角膜移植までの日記
お客さんから｢身内が 東京歯科大市川総合病院で角膜移植手術を受けた｣と 聞いた。
なんでもアメリカのアイバンクからの角膜で 2～3ヶ月の待ちで 受けられたそうな・・・。
国内のアイバンクを待っていると 何十年もかかるらしい。
私も 小さい頃から左目の視力がほとんどなく、右目だけの視力に頼っている。
25年前、某病院の眼科で 角膜移植しか 治す方法が無いと言われ、しかも｢貴方に目をくれる人はいますか？｣と 冷たく言われ 泣きながら帰ったことを 思い出した。
そのときはショックだったが その後、世の中には 視力がまったく無く、角膜を待っている人が沢山いることを知り、あのお医者さんはそういうことを言いたかったのだと思った。
そして たとえひとつだけでもと、私はアイバンクに登録した。
（ついでに腎臓バンクにも登録した。）
片目の不便さは眼帯をしたことのある人なら分かるだろうが・・・、そんな訳で私は遠近感が乏しく、スポーツ刈りなんてムリだ！と思っていたが、主人が亡くなって、やらざるを得なくなり 出来るようにもなった・・・。
今は そう不便さは感じないが、視力のある右目、（と言っても 0.06の近眼乱視）が いつ見えなくなるかもしれないという不安もあり 出来れば 見えるようになりたい！
少しの希望を持って 病院に行ってみよう。
ダメでも 昔のような ショックは受けない打たれ強いオバサンにもなったし・・目のことで叶わなかった夢はもう今じゃもう遅いけれど、両目で見れるってどんなだろう・・・
【2004年9月13日（月）、感謝】
さっそく 病院に行ってきた。
先生に事情を話し、恐る恐る聞いてみた
「片目が見えても、もう片方 見えるようにしてもらえるんですか？」と。
先生は 「大丈夫ですよ！色や形が 少しでも見えるなら、見えるようになると思います。目の白いのも取れます。まだ 人生長いんですから 手術は早いほうがいいでしょう」と…。
その言葉を聞いて 涙が止まらなくなった。
国内のドナーの提供でも 半年から一年くらいで 手術できるとの事、二十数年前のお医者さんの言葉が いつも、いつも頭にあって 望んではイケないとあきらめていたのに…。
あれから こんなにも変わっていたなんて…。
病院を出て 一番に 北海道の母に報告したら、母も泣いて喜んでくれた。
私が幼い頃 雪の日も 湯たんぽを入れたソリに私を乗せ、妹をおんぶして 毎日毎日 病院通いをし、大学病院での検査では 泣き叫ぶ私を見て 一緒に泣いてしまったと話してくれたことを思い出した。
大きくなり、色んな場面での不自由やコンプレックスはあったけれど、これで良かったんだと 何度も自分に言い聞かせ 他人の痛みも理解出来たような気がする。
神様？仏様？が もうそろそろ いいか なんて思ってくれたんじゃないだろうか…。
もしも あのお客さんの話を聞かなければ 今回の事もなかったワケで、本当に 感謝 感謝です！m(__)m
【２００４年９月１７日 （金）】
角膜移植の待機リストに登録が出来、角膜コーディネーターと 言う方と 何度か メールのやりとりをした。
これまでの日記に書き込んだようなことを メールしたら その メールを ドナーファミリーの集い（１年に１度 提供者の家族に集まってもらって 感謝し 冥福を祈る集い）で紹介させてもらいたいとの事。
「角膜移植を待っている人の声、患者の声を 聞いてもらって ドナーファミリーが いいことをしたんだという いい循環が この移植医療の発展に欠かせない」とのメールに 私は お受けした。
そういう 集いがあることも知らなかった・・・。
アイバンクのポスターやチラシをお店に置かせてもらうことにした。
一人でも多くの人に角膜の提供を お願いしたい。
本人と遺族の了解があれば、近眼だろうが老眼だろうが 大丈夫。
病院でも自宅でも1時間程度の処置で、ちゃんと分からないように、義眼を入れてくれるのだそうだ。
どうせ灰にしてしまう身体、それなら少しでも人の役に立てたいと、私は思う。
【２００４年１２月１３日（月）ドキドキ】
今日は 手術前の検査で 市川に行ってきた。
角膜の待機者が ずいぶん 進んで 私は13番目、もしかしたら 年内に順番が回ってくるかも…とのこと。
12月はお店が 忙しい（ければいいなァ・・・）ので、１月中には 手術が受けられそうで、嬉しいやら、不安やら 複雑な気分だった。
季節の変わり目や、寒くなると 亡くなる人も 多くなり ドナーも増えるそうだ。
亡くなるのを 待っているというのも チョット 複雑・・・。
角膜は 昔と違って 1週間の 保存がきくようになり 大急ぎで病院に向かわなくてはならないというようなことも無くなったらしい。
角膜の寿命は 160年位との話にも ビックリ！
極端な話、100歳で亡くなった方の角膜提供を受けても あと60年 角膜は頑張ってくれるそうだ。
お店にパンフレットも頂いてきた。
死後の臓器提供や角膜提供に 共感、協力しようと 思ってくれる方が増えますように・・・！
【２００５年１月１５日（土） 待つ】
手術が １月中には出来るだろうと 言われ、12/13日では 13番目、1/6日では あと8番目、
「さて、今日の段階では 何番目だろうか…」と 毎日、思う。
亡くなる人は どのくらい居るのだろうかと 新聞のお悔やみ欄を見てみたり・・・。
確定申告も控えて やらなければならないことは 沢山あるのに どうも 気ばかり焦って なかなか 手に付かない。
入院は二週間の予定、なんとか 早めに出してもらおうと考えていたが、それを お客さんに話したら
「きちんと お医者さんの言うことを聞かなくちゃいけない！無理に早く退院して 予後が悪かったら ドナーの方にも失礼だ！せっかく もらうんだから 大切にしなくちゃいけない…」と 言われ、
あ～そうだなあ、何処のどなたか分からない方からの善意を 無駄にするようなことは いけないなぁと 深く思った！
それにしても 今まで 大なり小なり色んな「待つ」事をしたけれど、こういった「待つ」気分は 初めて。
誰にもわからないだろうなあ・・・。
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