ホシミスト3013の天体撮影記

ホシミスト3013の天体撮影記

2018年08月28日
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
知人からLPR-Nを譲り受けたので、以前から持っていたCLS-CCDと

ようやくまとまったので書いてみることにします。





街中で撮影すると、期待したほど星雲や銀河が撮れません。
その理由は、街中は山中に比べ夜空が明るいから、
ということは言わずもがなですね。
ではなぜ山の中に比べて街中は明るいのか、というのは、
当然、人間の生活による明かりが空中の水蒸気や微粒子を照らすから、
ということも釈迦に説法ですね。


参考1)によると、大気光は23等級なのだそうです。
しかし実際に街の中で空の明るさを測ってみると、
これまた参考1)によるのですが、17等とか18等級になるそうです。
理論上全く明かりのないところで撮影すれば23等以上の明るさの星が撮影可能ですが、
街の中では18等級、100倍明るい星までしか撮影できません。

銀河は恒星の集まりですから、この理屈がそのままあてはまります。
つまり銀河の外縁部の淡いところは、
空が暗い所に行けばいくほど写りやすくなる、といえます。

では、人間の生活光とはどんなものでしょう??
それは月の無い真っ暗な夜に、何が暗がりを照らしているか
を考えればすぐにわかりますね。

道路を照らす水銀灯、
そして広告にも使われるネオン灯、などですよね。
ではそれらはどんな波長の光を放っているのでしょう??
参考2)には蛍光灯のスペクトルが示されています。



参考3)には、ネオン灯と水銀灯のスペクトルが示されています。





(水銀)

主に人間の夜の生活を明るく照らす3つの灯りの特徴は、
ある特定の波長の光を放出していることがわかります。
この三つの明かりのスペクトルをすべて重ねてみるとどうなるでしょうか。





さて、銀河(恒星)と違って、星雲は
水素のHα線:(波長656.28nm)や
電離した酸素原子から放出されるOⅢ線( 495.8 nm, 500.7 nm)など、
限られたスペクトルの光を放っています。
この生活光(光害)のスペクトルを見ると、
その二つのスペクトルとは重なっていない部分が多いことに気が付きます。
その生活による光のスペクトルを遮って、HアルファやOⅢだけを拾ったら、
もっと暗い星雲が写るのでは、と設計されたのが光害カットフィルターです。

私がこれまで使っていたのがAstronomikのCLS-CCDです。
その分光特性は4)のAstronomik社のHPに掲載されています





さて生活光のどの波長をカットしているでしょうか??





同じように、今回手に入れたのはLPR-Nフィルターの分光特性です。
この分光特性についても販売元のシュミットのホームページ5)に掲載されています





これも生活光のスペクトルと重ねてみます。





この二つのフィルターは、
どちらも蛍光灯や水銀灯の線状のスペクトルを見事にカットしていることがわかりますが、
残念ながらネオン灯の赤外領域にまで広がるスペクトルは、
Hαの波長と近いところにあるため完全にはカットできないことがわかります。
そしてこの二つの違いは一目瞭然で、
CLS-CCDがHαとOⅢ以外はばっさりカットしているのに対して、
LPR-Nは、420、560、605nm付近を透過させていることです。
参考6)によるスペクトル
(他のものと波長のスケールが反転しているので鏡像に改変しています)
と重ねてみると、CLS-CCDは青緑と赤しか通過させないのに対し、
LPR-Nは黄色や青も透過する・はず、です。









ここまで参考にしたページ
1)デジカメ星空診断とカメラの特性
http://paofits.nao.ac.jp/FITSWS15/onoma.pdf

2)蛍光灯とLED灯は何が違うか
株式会社ベストエコロジー 代表取締役(元・宮崎大学客員教授)
山城眞 著
http://www.b-eco.com/LED.pdf

3)ネオンランプと水銀ランプ
http://spectra.nomoto.org/2004/10/30/%E3%83%8D%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%97%E3%81%A8%E6%B0%B4%E9%8A%80%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%97/

4)Astronomikl社のCLS-CCDのカタログ
https://www.astronomik.com/en/filter-gegen-lichtverschmtzung-filters-against-lightpollution-lpr/cls-ccd-filter.html

