈夫でしたよ。」

「そうですか・・・。フィスさんは知っているんですよね、私が乗れなかった本当の理由を・・・。」

「・・・ええ。」

ラトゥーニの質問に静かに答えるフィス。フィスの顔は渋い顔をしている。

「私達を助けてくれたオウカ姉様を犠牲にしてしまった。私はそれが許せなかったんです。」

「・・・・・・・・。」

「でも私は逃げてばかしだった。アラドやゼオラは戦おうとしていたのに・・・。」

「ラトゥーニ・・・・・。」

「でもリュウセイさんの言ってた事、仲間の大切さが分かったような気がするんです。そして信じる事も・・・。」

辛い事があった時、逃げ出そうとするのは人間として当然の事。

それに立ち向かう事の出来る人なんて数少ない筈なのだ。

今、ラトゥーニはそれに立ち向かおうとしていた。

「だから私は信じます。オウカ姉様が生きている事を。そのために私は戦い続けようと思います。」

「本当に後悔はしないんですか?」

「うん。それに私は一人じゃない。リュウセイやみんながいます。だから―――」

フィスは溜息をつき、医療室から出て行こうとする。

「なら大丈夫ですね。・・・あなたの過去を皆さんに話すことはあなたに任せます。そんな事を話さなくても信じていると思いますけど・・・。」

そう言ってフィスは出て行ってしまった。

「ありがとうございます。フィス・・・セイン・・・リュウセイ・・・。」

そう呟いた後、再び眠りに落ちてしまった。

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