青き天体研究所

青き天体研究所

第三十三話  木星からの帰還者



とある研究所前には多数のゲシュペンストが回りを囲み、研究所を破壊している。

バリアのお陰で何とかこの場を保っているものの、破られるのも時間の問題となっている。

「慌てるな!兎に角、機体に乗るんだ!!」

「分かった!!」

父親がそう指示し、その指示通りに動く。

その間も激しい揺れが彼らを襲う。

格納庫と思われる場所に着くと、そこには二体の機体が置いてあった。

一つはパーソナルトルーパーより一回り大きく、グランゾンと同じ位の威圧感を感じる。

もう一つは女性らしいフォルムをしており、全体的に可愛いイメージがある。

彼らはそれぞれの機体に乗り込み、女性の形をした機体から高エネルギーを発した。

その高エネルギーは研究所全体を包み込み、辺りにいたゲシュペンストを一掃する。

「よし、これで・・・」

「行くぞ!第二波が来るかもしれん。」

「分かってるよ、親父。」

各機体の通信が終わり、その二体は外へ出ていく。

辺りには残骸となったゲシュペンストのみが残り、静けさを保っていた。

親父と呼ばれている男は残骸のゲシュペンストを調べ、確認を取る。

(やはり、これは・・・。)

「どうしたんだ、親父?」

「今から地球に戻るぞ。」

「エッ・・・?」

「タウゼンフォスラーで大気圏を突入するぞ。準備するんだ。」

「だから、どうして!?」

「・・・・・・・・・」

しばし無言が続き、タウゼンフォスラーで大気圏を突入した。

「チッ!」

「何・・・この数?」

宇宙空間に着くと、無数のゲシュペンストとガーリオンがタウゼンフォスラーの周りを囲み、銃口を向けていたのである。

一先ず自分の機体に乗り込み、タウゼンフォスラーから外へ出る。

出た所で無数の敵に勝てる筈も無い事を察しながら、ゲシュペンスト達に対峙する。

「どうする・・・いっその事降参する?」

「馬鹿な事を・・・。」

しかしそれ以外に方法は無いと見える。

だが、男にとってそれだけは何とか防ぎたい事だった。

せめて彼女だけでも・・・。

(これしかないか・・・)

男は何かを決意し、女性型の機体に通信をかける。

「今から道を開く。その隙にここから脱出し、地球に向かうんだ。」

「な!そんな事出来る訳・・・」

「私が何とかする。だから早く!」

「親父はどうするんだよ!」

「ここで足止めをする。」

その言葉を聞き、そのパイロットは愕然とする。

二人で戦っても生き残る可能性が低いのに、自分を逃がし一人で戦う事は自殺行為と言えるからだ。

「そんなの絶対に認めない!」

「認めなくても良い。だが、これしか方法が見つからん。」

「でも親父が死んじゃうじゃないか!?」

「想い継ぐ者あれば私は死なん。大丈夫、必ず生きて帰る。」

もちろん生き残る可能性が皆無なのは明白なのである。

だが、今までこの男は嘘をついた事は無い事を知っている。

微かに生き残る可能性を信じ、返事を返す。

「・・・わかったよ。ただし、ちゃんと生きて帰ってよ。」

「・・・・・・・・・。」

男の機体は手にエネルギーを収束し、そのエネルギーを発する。

そのエネルギーは真っ直ぐ進んで行き、その直線上の敵機を破壊していく。

道が出来た事を確認すると、女性型の機体はその道を進んで行き、その場を脱出した。

(頼んだぞ、娘よ。)