5)シュミット社のLPR-Nのカタログ
https://www.syumitto.jp/SHOP/LPRN01.html

6)スペクトルについて のページ
http://member.tokoha-u.ac.jp/~kuninaka/renewal/spectrum.htm



では、実際の星空に使ってみたらどういう違いが出るでしょう??
ま、予測としては、透過する光が少ない順に、
CLS-CCDが一番背景が暗く、フィルターなしは真っ白になり、LPR-Nはその中間。
星雲の赤はCLS-CCDもLPR-Nも変わらず、恒星の色はLPR-Nはナチュラル・・・
なんですけれどね。

撮影は2018.08/13自宅の庭、鏡筒はSKY90+RDの407mmF4.5、
カメラはEOS Kiss X7i(Ir改造)、ISOは1600、60秒露出。
JPEG画像で、WBはフィルターなしでのWBに統一、
フィルターなし、CLS-CCD、LPR-Nの順に30分程度の時間差で撮影して、
並べてみました。
左からフィルターなし、中央LPR-N、右CLS-CCDです。




背景の空の明るさは、当然ですがほぼ予想通りですね。

では背景の空に比べての相対的な星雲の写りはどうでしょうか?
背景の空をフォトショップのスポイト機能でほぼ同じに揃えてみました。
左がフィルターなし 中央LPR-N 右CLS-CCD




これまた当然ではありますが、
予想通りCLS-CCDが背景の空より相対的に星雲が明るく写っていることがわかります。

次に、それぞれ10コマずつ撮影したので、
RAW画像をDSSで10コマAverageStack(Dark、Flat 、Bias、は加えていません)、
AutosaveをDSS上で簡易的に処理、背景の空の色を合わせたものです。
左がフィルターなし 中央LPR-N 右CLS-CCD




CLSは赤が浮かび、青がオースリーの緑になり、
光信号の多くがカットされているためS/N比は悪くなりノイズが増える、
ノーマルはノイズは少なめ、青は青っぽく、赤にも少し青の成分が入り、
あまり色をいじらなくてもいい感じ。ただし赤い星雲の濃さはやはり落ちる。
LPR-Nはその中間・・・という、あくまでも個人の印象を持ちました。

さて、では肝心の空の色や恒星の色は、というと、
CLS-CCDは大きく変わってしまうことがわかっていましたが、
LPR-Nもそこそこ変わってしまいます。
星雲を見ながらカラーバランスを取り、そのあとで空の色を見、
最後に恒星の色を見ながら、の3度のカラーバランス調整が必要でした。
当然CLS-CCDとは分光特性が異なりますので、
それと同じ処理をしたのでは、許容範囲の色は出てきません。
恒星のスペクトルは連続しているのでその途中途中が分断されることや、
連続しているように見えて、実は線状スペクトルが混じってきているので、
その強い信号であるはずの波長をカットしてしまったりするのかもしれず、
それで色合いが変わってしまうのでしょうか??
少なくとも微光星はずいぶん赤く表現されているようです。

最後にLPR-Nフィルターを装着したので、それを外さないまま151分撮影を続け、
DSSで処理をした画像と、
昨年CLSフィルター(カメラは70Dですが)で撮影した画像を並べてみます。
この色に落ち着かせるまでにはいろいろな紆余曲折が必要でしたので、
1年前と今では画像処理の能力が違っており
一概には比較できません(*≧m≦*)




Takahashi SKY90(D90f407RD)
LPR-N X7i(Ir) ISO1600 60秒×151
Takahashi EM100+PoleMaster
DSS(L151D58F30DF58B80 KappaSigma)
PSCS2 SI8
2018.08/13 自宅庭




TakahashiSKY90(D90f407RD)
CLS CCD  EOS 70D(Ir) ISO1600 90秒×39
Takahashi EM200(AGS-1)ノータッチ 手動ディザ
DSS(L39D22F81DF80B80) KappaSigma
PSCS2 StellaImage8 NeatImage
2017.09/12 23:21 自宅庭

光害カットフィルターの特性を見てくると、
結局ネオン管を多く使っていることによる空の明るさにはあまり効果がなさそう
(別府市北浜のネオンサインが南東の方角なんですよね・・・)ですし、
また、あまり光害のない場所であれば、光量が落ち相対的にノイズが増え、
カラーバランスが崩れるだけ、ということになってしまいます。

