青き天体研究所

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第四十一話  過去をみる者、未来を示す者


自分が指揮をしているにも関わらず辺りに居た艦はほぼ全滅。
それもたった一つの艦にだ。
しかもその艦を指揮しているのはいつも二番手だった男だ。

『本艦はこれより敵、クロガネと交戦する。各砲門、開け!』

その言葉に従うかの様に着々と戦闘準備に入っていく。

(私は認めん!このような状態を。テツヤごときに追い詰められている事を!)

その思案が渦巻く中、戦闘は・・・因縁の戦闘は始まりののろしをあがった。







「弾幕、Eフィールド展開。ミサイル一番から五番まで一斉放射。目標、敵戦艦。」
「了解。各部展開のチェック完了。・・・発射!」

テツヤの言われた事を復唱しながら放たれた五発の対艦ミサイルは辺りに居たPT郡を擦り抜け、見事敵艦に直撃する。
沈みはしなかったものの、かなりの被害を与えることに成功したようだ。
もちろん、テツヤはこの好機を逃さない。
再び対艦ミサイルを発射させ、見事撃沈に成功した。

「状況を確認しろ!」
「敵艦の撃墜を確認。残りはシロガネを除き3です。」
「量産型ヴァルシオンの姿も確認。しかしその後、キョウスケ機とゼンガー機によって撃墜した模様です。」

その吉報を聞き表情には出さないものの、安堵をするテツヤ。
引き続き警戒を怠らない様促そうとしたその時・・・。

「連続衝撃砲の弾道接近!?距離2キロ!」
「Eフィールド最大展開。出来る限り回避を!」

テツヤの指示に従い、行動を開始するクルー達。
その素早い対処があった為か甚大な損傷無く切り抜ける事に成功した。

『中々やる様だな。あの不意打ちを切り抜けるなど・・・。』
「リー、リー=リジュンか。」
『テツヤ!今日でこの因縁を断つ。貴様の死でな!』
「クッ。各員第二戦闘配備!対艦ミサイル、チャフグレネード発射準備。」

テツヤの指示通りにクロガネは準備を始める。
と同時にシロガネもほとんど同じ動きを開始した。そして・・・。

「撃てぇぇ!」『発射!』

その声に合わせるかの様に両艦から多数のミサイルが発射された。
迫り来る対艦ミサイルを発射したチャフグレネードのチャフによって両艦の一歩手前で爆散する。
その衝撃波が襲ってくるが、それにも怯まずテツヤとリーは指示を出す。

「副砲発射!目標、シロガネ!!」
『Eフィールド展開。敵砲撃終了後、衝撃砲発射!』

Eフィールドとクロガネの副砲がぶつかった瞬間、閃光と衝撃がシロガネに走った。
ぶつかった衝撃で煙が発生し、視界が全く見えない。
しかしリーは関係無いかの様に連続衝撃砲の発射準備を指示した。

『視界が晴れたと同時に発射。外しても構わん!』
『了解!』

リーの命令に従うクルー達はすぐに行動を開始する。
視界を遮っていた煙が段々と晴れていく。
そして完全に晴れた次の瞬間、リーは目を疑う光景を目の当たりにした。
クロガネがかなり近くまで来ていたからである。
しかもクロガネも連続衝撃砲の発射準備が完了しているらしく、いつでも発射出来る状態であったのだ。

「いつまでも士官学校時代の俺だと思うな、リー!目標、シロガネ!」

お互いEフィールドを張っている暇は無い。
故にどれだけ自分の戦艦が持つのかに賭けるしかなかった。
そして・・・・・・。

「『撃てぇぇぇ!!』」

掛け声共に放たれた衝撃砲が互いの戦艦を貫いた。
貫いた箇所から爆発が起き、クロガネとシロガネを包み込むように煙が立ち込めた。

『損傷の確認を急げ!』
『副砲が全門破壊、衝撃砲50%まで出力低下。損傷率40%です。』

近距離の衝撃砲の撃ち合いによってほとんどの武装が使用不可能となっていた。
テツヤの指揮するクロガネの損傷もかなりのものだとリーは推測する。
そしてリーはある事を自分の中で決断した。






一方、クロガネの方でも艦の損傷状況の確認をしていた。

「艦長、副砲と衝撃砲が破損。その他の損傷も考えると約50%は・・・。」
「そうか。運航には何も問題は無いのだな?」
「はい、運良くテスラドライブは破損していませんから。ですが戦闘となると・・・・・・」

