石割桜 ; 塗炭の苦しみ

石割桜 ; 塗炭の苦しみ

樋口一葉作 『たけくらべ』


 呼ばれた人力車の車夫は、この家の娘の幼馴染であった。この家の娘が、お金持ちと結婚したものの不幸だという噂は耳にしていた。しかし、この車夫には借金を肩代わりするだけの財力がない。車夫は黙って、客と車夫として、家まで送り届けた。
 車夫は、不幸な結婚をした幼馴染を、助けてやりたい気持ちはあっても、力不足であることを、理解していた。助ける力が足りないのにもかかわらず、無理に関わろうとするよりも、黙って関わらないのが、本当のやさしさであり、思いやりである。物事は、なるようになっていくものである。そのことがわからずに、自分が関わればと、いらぬ、おせっかいをすることにより、事を荒立てることにしかならない。迷惑極まりないことに、気づくことも大事である。

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