そんな中でCLS-CCDのように思いきった特性であれば、恒星光もかなり落ちるので、
淡い赤い星雲を恒星よりも浮かび上がらせて表現するために、
非光害地でも使うというのはありかな??と思われます
(実際に清和高原でIC1396を撮影した時はフィルターなしでは苦しくて、
CLS-CCDを装着しました)。
なので、固定のツメが甘くなってますが、まだ捨てずに取っておきます。

一方で、使い慣れれば、LPR-Nの方がカラーの崩れが少ないので、
CLS-CCDよりは使いやすいだろう、と思われますので、
これからの普段使いはLPR-Nになるでしょう。
我が家の環境では、どうやっても淡い散光星雲はフィルターなしでは
元々の空の光にうずもれてしまいますので。
ただ、透過スペクトルの幅が広いので銀河にも使えると
いう謳い文句は理論上はわからないでもないですが、
恒星の色の変化を見ると、私は銀河には使いたくないなぁ、と思ってしまいます。
(微光星はどうしても可視光と比べてHアルファが相対的に強くなってしまうでしょう)

最後に、紫外線を発生しないため人体への影響が少なく、
熱に変換されないためエネルギーの光への変換率が高くエコなLED照明。
我が家周辺も防犯灯がこれにどんどん変わってきていますが、
実はそのスペクトル特性上、光害カットフィルターが全く役に立ちません。








お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2018年08月28日 16時15分19秒
コメント(4) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

プロフィール

ホシミスト_3013

ホシミスト_3013

サイド自由欄

15年ぶりに趣味の世界に帰ってまいりました。はたして天体写真の腕が上達するのか?その足跡を残しておきたいと思ってはじめたブログです。
最近は、DeepSkyStackerというフリーソフトを使えるようになり、画像が格段によくなってきましたが、その分庭からでなくなってしまいました。暗いとはいえ住宅地からどれくらい星が写せるのか、も見ていただけたら、と思います。
なお、梅雨など、星が写せないときには遠景や花など、節操無くアップしますのでご容赦を。
(^^ゞ

カレンダー

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カテゴリ

カテゴリ未分類

(699)

買い物

(43)

星空

(385)

昼間の星

(30)

星野

(177)

銀河

(198)

星雲

(350)

星団

(153)

太陽系

(560)

地球

(643)

にゃん

(207)

コメント新着

ホシミスト_3013 @ Re[1]:予知(07/28) martind35さん、ありがとうございます 警…
martind35 @ Re:予知(07/28) ブログを拝読して今回ホシミスト_3013さん…
ホシミスト_3013 @ Re[1]:北アメリカ星雲とペリカン星雲(07/09) martind35さん、いろいろとお気づかいくだ…
martind35 @ Re:北アメリカ星雲とペリカン星雲(07/09) そろそろコメントをさせて頂いてもよろし…
ホシミスト_3013 @ Re[1]:北アメリカ星雲とペリカン星雲(07/09) 放浪の達人さん、コメントありがとうござ…

お気に入りブログ

花火 New! martind35さん

岡崎花火大会2026 放浪の達人さん

ちょっとブログ投稿… あとらくすさん

気ままにでんきこう… JOY2005さん
もみじ&くるみ   … ふうママ1130さん

フリーページ

メシエ天体カタログ M1-M10


M1かに星雲 超新星残骸 おうし座


M2 球状星団 みずがめ座


M3 球状星団 りょうけん座


M4 球状星団 さそり座


M5 球状星団 へび座


M6 散開星団 さそり座


M7 散開星団 さそり座


M8干潟星雲 散光星雲 さそり座


M9 球状星団 へびつかい座


M10 球状星団 へびつかい座


メシエ天体カタログ M11-M20


M11 散開星団 たて座


M12 球状星団 へびつかい座


M13 球状星団 ヘルクレス座


M14 球状星団 へびつかい座


M15 球状星団 ペガスス座


M16 散開星団 へび座(頭)


