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ミケランジェリのシューマン&ドビュッシー



今回発売となった「シューマンのピアノ協奏曲」と「ドビュッシーの映像から」だが、言うまでもなく素晴らしいものだった。聴き入る度に神がかり的な名演だといえるもので、まさに絶品。当時64歳のミケランジェリだが、絶対的な解釈の裏付にある普遍性。そして立ち昇る情感の気高さ、色彩の美しさと、全体を通す詩的な表現は表情の音楽として他にはない世界だ。その詩的な表現から伝わる印象は、郷愁に駆られたり甘美な陶酔というものではない。どのミケランジェリCDの大半を聴いて来た方なら分かることだが、凝視するような透徹した詩である。つまりは聴き手はそこから眼が離せなくなる。瞑ることさえしづらい、出来かねるという縛りが自ずと出来てしまうものとなる。そういう詩的であり、漱石の文学にも共通する詩的さである。このCDのその最たる表情の人となる部分はシューマンのP協の一楽章の4分47秒くらいからの緩叙楽章だ。ここの名旋律を聴いてもらえれば一目瞭然であり、納得してしまう絶対的な詩情であることが分かるだろう。それは個人を超えて、”有る詩的”と呼ばざるをえない世界観である。

ドビュッシーの「映像から」もそうだ。DGに録音されている超名演のこの曲は、現在まで彼の演奏を凌いだものは世に存在していないと思える。評価の高いポリーニ盤やツィンマーマンの名演もやはり及ばないだろう。ここまで言い切るのは、聴いて頂ければ分かることであり、普遍という言葉はこういう場合にこそいえるものだと言う事の最たる証である。また色彩の最たるもこの上ない素晴らしい。未来永劫、三世を垣間見てもその解釈は揺るぎなく、初めに最終到達点があるという演奏をしたのもミケランジェリだけであった。その証明ともなる演奏がこのディスクに収められていると確認できたしだいである。


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