青き天体研究所

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第三十六話  コロニー内の戦い



「ゲシュペンスト、ドールを発進させろ!武装はB装備で構わん!!」

「B装備ですか?了解しました。」

ライ達が接近している事を知り、リーは素早く指示を出しパーソナルトルーパーを出撃させる。

その指示と同時にシロガネから次々とパーソナルトルーパーが出撃していく。

「それにしてもB装備ね。ここを破壊しても構わないと?」

「その位しなければ倒せない相手なんですよ。それに時間も稼げるでしょう。」

「とことん利用するその性格、気に入ったよ。まさに軍人の鏡だね。」

「褒め言葉として受け取っときます。」

サディケルと話している間もリーは各クルーに指示を出す。

その様子をサディケルはただ見守っていた。










シロガネ付近に近付いた調査班一行はシロガネの動きに違和感を感じていた。

何故シロガネはわざわざ見つかるようにコロニーを横切っているのだろうか?

普通なら自分達に気付いた時点でコロニーから脱出し、目的地やら何やら何処かへ言っている筈なのだ。

それなのにこの行動、何を企んでいるのか分からない。

しかし、今は検索する事よりあのシロガネを止める事が優先である。

ライは一旦思考を止め、目の前の行動に集中する事にした。

「ライ、何だか様子が変だぞ。」

「こちらでも確認をした。・・・一体何を考えているんだ、あの艦長は。」

素人のリュウセイですら感じたこの雰囲気にやはり思考を止める事が出来ない。

ライは再び目的を考え始めたその時、R-2パワードの前にゲシュペンストが立っていた。

プラズマステークを放つ準備をしていた事に気付き、ライはすぐにR-2パワードに内蔵されているビームチャクラムでゲシュペンストを撃墜した。

「ゲシュペンスト・・・・とドールだと!?しかもB装備!ここを壊滅させるつもりか!?」

「B装備って何なんだよ!?」

「対艦隊用に作られた装備品の事です。これを投入してきたって事は・・・まさか!!」

「恐らくこのコロニーを破壊しても構わないのだろう。まだ多くの人が居ると言うのに・・・。」

「アラド、ゼオラ!すぐにこのコロニーに退避警告を出すように連絡してくれ!!その他は敵機の撃墜を。なるべく民家に当てるなよ!!」

「無茶苦茶な命令だな・・・。でもやるしかないか!!」

マサキとリューネはかなり苦い顔をしてディスカッターとディパインアームを抜き、敵機に突っ込んで行く。

それを追いかける様にウィルとR-1はゲシュペンストの大群に突っ込んで行った。








「オイ!あの変態野郎が居るんだろ!?何で俺らを出撃させねぇんだ!!」

「そうね・・・。早く出しなさい!」

サディケルに与えられた機体の調整中にこの事を聞き、テンザンとオウカはリーに出撃許可を貰いにブリッジに居た。

必ず仕留めたい敵を前にして何も出来ない事が悔しいのだろう。

今までに感じた事の無い気迫を感じる。

「・・・駄目だ。お前達を出す訳には行かない。」

「どうしてだよ、オッサン!アイツは人形如きでは・・・。」

「そんな事は百も承知だ!だが機体の整備もままならないまま出撃させるほど、俺は馬鹿ではない!!」

「ですが・・・・!」

リーの返事は正しい事は分かっているものの、納得のいかない2人は未だに直訴を繰り返す。

だがリーは一考に首を立てに振らなかった。

「彼の言う通りだよ。君達を出撃させるわけには行かない。君達は切り札だからね。」

「切り札・・・ですか?」

「そう・・・切り札だよ♪」

サディケルは笑みを再び浮かべる。

何を考えているのか分からないその笑みに少しばかし恐怖を感じたオウカであった。








「クソが!ハイファミリア!!」

「「了解ニャ!!」」

マサキの声と同時にサイバスターから小型機が現れ、次々とゲシュペンストとドールの関節部を破壊していく。

そして動かなくなった所をサイバスター、ヴァルシオーネ、ウィルの攻撃で破壊していった。

大型攻撃を封じられているサイバスターとヴァルシオーネにとって最も効率の良い戦い方であるが、やはり敵の数が多い分手こずっている。

それをカバーするようにウィルがコールドメタルナイフで応戦していると言う状態である。

「ハァ・・・ハァ・・・。クソッ!数が多すぎるんだよ!!」

「サイコブラスターさえ・・・使えれば・・・こんな奴ら・・・一瞬なのに・・・。」

「休んでいる暇があったら手を動かした方が良い。ただでさえ、私達は広範囲兵器を封じられているんだからな。」

「そう言うこったぁ!!つべこべ言わずに働きやがれ!!・・・ T-Linkナッコォォォォ!!