その様子を見送った男の機体はすぐに振り返る。

「・・・ここから先は通さん!!」

その掛け声と共に戦闘が開始した。











「大気圏突破角度確認。誤差0.01まで補正。」

「クロガネの出力値固定。・・・艦長!」

「クロガネ発進!各員衝撃に備えろ!!」

テツヤの掛け声と同時にクロガネは飛翔していく。入射角がきつくなり、どんどん加速していく。

外部からかなりのGがかかるが宇宙航行も考えて造られたクロガネにとって、大した事ではなかった。

そして数分後、クロガネは大気圏を突入し、地球の周回軌道上にいた。

「すげぇ・・・。これが宇宙から見た地球かよ。」

「綺麗・・・。」

宇宙に初めて来たリュウセイ、クスハ、ブリット、マサキ、イリスはそれぞれ感動のあまり感想を述べていく。

「だろ?だから俺は守りたいんだ、この地球を。」

その言葉を聞いていたセインとフィスは笑顔でリュウセイ達に話す。

彼等もそれに答えるように頷いた。

「やっと見つけたぞ。リュウセイ、クスハ、ブリット、マサキ!!」

「ゼンガーさん・・・それにキョウスケさんも。どうしたんだ?」

「今から宇宙空間でも対応出来るように特訓をする。」

『・・・・・・はいっ!?』

「初めて宇宙で戦闘するんだ。当たり前だろう。」

「イリスだって・・・」

「私は既にセインとフィスに教えてもらった。なかなか大変だったぞ。」

そう言って笑顔で答えるイリス。

しかし、リュウセイ達の顔色は真っ青になっている。

何故ならキョウスケとゼンガーの指導は九死に一生するようなものばかしなのである。

以前受けていたブリットは何度か生死をさ迷った事もあるとか。

兎に角、リュウセイ達にとって避けたい事なのである。

「セイン、俺らなら大丈夫だって・・・」

「重力圏内の戦闘と宇宙空間の戦闘はかなり違っている。受けといた方が良いぞ。」

「地球とは違って外に空気が有りませんからね。撃墜されたら即死しますよ?」

『・・・・・・・・・』

助け舟を見事に潰され、内心へこんでいるリュウセイ達。

その無言を承諾と受け取ったゼンガーとキョウスケはリュウセイ達を掴み、引きずりながら格納庫ヘ向かった。

リュウセイ達は何とか抵抗するが、それも叶わなかった。










「くそ!親父の作ってくれた道なんだ、邪魔をするな!!」

女性型の機体に乗るパイロットは追ってくる無人機に対して叫ぶ。

もちろんそんな声など聞く訳無く、攻撃は続けられている。

「やっと火星・・・。もつかなぁ、エネルギー。」

一度、高エネルギーを発している為エネルギー量が乏しい状態となっている。

それでも機体は加速し続けた。父親の約束を守る為に・・・。











「死ぬ・・・。助け・・・」

「そんな言葉、敵が聞くと思うか!?バンカー、 食らえ!!

アルトアイゼンのリボルビングバンカーが、R-1のコックピット目掛けて放たれる。

R-1は何とか避ける事に成功し、反撃に移ろうとした。

しかしその行動はキョウスケに見切られていたらしく、三連ガトリングガンを発射しながらR-1に突っ込んでいく。

リュウセイは予想外の行動に対処できなく、弾丸を直撃してしまう。

「く・・・。」

「これで終わりだ・・・。クレイモア、ありがたく受け取れ!!」

「な!うわぁぁぁぁぁぁぁ・・・・。」

至近距離からラヴィンチクレイモアを発射され、なす統べなくR-1は撃墜されてしまった。




「そこまでだ。シュミレートを解除する。」

「了解した・・・。」「うぃ~す。」

ゼンガーの声が聞こえ、共に返事をするキョウスケとリュウセイ。

ゼンガーがコンソールを叩き、キョウスケとリュウセイを包んでいたカプセルを開く。

カプセルが開いたと同時にキョウスケは説教をし始めた。

「リュウセイ、いくらシュミレート内だからと言って油断をするんじゃない。死にたいのか?」

「油断してないって・・・。キョウスケが強すぎんだよ・・・(泣)」

「甘えるな!何度か隙を作っていただろう。何故そこをつかなかった!?」

「何時だよ、ヲイ。」

リュウセイは少し泣きながら、キョウスケの話を聞いていた。

何故シュミレーターを使う事になったのかと言うと、宇宙に出た事に無い人が多かったと言うのがあった。

一人二人なら強制的に宇宙空間で訓練させるのだが、こうも数が多いと不効率である。

そこでキョウスケとゼンガーはシュミレーターを使う事にしたのである。

このシュミレーターで合格を貰った者は訓練を終了し、外に出る事を許可されているのだ。

ちなみに今までのシュミレーターで合格したのはマサキのみである。

「クスハ、ブリット!貴様らも死にたいのか!?それではすぐに死ぬぞ!!」

「そんな事・・・ハァ、ハァ・・・言われても・・・。」

「強すぎるんだよ・・・このプログラムが・・・。」

クスハ達も相手をしているプログラムに悪戦苦闘をしている。

ちなみにそのプログラムの元に成っているのが、セインの戦闘データである事は彼らは知らないのだが。

「ブリット、『一意専心』と言う言葉を忘れたのか!?」

「一意専心・・・。」

ゼンガーに言われた事を思い出し、ブリットは目を瞑り集中する。

プログラムはそんな事など気にせずにプログラム内の虎龍王に突っ込んでいく。

「・・・ 見えた。 食らえ!タイラント・・・オーバー・・・ ブレイク!!