M17オメガ星雲 散光星雲 いて座


M18 散開星団 いて座


M19 球状星団 へびつかい座


M20 散光星雲 いて座


メシエ天体カタログ M21-M30


M21 散開星団 いて座


M22 球状星団 いて座


M23 散開星団 いて座


M24 バンビの横顔 スタークラウド


M25 散開星団 いて座


M26 散開星団 たて座


M27 亜鈴状星雲 こぎつね座


M28 球状星団 いて座


M29 散開星団 はくちょう座


M30 球状星団 やぎ座


メシエ天体カタログ M31-M40


M31 アンドロメダ銀河


M32 M31アンドロメダ銀河の伴銀河


M33 渦巻銀河 さんかく座


M34 散開星団 ペルセウス座


M35 散開星団 ふたご座


M36 散開星団 ぎょしゃ座


M37 散開星団 ぎょしゃ座


M38 散開星団 ぎょしゃ座


M39 散開星団 はくちょう座


M40 二重星 おおぐま座


メシエ天体カタログ M41-M50


M41 散開星団 おおいぬ座


M42 散光星雲 オリオン座


M43 散光星雲 オリオン座


M44プレセペ星団 散開星団 かに座


M45プレアデス星団 散開星団 おうし座


M46 散開星団 とも座


M47 散開星団 とも座


M48 散開星団 うみへび座


M49 楕円銀河 おとめ座 レ


M50 散開星団 いっかくじゅう座


Mel 111 散開星団 かみのけ座


Mel 25 ヒアデス星団 散開星団 おうし座


メシエ天体カタログ M51-M60


M51子持ち銀河 渦巻銀河 りょうけん座


M52 散開星団 カシオペヤ座


M53 球状星団 かみのけ座


M54 球状星団 いて座


M55 球状星団 いて座


M56 球状星団 こと座


M57リング状星雲 惑星状星雲 こと座


M58 棒渦巻銀河 おとめ座


M59 楕円銀河 おとめ座 レ


M60 楕円銀河 おとめ座


メシエ天体カタログ M61-M70


M61 渦巻銀河 おとめ座レ


M62 球状星団 へびつかい座


M63 渦巻銀河 りょうけん座


M64 渦巻銀河 かみのけ座レ


M65 渦巻銀河 しし座レ


M66 棒渦巻銀河 しし座レ


M67 散開星団 かに座


M68 球状星団 うみへび座レ


M69 球状星団 いて座


M70 球状星団 いて座


メシエ天体カタログ M71-M80


M71 球状星団 や座


M72 球状星団 みずがめ座


M73 星列 みずがめ座


M74 渦巻銀河 うお座


M75 球状星団 いて座


M76小亜鈴状星雲 惑星状星雲ペルセウス座


M77 渦巻銀河 くじら座


M78 反射星雲 オリオン座


M79 球状星団 うさぎ座


M80 球状星団 さそり座


メシエ天体カタログ M81-M90


M81 渦巻銀河 おおぐま座


M82 不規則銀河 おおぐま座


M83 南の回転花火銀河 うみへび座


M84 レンズ状銀河 おとめ座レ


M85 レンズ状銀河 かみのけ座レ


M86 レンズ状銀河 おとめ座レ


M87 楕円銀河 おとめ座


M88 渦巻き銀河 かみのけ座レ


M89 楕円銀河 おとめ座レ


M90 渦巻銀河 おとめ座レ


メシエ天体カタログ M91-M100


M91 棒渦巻き銀河 かみのけ座


M92 球状星団 ヘルクレス座


M93 散開星団 とも座


M94 渦巻銀河 りょうけん座


M95 棒渦巻銀河 しし座


M96 渦巻銀河 しし座 


M97ふくろう星雲 惑星状星雲 おおぐま座


M98 渦巻銀河 かみのけ座レ


M99 渦巻銀河 かみのけ座レ


M100 渦巻銀河 かみのけ座


メシエ天体カタログ M101-M110


M101回転花火銀河 渦巻銀河 おおぐま座


M102 レンズ状銀河 りゅう座


M103 散開星団 カシオペヤ座


M104ソンブレロ銀河 渦巻+楕円 おとめ座


M105 楕円銀河 しし座


M106 りょうけん座 渦巻銀河レ


M107 球状星団 へびつかい座


M108 渦巻き銀河 おおぐま座


M109(NGC3992) 棒渦巻銀河 おおぐま座


M110 M31の伴銀河 楕円銀河


NGC4565 渦巻銀河 かみのけ座


NGC3953 (M109??) 棒渦巻銀河 おおぐま座


北天の散光星雲(IC/NGC/Sh-2)


夏に見やすい散光星雲(IC/NGC/Sh2)


冬に見やすい散光星雲(IC/NGC/Sh2)


★★ホシミストの メシエ天体カタログ 目次


NGC



© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: