青き天体研究所

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第三十七話 ヴァリアブルフォーメーション



コロニーに風穴を開けたあの一撃から考えて自分達の機体の中で対抗できる高出力系の武器はサイバスターのコスモノヴァ位だろう。

しかしマサキから聞いた話では、コスモノヴァは一回撃つとしばらくは撃つ事が出来なくなると言う欠点を持っている。

(だったらコスモノヴァは当てに出来ない・・・。弾数も少ない中、この状況を打破するにはやはりアレしかないのか?)

しかしライの言うアレにも欠点がある為、やはり当てに出来ない部分が存在する。

(如何する!?このままじゃ全滅は・・・)

「ライ危ねぇ!!」

マサキの声と同時に量産型ヴァルシオンのクロスマッシャーがR-2パワードに向かって発射された。

その声にハッとなったライはすぐさま回避行動を取りクロスマッシャーの直撃を防ぐ。

「クッ・・・。済まない、マサキ。」

「へ、別に構わねぇよ。それよりあの化け物を如何するか・・・だ。」

「・・・・・・」

マサキの声を聞くと同時に終始無言が続いた。






ライが打開策を考えてる中、リュウセイとイリス、ラトゥーニは量産型ヴァルシオンに攻撃を仕掛けていた。

三体ともヴァルシオンより高機動である事を利用し攻撃を仕掛けているが、ヴァルシオンに張られている謎のシールドで阻まれていた。

「クソッ!如何なっていやがるんだ。」

「攻撃が通らない・・・。何らかのバリアでも張られているのか・・・?」

そう言っている間にもヴァルシオンのクロスマッシャーとディバインアームを使い、R-1とウェル、Mk-2カスタムに攻撃を仕掛ける。

その攻撃もR-1とウェル、Mk-2カスタムにとっては簡単に避けられるが、その度にコロニーが破壊されていく。

「このままじゃヤバイ。リューネさん、しっかりして下さい!」

「何で・・・親父の作った量産型が・・・」

「リューネさん!?しっかりして下さい!!」

アラドとゼオラが何とかリューネ調子を戻そうとするが、量産型ヴァルシオンの登場にショックを受けたのかうわ言をずっと言っていた。

このようなリューネを放って置く事も出来ない為、早く参戦したいと言う気持ちを抑えている。

「アラド、ゼオラ!ここは私に任せて早く参戦して。」

「アヤさん!?ですが・・・。」

「良いから!急ぎなさい!!」

「・・・了解。行くぜゼオラ。」

「う、うん・・・分かった。」

そう言ってアヤに後を任せ、アラド達は量産型ヴァルシオンの下に急いだ。

彼等が行くのを見送った後、アヤはリューネに通信を開いた。

通信先のリューネの姿はコックピット内で小さくうずくまっており、まるで何もかも拒絶したような感じであった。

そんな姿をものともせずアヤはリューネに話しかける。

「リューネ・・・。聞こえる?」

「・・・・・・・」

リューネは少し顔を上げるが再び顔を俯く。その時の目に生気が感じられなかったがそんな事気にせずにアヤは話を続ける。

「何が信じられないのか私には分からない。あの量産型を見て何を考えたかも分からない。でもね・・・これだけは言っとくわ。」

アヤは一呼吸入れて再び話し出す。

「貴方には私達がいる。辛くても傍にいる仲間が・・・。だから・・・ね?」

「・・・・・・・・・」

アヤの言葉を聞き微かに髪が動いたその時・・・

「アヤ、リューネ!危ねぇ!!」

リュウセイの声と共にヴァルシオンから放たれたクロスマッシャーの流れ弾がアヤ達の下へ向かっていく。

アヤは直ぐに盾とする為ストライクシールドを展開する・・・が、

「クロスマッシャー・・・・」

ヴァルシオーネがR-3パワードの前に立ち、クロスマッシャーは発射した。

そのクロスマッシャーは見事量産型ヴァルシオンが発射したクロスマッシャーに激突するが、エネルギーの質量の違いから相殺されずヴァルシオーネ側が押される形となっている。