虎龍王のランダムスパイク、ソニックジャベリン、バリアブルドリルの激しいコンボになす統べなくそのプログラムを撃墜した。

もちろん虎龍王もプログラムである事には代わりが無い為、その時に掛かるGが擬似的だが直接ブリットにダメージを与える。

「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・クッ!!」

「よし、だが時間が掛かり過ぎだ!!もう少し時間を縮めろ!!クスハは龍虎王になってない時はブリットのサポートだ!!」

「「了解!!」」

2人ともゼンガーの言葉に同意するかのように、元気良く答えた。




その頃、一人特訓の終了したマサキは慣れる為に宇宙空間を走行していた。

クロガネの回りを行ったり来たりと、既に慣れた様子であった。

「ん?アレは・・・。」

サイバスターを火星方面に顔を向けると、なにやら爆発するような光がちらほら見えている。

ただ余りにも遠い為、何が起こっているのか良く分からないでいた。

マサキは取り合えずクロガネに連絡を取り、この対処法について聞く事にした。

「クロガネ!火星方面に爆発のような光が見えるんだが如何する?」

【こちらでも確認した。今から光学映像で確認するからしばらく待て。】

「了解♪それよりセイン、もうブリッジにいるのか?」

【機体が壊れてもやれる事はあるからな。それよりさっきから見てるとなれた様だな。】

「まぁな♪」

マサキは少し照れくさそうに鼻を擦る。セインは照れくさそうな顔を見て、微笑する。

そのような会話をしていると、横からエイタの声が聞こえてくる。

【光学映像出ます。これは・・・・。】

エイタがそう呟きながら、スクリーンに表示する。

そこには女性型の機体がゲシュペンスト、ガーリオンに追いかけられている姿であった。

女性型の機体は普通の機体とは全く異なっており、顔がついているのだ。

リュウセイが見たら間違い無く「可愛い」と漏らすような顔をしており、無表情な顔が機械的にも見える。

後から来たレーツェル、ライ、アヤ、マイ、エクセレン達もその機体の姿を見て呆気に取られていた。

ただ一人、セインを除き・・・。

「で、如何するんだ?このままいても退屈で仕方が無いんだが・・・。」

【今すぐ助けに行くんだ!!】

【セイン!?何を勝手に・・・。】

【艦長!今すぐ足の早い機体を出撃させ、あの機体を助けるんだ!!何としても撃墜させてはいけない!】

【どう言う事だ?そこの所を詳しく・・・。】

【説明している暇など無い!マサキ、恐らくサイバスターのサイバードモードならすぐに着ける筈だ。早く行ってくれ!】

セインの焦っている声にその重要さが伝わってくる。

その言葉から何となく察したマサキはすぐにサイバスターをサイバードに変形させる。

【マサキ!何を・・・・・・。】

「ウルセェ!こうなったらセイン、お前を信じるぜ。いっくぜぇぇぇ、シロ、クロ!!」

「やっぱりこうニャるのかニャ。」

「もう慣れっこニャけどね。」

シロとクロは互いに溜め息をつき、マサキを見る。

既にヤル気十分のマサキはスロットルを一気に上げ、あっという間に見えなくなってしまった。








「もぅ、駄目かもしれない・・・・。」

女性型の機体のパイロットは悔しそうに呟いた。

ゲシュペンスト等との距離が数十m程しかなく、追いつかれるのも時間の問題であった。

女性型の機体は段々と減速していっている。

残り数m、ゲシュペンストがプラズマステークの準備をし更に加速する。

「ゴメン、親父。約束、果たせなかった・・・・。」

パイロットの目には悔しさから来たのか涙が流れた。

そしてついに追いつかれ、コックピット目掛けてプラズマステークを放としていた。

終わった―――そう思い目を瞑った次の瞬間、

【させるかよ! ハイファミリア!!