リュウセイはそう言いながらも次々と敵機に向かって攻撃を繰り出く。

R-1のT-Linkナックルはドール等のコックピット付近に直撃し、連鎖のように爆散していく。

迷いの無いその攻撃をマサキとリューネは呆気にとられながら見ていた。

「何をしてるんだ!?来るぞ!!」

「お、おぅ…」

リュウセイの声を聞きハッとしたマサキとリューネはリュウセイのR-1に続くようにディスカッター、ディバインアームを振るい始めた。

(絶対に守ってやる…。もう、あんな事にならねぇように!)

そんな思いの中、R-1の拳が鈍く光っていた。





「ストライクシールド展開!行きなさい!!」

「ラウンドチャクラム、シュート!」

マサキ達と別の場所で戦っていたアヤとライは善戦を繰り広げていた。

R-3パワードが射出したストライクシールドとR-2パワードの有線式ラウンドチャクラムが数多くのゲシュペンスト、ドールを巻き込んで撃墜していく。

ゲシュペンスト等も何とか回避しようしたがライの天才的な操縦とアヤの念動力に捕捉されたストライクシールドから逃げられる事が出来なかった。

「数が多すぎる…いくら撃墜してもきりが無いわ。」

「それでも数は減ってきています。この調子でいけば全滅出来るでしょう。」

アヤを励ましながらもその手を動かし続けるライ。

だがアヤの言う通り、圧倒的に不利である事には代わりはなかった。

数少ないこちらに対してシロガネはAIを使用し、大量に機体を出撃させている。

このままいけば近い未来こちらは弾切れ、エネルギー切れとなり敗北してしまうだろう。

まさに質と量がものを言う戦いなのである。

しかしライは諦めたくはなかった。

ここで広範囲高出力兵器を使えば確実に全滅させることが出来るだろう。

だがそれでは兄の…自らの妻を犠牲にし、コロニーそのものを救った兄と同じ事になってしまう。

それだけはなんとしても避けたかった。

(俺は奴のようにはならない。絶対にな!)