その間もなお放出し続けているヴァルシオーネの姿を見てアヤは驚きが隠せなかった。

「ちょっち・・・キツイかな?」

「リューネ・・・。」

「親父に笑われちゃうしね、仲間を見捨てたら・・・。ヴァルシオ-ネ、もう少し頑張ってね。」

しかしリューネの思いも虚しくヴァルシオーネのクロスマッシャーは段々と押されていく。

そしてついにヴァルシオーネのいる付近まで押されてしまった。

「このままじゃ・・・。誰か助けて・・・・。」

リューネがぼそりと呟いた瞬間であった。

ヴァルシオーネを横切って青白い不死鳥と高エネルギーのビームがクロスマッシャーにぶつかり相殺した。

相殺したクロスマッシャーの付近を呆然と見ていると聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「何とか間に合ったみたいだな。大丈夫かリューネ、アヤ。」

「リュウセイ達と合流しようと思ったらこんな所で2人が居たのでな。間に合って良かった。」

「マサキ・・・それにライ。ありがとう。」

「礼は後です。兎に角リュウセイ達の下へ急ぎましょう!」

「そうね。行きましょう!」

そう言ってライ達はリュウセイ達の元へと向かった。






その頃リュウセイ達は・・・

「天上天下ァァァ念動破砕剣!!」

「オクスタンランチャーEモード、シュート!!」

R-1の天上天下念動破砕剣とビルトファルケンのオクスタンランチャーが量産型ヴァルシオーネに向かって発射される。

しかしそのエネルギーも量産型ヴァルシオンの前で四散してしまう。

「クソ!何だってんだよ、あのバリアは!?」

「ABフィールド。ある一定のエネルギーを四散させるバリアだよ。」

「リューネ・・・。大丈夫ですか?」

リューネの声を聞き直ぐに調子を尋ねるアラド。

「大丈夫だよ。それよりあのヴァルシオンのスペックを言うと・・・。私のヴァルシオーネより高エネルギー高出力の機体で動きが鈍いかな。その代わりにさっき言ったABフィールドがあるんだけどね。」