その声とほぼ同時にその機体の前にいたゲシュペンストが爆散した。

そしてそのゲシュペンストと入れ替わるように、白銀の機体がその機体の前に現れた。

何が起こったのか良く分からない女性型の機体のパイロットは、しばし呆然としていた。

【そこのパイロット、聞こえるか?聞こえるなら返事をしろ!】

白銀の機体――サイバスターからの通信を聞き、そのパイロットは我に帰った。

「・・・あ。ああ、聞こえてるよ。」

【よし!こちらはディパインクルセイダーズの協力者、マサキ=アンドーだ。お前の名前と機体の名前を教えてくれ。】

「リューネ=ゾルダーク。この子はヴァルシオーネだ・・・。」

【了解♪ リューネ?どっかで聞いて事があるような・・・。

そう言ってマサキはサイバスターに何かを入力している。

その間、ヴァルシオーネは動こうとしなかった。

普通なら逃げていてもおかしくは無いのだが、何故かリューネは安心していたのだ。

見ず知らずのマサキを・・・・。

【よし、登録完了♪一気にケリをつけるぜ!シロ、クロ!!】

マサキがそう叫ぶと周りを飛んでいた小型機がサイバスターの中に収容された。

そして・・・・。

【いっくぜ~! サイフラァァァァシュ!!】

その叫び声と共にサイバスターから高エネルギーが放出された。

そのエネルギーはゲシュペンスト、ガーリオンを飲み込んでいく。

そして、そのエネルギーが収まるとそこにはサイバスターとヴァルシオーネの姿しかなかった。

その様子をしばらくの間、呆然としていると再びヴァルシオーネに通信が入った。

【どうやら間に合ったようだな。久しぶりだな、リューネ。】

「その声は・・・セイン!何であんたが・・・。」

【まぁ色々とあってな。今はビアン博士の代わりに俺がディパインクルセイダーズをまとめているんだ。】

「そう、なんだ・・・。」

【今からそちらにクロガネが着く。済まないが収容してくれないか?】

「別に構わないよ。私も親父の事で言いたい事があったしね。」

少し暗い顔をした事には気になったが、セインはすぐにヴァルシオーネとサイバスターを収容した。






その後、リューネとマサキはブリッジに向かった。

途中、例の如く迷いそうになったのだが、何とか無事にたどり着いた。

そしてリューネはこれまで詳細を話し始めた。

「私は木星で親父――父親の手伝いをしてたんだ。地球で言うと半年後位かな?その時に奴らが現れたんだ。」

「廃棄された筈のゲシュペンストとガーリオンがか・・・。」

「そう。父親と何とか撃墜しながら調べて行く内に何かに気付いたんだろうね。いきなり地球に帰るって言って木星圏を脱出したんだ。そしたら無数の敵が現れて、父親が足止めをしている内に私は地球へと向かったんだ。」

「そうか・・・ところでセイン、何故救出せねばならなかったんだ?何の変哲も無い女の子にしか見えないけど・・・。」

リューネの話を聞き終わり、マサキはセインに助けた理由を尋ねる。

セインは少し溜め息をつき、説明をする。

「マサキ、お前彼女の名前聞いたなら分かってくれよ。彼女はディパインクルセイダーズの創設者、ビアン=ゾルダーク博士の娘だ。」

「・・・・・・マジ?」

「本当だ。俺とリューネは以前に面識があったから嘘はつかないって。」

セインの一言でその場の空気が硬直した。

彼女がビアン博士の娘、つまりこの艦にとってビップな存在だったと言う事実に驚きが隠せない様子であった。

一方、セインの話を聞くまでずっと抱えていたムヤムヤ感が取れて、スッキリしたのか手をポンと叩くマサキ。

その様子を楽しげに見ているリューネと、頭を抱え呆れるセインの姿があった。

「まぁ私はそんな事気にしていないんだけどね。それより、マサキ・・・。」

「ん、何だ?」

「さっきは助けてくれてありがとね♪私、あなたのことが気に入っちゃった。」

「助けた事に関しては気にするなよ。俺ら、仲間だろ♪」

「うん。そうだね♪」

マサキとリューネの周りだけ、慌しい空気とは一変した空気が流れていた。

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