そう思いつつも現在の状況を打破する方法は見つからない。

ライの顔に焦りの色が浮かび始める。その時……

「オクスタンライフルEモード、シュート!!」

「コールドメタルソード、食らいやがれ!!」

二体の青い機体がR-2パワードの前に躍り出てゲシュペンスト、ドールを破壊していった。

「ライディースさん。コロニー内の住人の避難、完了しました。」

「ラトはリュウセイ達の支援に向かったようだ……です。」

「高エネルギー放出系の兵器の使用許可も頂いてきました。ですから今までのツケを払っちゃって下さい。」

ビルトビルガー、ビルトファルケンの支援、更に高エネルギー放出系の兵器の使用許可を得た事を聞きライの表情に笑みが浮かんだ。

「リュウセイ、マサキ、リューネ、イリス、今聞いた通りだ!ただしコスモノヴァ、クロスマシャー以外だからな!」


場所は移ってマサキ達は今の通信を聞き、ライと同じような笑みを浮かべた。

「ヨッシャア!行くぜ、リューネ!!」

「了解!タイミングを外さないでよ、マサキ!!」

そう言ってサイバスターとヴァルシオーネは互いを背合わせにし両手を広げた。

何をするかも分からないゲシュペンスト達はチャンスと言わんばかりにサイバスターとヴァルシオーネに近付いてきた。

そして一瞬にしてサイバスターとヴァルシオーネの周りには大量のゲシュペンスト達が囲み始めた。

一見からして絶望的な状態。しかしマサキ達の口元には笑みが浮かんだままであった。

「今だ!サイ・・・」「サイコ・・・。」

マサキの声に合わせる様にサイバスターとヴァルシオーネから高エネルギー反応が発生する。

そして・・・・。

「フラァァァシュ!!」「ブラスタァァァァ!!」

二人の声が同時に重なり合い、二つの高エネルギーが一斉に放出された。

サイバスター達を除き辺りにいた敵機がその光の中に飲み込まれていく。

ドーム上となった高エネルギー体が収まると、そこにはサイバスターとヴァルシオーネの姿しかなかった。

「見たか!風の魔装機神の名は・・・。」「親父の残してくれたこの機体は・・・」

「「ダデじゃないんだよ!!」」

2人がそう叫ぶ空間には敵機の残骸しか見当たらなかった・・・。



一方その頃、リュウセイ、イリス、ラトゥーニの方では・・・・。

「オラオラオラオラ!天上天下ぁ念動破砕剣!!」

「目標確認・・・。ライジングブレイカー!!」

「G・インパクトキャノン、出力50%。発射!!」

R-1のT-Linkソードこと天上天下念動破砕剣を筆頭に次々と敵機を破壊していく。

互いが互い弱点があるもののそれを他の人達が補って行くと言う形を取っているため隙が無く、ゲシュペンストとドール達は成す統べなく撃墜されていく。

勿論コロニーを傷つけない事を前提に戦っている為、多少は出力は抑えているもののそれでも敵機を全滅させるには十分であった。

そして・・・・。

「これで・・・仕舞いだァァァ! T-Linkナッコォォォォ!!

リュウセイの掛け声と共に放たれたT-Linkナックルを最後の1機に直撃させ爆散させた。

「これでお仕舞いのようだな。ライディースの元に急ぐぞ!」

「「了解!!」」







「あらあら。もうすぐ人形達が全滅しちゃうね。」

「如何するんですか?サディケル様。」

もうすぐコロニーから脱出しようとしているシロガネは、ドール達の様子を見て少し焦りの表情を浮かべる。

もしかしたらすぐにシロガネに追いつき、撃墜されるかもと言う不安さえよぎり始めるのだ。

しかしそんな中、一人だけ反応が異なっていた。

「如何するもこうするも方法なんて一つに二つ。逃げ切るか、それともアレを投入するかのどれかだよ。」

「アレとは・・・。まさか!?」

「そう・・・アレだよ。あの量産型のことだよ。」

サディケルの言っているアレの事を知らないクルーとオウカとテンザンは少し疑問を持つが、リーだけ表情が変わった。

サディケルは相変わらずニコニコとしている。

「し、しかしあの量産型はまだ誰も乗った事が!!」

「大丈夫、安心してよ。乗るのは人間でもAIでも無い。戦う為だけの人形だからね。」

「人形・・・ですか?」

「そう、人形だよ。プロトタイプの持ったポテンシャルを元に一から創り出した戦うだけの人形・・・だよ。」

無言のまま聞いていたオウカは再びサディケルの言葉から寒気を感じた。








「ハイゾルランチャー、出力50%。発射!!」

R-2パワードから発射された高出力のビームランチャーが残りの敵機を撃墜し、シロガネから出撃された敵機を全滅させた。

「何とか・・・勝てたようね・・・。」

「そのようですね。皆、大丈夫か?」

「・・・一応全員ここに居るようだ。ライディース、疲弊しているとは思うがシロガネを追わないと・・・。」

「分かっている、イリス。ではシロガネを追う・・・。」

ライがそう言ってシロガネの行った方へ向かおうとした瞬間であった。

突然今までとは比べ物無い高出力エネルギーがライ達の機体を横切っていった。

行き場の無いエネルギーはそのままコロニーの壁にぶつかり、そのぶつかった後から大きな穴が出来てしまった。

「な、何だよ、今の攻撃は・・・。何処からだ!?」

「リュウ、落ち着いて!今から索敵するから・・・・。見つけた!十字の方向よ!!」

アヤの言った言葉を聞きその場に居た全員がその方向を一斉に向く。

そしてそこにはピンク色に機体が右腕を突き出しながらその場に立っていた。

パーソナルトルーパーより明らかに大きく、その姿からはグランゾンと同じような圧迫感が感じる。

その姿を見るライ達はただ呆然とするしか出来なかった。たった一人を除いて・・・。

「何だよあの機体!グランゾン並にデカイぞ!!」

「検索確認・・・。これまでのデータに同類のデータ存在せず。厄介な物を残したようだ・・・。」

「チッ!上等じゃねぇか!!・・・如何したんだ、リューネ。顔色悪いじゃねぇか・・・。」

マサキはリューネの反応にいち早く気付く。リューネの唇が少し震え始める。

「・・・んでここにあるの?アレが・・・・。」

「リューネ、知っているのか!?あのアンノウンを・・・。」

「知っているも何もあの機体は親父のヴァルシオンだよ!しかもアレは親父と私が開発していた量産型だ!!」

「ヴァルシオン!?アレが・・・そうなのか。」

その姿を見ながらライ達は冷や汗が浮かんでいた。

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