「そうか・・・。そのABフィールドを突破する方法は?」

「恐らく・・・だけどエネルギーを介さない物理系の攻撃か、ABフィールドの形容量を超えるエネルギーをぶつけるかのどちらかだと・・・。」

やはり・・・ライは言葉にはしなかったものの、唇が僅かに動いた。

リュウセイの言葉から何らかのフィールドが張られている事は知っていたが、これほど厄介な物とは思わなかった。

弾丸はほぼゼロに近くエネルギーもトロニウムエンジンがあるからこそ大丈夫だが他の機体はゼロに等しいだろう。

そんな中やはり勝つ方法は最初に考えた二つのみ。

サイバスターのコスモノヴァか・・・確証の無いアレを発動させる事・・・。

どちらもギャンブル性が高く、あまり取りたくない方法である。

そんな時リュウセイが口を開いた。

「ライ・・・何を悩んでいるんだ?もうアレしか無いじゃないか。」

「リュウセイ。しかしアレは・・・・」

「成功・・・いや、一度もした事の無いアレをぶっつけ本番にやるってのもおかしい事ぐらいは知っている。だがそれ以外方法が無いじゃないか!?」

「リュウセイ・・・。」

「私もリュウの意見に賛成ね。このままやられる位ならアレをやってみましょ。成功するかもしれないし・・・。」

「アヤ・・・」

リュウセイ、アヤの言う通りこのまま殺される位ならやった方が良いだろう。

しかし・・・やはり・・・。

「・・・三人で話を進めているみたいだが方法があるならそれを試してくれないか?倒せる可能性があるなら・・・・。」

「そうっす!もう俺らには手が無いんですから・・・。」

「イリス、アラド・・・。」

「私達は信じています。だから・・・」

「ラトゥーニ・・・。」

ここに居る全員が何か手を持っている彼かを信じている事を知り、ライの心の中で決意を固めた。

「・・・済まないが五分、いや二分だけ時間を稼いでくれ。その後は・・・任せろ。」

「二分でいいんだな?了解した・・・。」

「ライ・・・それじゃあ。」

「ああ。リュウセイ、アヤ・・・やるぞ!!」

「おう!」「了解!」

ライの声と共にリュウセイとアヤはR-2パワードを中心に何やらフォーメーションを組んだ。

その様子を見たイリスとラトゥーニはそのただならない空気を感じ、一言掛け声をかけた。

「弾丸もエネルギーも無いが・・・・2分間、時間を稼ぐ!!行くぞ!!」

『了解!!』








たった2分間の時間を稼ぐ為、イリス達の攻撃が始まった。

イリスの言う通り弾丸、エネルギーが少ないがそれでも彼ら――リュウセイ達を信じ、何としても時間を稼ごうとしていた。

「ジャケットアーマーパージ!行くぜ~量産型!!」

ビルトビルガーの装甲――ジャケットアーマーを外し、高機動モードに変形させたアラドはそのまま量産型ヴァルシオンに突っ込んでいった。

「アラド、あまり前に出ないで。時間を稼ぐ事が目的なんだから・・・。」

「多分アラドも分かってると思う。だから高機動モードに代えたんだと。」

実際にジャケットアーマーを外したビルトビルガーにかく乱させられている量産型ヴァルシオンを見る当たり分かってるようではある。

その行動を見てゼオラ、ラトゥーニも続き、量産型ヴァルシオンのかく乱作業に入った。

一方その頃マサキ達はそのかく乱している様子を上のほうで見ていた。

「この直線距離なら絶対に当たるな。」

「そう・・・かもね。これが私達の最後の一発だよ!!」

リューネがそう言うとサイバスターの周りには何らかの円陣が、ヴァルシオーネの周りにエネルギーの塊が浮遊していた。

そして次の瞬間・・・。

「いっけぇ! アカシックバスター!! 」「これでも食らいな! クロスマッシャー!!