状況を報告していたエイタの口が濁り始める。
それをテツヤは打開策を考え始める。
主砲である衝撃砲と副砲が潰れた今、残っている武装と言えば対艦ミサイル数発とチャフグレネード一発、スパイダーネット二発だけである。
しかし現在、この地域一帯にチャフグレネードのチャフが散布されている為、ミサイルの使用は不可能。
故に武装は既に潰され――

「――艦長!」
「!?どうした!」

突然一人のオペレーターの声を聞き、はっとするテツヤ。
オペレーターの声を聞く限り、かなり緊迫しているのだろう。
すぐに確認を取る。

「シロガネが本艦に向けて接近してきます。距離10キロ!」
「なっ!?」

リーらしからぬ行動を聞き戸惑うテツヤ。
その時にシロガネから通信が入ってくる。


『私が、この私が貴様如きに敗北するものか!ナンバー2の貴様などに!』
「くっ・・・。リー!!」
『艦首をクロガネに向けろ!何としてもあの艦を沈めるのだ!!』
「か、艦長!シロガネが本艦へ突っ込んで来ます!!」
「特攻するつもりか!?」

エイタの言う通り、シロガネは先程より更に加速しクロガネに突っ込んで行く。
副砲も衝撃砲も潰れている今、シロガネが特攻する前に迎撃する事は不可能である。
ブリッジに居るクルー達の顔に焦りの表情が浮かぶ。

「艦長、早く回避を!!」
「・・・・・・」

少々焦りつつもテツヤはこの状態を回避する方法を考えていた。
例え回避しても今のリーの事だ。再び特攻してくるに違いない。
何とかしないと―――その考えがテツヤの思考を鈍らせる。
打開策を考えつつ、ふとクロガネの艦首に目を向ける。
艦首に有る物を見てハッとするテツヤはすぐに指示を出した。

「回避はせん!艦首をシロガネに向けろ!!」
「はっ!?」
「復唱は如何した!?」
「は、はい!艦首をシロガネに向けます!!」

テツヤの指示に疑問を抱くクルーだがテツヤを信頼しその指示に従う。
その様子を見たリーは中傷に意味も込めて通信する。

『観念したか、テツヤ!相変わらず詰めが甘いな!!』
「リー!この艦の舳先に何が付いているか、忘れたか!」
『な・・・・・・に!?』

その言葉を聞き、テツヤの指示に従っていたクルー全員が納得した。
シロガネには無く、クロガネに有るもの。それは・・・。


「機関、最大戦速!艦首超大型回転衝角、始動!!総員、衝撃に備えろ!!」
「回転衝角、始動開始!Eフィールド展開完了!」
「よし、突撃!!」

艦首に有った回転衝角が回転し始め、クロガネはシロガネに突撃する。
リーは一旦回避を試みようとするが、一度加速してしまった以上それを急に変える事は不可能である。
そうこうしている内にシロガネの艦首とクロガネの艦首がぶつかって、競り合いが始まった。
最初は互いに均衡していたが、クロガネの回転衝角の回転数が段々増えていき、ついにはシロガネの艦首を貫き始めた。
艦首の破壊が引き金となったのか、回転衝角はどんどんシロガネを貫いていく

『ば、馬鹿な!?この私がテツヤ如きに、私に一度も勝てなかったテツヤにやられると言うのか!?』
「リー、今と昔を一緒にするな!確かにお前の方が戦闘経験から何まで上だ!!」
『て、テツヤ・・・・・・!』
「だが、お前は道を間違えたんだ。FATES・・・いや、インスペクター戦線時ダイテツ艦長を討ったその時から。何を守り、誰の為に戦うのか・・・・・・。それを間違っていたんだ!」
『・・・・・・!!』
「・・・・・・だから、お前は俺に・・・・・。いや、ダイテツ艦長の意思を受け継いだ俺達に・・・・・・敗れたんだ。」
『私は・・・・』

その言葉を最後にクロガネはシロガネを貫き、そしてシロガネは爆散してしまった。
テツヤの機転で助かったとは言え、九死に一生を得たクルー達は安堵し始める。

「・・・・・・状況を報告しろ。」
「は、はい。シロガネが沈んだのとほぼ同時に敵戦艦が撤退を開始しました。しかし敵機はまだ・・・。」
「よし、本艦はこれより後退を開始する。技術班は損傷している箇所の応急措置を、消火班は消火を急げ。各パイロットに通達し本艦の援護をするよう促してくれ。」
「了解。」

ブリッジに居るクルー達はその指示に従い、それぞれ行動を開始する。
その指示を促した後、テツヤは息を吐き、シロガネの残骸を確認する。

(道を違えなければ、良い友になれたかもな。だが・・・・・・サラバだ、リー。)

密かに黙祷をし、テツヤは再び指示を仰ぎ始めた。

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