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ロシア・ピアニズム名盤選



19~20世紀にかけてのロシアのピアノ芸術は、ユダヤ系ロシア人音楽家、アントンとニコライのルビンシテイン兄弟によって幕が開けられたと言われている。
ピアノが楽器として完成した19世紀後半、ヨーロッパではピアニストたちの華麗な活躍が始まった。その頂点に立っていたのは超絶技巧で人々を魅了したフランツ・リストであり、彼に劣らぬ人気と実力を持っていたのがアントン・ルビンシテインであった。彼は、ピアノを人声のように歌わせる奏法を持ち、温かさ、華やかさ、ロマンティックなときめきなどを聴き手に伝えた。ルビンシテインの手から生まれる音が詩的な美の極致に達する時、それが器楽的ベル・カント(美しい歌の意)の偉大な芸術である事を人々は理解していたのである。一方でショパンやリストの流れを汲みながら、西欧で失われつつあった響きのロマンティズムを発展させたこと、これがロシア・ピアニズムの母体として位置付けられていると言ってもよいと思える。
ピアノ教育に大きな力が注がれたロシアからは、数多くの優れた人材が輩出し、その土壌の上にロシア・ピアニズムの伝統が築かれてきた。ラフマニノフやスクリャービン、メトネルらは作曲家でありながら当代随一のピアニストでもあった。彼等を筆頭にロシアの栄誉ある誇として有形無形のピアノ文化が創りあげられていき、ゲンリヒ・ネイガウスによってロシア・ピアニズムはひとつの完成をみることになる。
今回再発売されるのはロシア・ピアニズムを語る上で欠かすことの出来ない4人のピアニストたちによる名盤。ウラジーミル・ソフロニツキー(一連のロシアのピアニストたちの中でも別格的なカリスマ性を有する天才ピアニスト)、マリア・グリンベルク(豊富なレパートリーを持ち、その芸術の完成度の高さは特筆すべき。ロシアはもとより20世紀最高のピアニストの一人)、アナトリー・ヴェデルニコフ(長らくその存在を秘されたピアニスト。リヒテル、ギレリスとともにネイガウス派の名ピアニスト)、スタニスラフ・ネイガウス(至高のロマンティズムと、音楽そのものに限りない愛情を注いだ真の芸術家)――これらは20世紀を代表するといっても過言でない大演奏家たちの貴重な音源の数々である。
現代に於いてこのような音楽世界を聴くことは限りなく不可能に近い。これほどまでのロマンティシズムが、今どこにあるだろうか――神格化されるほどのロマンティシズムの迸りが?だからこそ、今、ロシア・ピアニズムの醍醐味を味わうことには意義があるのだと思う。音楽の音楽たる所以を教えてくれるような大演奏家たちの芯を聴けることは大変素晴らしいことである。長い間待ち焦がれていた名盤に再び会えることは私だけでなく多くの人たちの喜びである。この企画に感謝したい。
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