サイバスターを包む青白い不死鳥とヴァルシオーネの最大出力を誇るクロスマッシャーが同時に発射された。

量産型ヴァルシオンは直ぐに気付くが動きが鈍い為避ける事も出来ず、ABフィールドをに激突してしまう。

キシキシとABフィールドは割れる気配がまるで無かったが興味を薄くする事に成功はしていた。

量産型ヴァルシオンは軋む音など興味が無いかのように先程からかく乱しているビルトビルガーらに攻撃を仕掛ける。

しかしその攻撃は殆どが空を裂き、ほとどん度直撃に通ずる物が何も無かった。

そして・・・・

「二分経ったぜ!後はお前達に任せるぜ。」



「了解!・・・準備は良いか?ライ、アヤ。」

「トロニウムエンジン安定。いつでも行けるぞ・・・。」

「私もいつでも行けるわ!!」

「ヨッシャア!行くぜ!!」

リュウセイはその掛け声と同時にR-ウイングに変形させ、上に飛翔する。

「T-Linkフルコンタクト!」

「・・・トロニウムエンジン、フルドライブ!」

「ヴァリアブル・フォーメーション!」


R-2パワード、R-3パワードのプラスパーツが分離し個々に浮遊する。

プラスパーツが分離したR-2の装甲がアジの開きのように開かれ、その開かれた装甲の中にR-ウイングが収容される。

R-3も変形しR-2の装甲部に接続され、徐々に開かれた装甲が閉じていく。

パージされたプラスパーツもR-1、R-2、R-3が合体した塊のようなものに接続し、それぞれ腕と足と形が変わっていく。

そして頭のような物が接続され様としたその時であった・・・。

量産型ヴァルシオンがその行動の異変に気付き、段々と大きなロボットになっていく塊にクロスマッシャーを発射した。

その閃光は真っ直ぐと塊へと向かっていく。そしてその塊に直撃した―――かに見えた。

巨大なロボットらしき機体が上空から降下して行き、量産型ヴァルシオンのクロスマッシャー発射口を蹴り落とした。

その瞬間クロスマッシャーの発射口が爆発し、量産型ヴァルシオンは態勢を崩した。

そして現れた機体は右腕に拳を作り量産型ヴァルシオンに当て吹っ飛ばした。

「何なんだよ・・・あの機体は・・・?」

その様子を見てマサキがボソリと呟く。他の人達も同じように呆気に取られたいた。

そしてその疑問に答えるかのように巨大な機体から聞き覚えのある声が聞こえた。

「天下無敵のスーパーロボットSRX、ここに見参!!」




「リュウセイ・・・。それは一体?」

「ラトゥーニ。俺達の機体は『特機とパーソナルトルーパーの特徴を兼ね揃え、一体もしくは分離状態の三体で戦局を変え得る人型機動兵器』それをコンプセクトに作られたものなんだ。」

リュウセイの代わりにライが詳しい解説を行う。

「EOTをフル活用、インスペクター戦線時に発掘されたトロニウムをも使い敵拠点、敵部隊を短時間殲滅に使用されるように設計し作られている。ただし色々な関係上合体回数と戦闘時間が決まっているがな。」

「でもまさか一発で成功するとはね・・・。ある意味ラッキーだったわ。」

「そんな事どうでも良いんだよ!兎に角あの量産型を倒すぞ!!」

どうやらこの会話を聞いている辺りメインパイロットはリュウセイらしい。

ライとアヤが何をやっているのかは分からないが、メインパイロット以外にも必要な所を見ると二人とも重要な役割なのだろう。

「了解した。Z・Oソードを射出する。後はお前に任せるぞ!!」

そう言って胸部から剣の柄らしき物が射出され、その柄をSRXが受け取る。

柄を受け取った瞬間、その柄から薄い緑色の刃が出現する。

その刃渡りが出現したと同士にSRXは量産型ヴァルシオンに突っ込んでいく。

「一撃で決めてやるぜ! 天上天下ァァァァ念動爆砕剣!!

そうして振り下ろされた刃は量産型ヴァルシオンのコックピット部に直撃する。

空中にディバインアームの刃が浮かんでいたが、受け止めきれず破損したのだろう。そして・・・。

「念動・・・ 爆砕!!

その言葉と同時に量産型ヴァルシオンは爆散した。






「何とか勝てたようだな・・・。」

爆散した量産型ヴァルシオンの見ながらライは呟く。

あまりにも偶然が偶然を、軌跡が続いたので勝てた事が信じられない様子であった。

「まぁシロガネは逃がしちまったけどしょうがねぇよな。あの化け物を倒しただけでも収穫だろ?」

「そうかも知れませんね。量産型ヴァルシオンが出て来た時の対抗手段がこれで分かりますからね。」

(親父・・・)

何とか勝てた勝利に酔いしれる中、たった一人リューネだけは不安の色を隠せなかった。

ある筈の無い機体が存在しただけで自分の思いを崩されそうな気がして・・・・。

「・・・大丈夫か、リューネ?」

「・・・ん?ありがとうマサキ。私は大丈夫だから・・・」

「そうか。無理するなよ?」

マサキの思いやりに嬉しさがこみ上げてくる中、何とか考えた事を振り払った。

今は考えない方がいい。どう感じたからだ。

「コロニーの損害が大きい。兎に角一度マオ社に戻りこれを報告した方がよさそうだな。」

「そうっすね。俺もう腹が減って・・・・」

「アラド!?アンタって人は・・・・。」

イリスの言う通りここは帰還した方が良いと考えたライは直ぐに指示を出す。

「そうだな・・・。今から帰還するぞ!」

『了解!』

ライの指示の元、マオ社に向かって加速していった。


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